第2部  プラント特捜最前線  倉田事件簿シリーズ

第6話  生産作業の良し悪し:VEが解らない 電機製品工場

村上 正志
2008年8月1日


          
調査員 釜石
調査員 木下
調査室長 倉田

 製造で加工している作業に、製品機能を作り出す工程作業と設計変更可能とする工程作業がある。これを混在する製造マンがいる。
ただ、造れば良いということではない。



釜石 「 基板の一部がカバーのネジに押しつぶされて、DC電源の層がネジに接触してグランド落ちしていた為に、電源が入らず、1ロット全製品として出荷停止です。 」

木下 「 今までは、どうしていたのかな? 」

釜石 「 生産工程で、基板の一部をカットしていたそうです。 」

木下 「 それは、設計変更として製品開発側に知らせてあったのかですか。 」

釜石 「 会議上では、報告されたようですが、開発側の認識では、『設計変更としてのジャッジとして受けていない。』『生産でやる仕事と思っていた。』と言うことです。 」

木下 「 どの部署が設計変更と判断して指示を出すべきでしょうかね? 」

倉田 「 品質保証の部門があれば、品質保証だね。 」

木下 「 企業損害は? 」

釜石 「 従来は、1ロット50台程度だったのですが、コスト削減効果と受注増の事情により、1ロット500台にしたそうです。 」

木下 「 生産作業工程の検証として、製品設計で対応すれば無くなる工程はVEとして扱うべきなのに、生産部門はその感性が無かったと言うことですね。 」

倉田 「 そうだね。生産部門も製品開発部門もVEの意味を知らなかったという不勉強が企業に損害を与えていると言う認識が無いということだね。 」

釜石 「 今回の損害金額は、納期遅れで顧客にも迷惑を掛けるだけでなく、リピート受注が来るかどうか怪しくなると思いますし。 」

木下 「 このようなトラブルは、直接、企業の利益を減らしていることを認識するべきですよね。 」

倉田 「 起きた現象を見るとそうだが、改革する意識が働かなければ、また、やってしまう。この問題は根が深いと思うよ。まず、この会社は、VEを理解する必要があるだろうねえ。

VEとは、Value Engineeringのことで、『最低のライフ・サイクル・コストで必要な機能を確実に達成するために、製品とかサービスの機能的研究に注ぐ組織的な努力である』とされている。ここで言うライフ・サイクル・コストとは、
  ・開発・設計コスト
 ・購買・製造コスト
 ・販売・管理コスト
 ・使用廃棄コスト
とあり、それぞれのコストは、必要なコストであるかどうかを単に言うのではなく、毎回生産するロットごとに発生する購買・製造コストでムダを無くすべく、設計変更を必要とする。しかし、一度しかない受注やいつ来るか判らない受注の購買品コストや製造コストの見直しを設計変更まで反映するかどうかは疑問である。また、販売した後クレームとなり、その為に終息作業の為のコストが増えることは、とんでもないと設計変更する、製造改善を行う、購入品を取り替えるなどの処理が考えられる。ここで、重要なのはVEの運用判断を誰が握るかである。それが品質保証部門の仕事だよ。だから、品質保証部門の権限は他部門より上で無ければならない訳だ。」


第2部 第6話 了
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