
第2部 プラント特捜最前線 倉田事件簿シリーズ
第5話 組織の島 連絡したが伝わっていない
--ミル洗浄作業中の過失事故--
村上 正志
2008年7月4日
2008年7月4日
調査員 | 釜石 |
調査員 | 木下 |
調査室長 | 倉田 |
ミルの洗浄作業は危険を伴うことから、作業中はミルの操作盤には、札を掛け、当直申し送りをするなど安全確保に務める。 電源を切り、ミルの洗浄中に、ミルに電源が入って、ミルが回転し、作業者の足を切断という事故が起きた。 ミルの洗浄作業では、体を中へ入れないように作業注意がマニュアルに書かれている。 運転員が準備作業を行って電源が入れられたことが原因とされた。 なぜ事故が起きたのか。

釜石 「
ル洗浄作業には、作業者二名、作業受け業者の立会い責任者一名、発注側担当責任者一名が携わっていたそうです。その内、作業をしていた一名の右足が太ももから切断です。
」

木下 「
運転側は、運転開始時間が迫っていたので準備作業に入っており、その中に操作盤の電源を入れて運転前の点検をするプロセスに入っていたようです。
」

釜石 「
ミル洗浄作業のマニュアルには、操作盤に札をつけて操作されないように掲示すること、作業では体を中へ入れないことも書かれていました。作業指示として、「残留物が無いようによく洗浄するように」が出されていたようです。
」

倉田 「
残留物が圧力放水だけで除かれなければ、ブラシで擦ることになるだろう。そのブラシは体をミルの中に体を入れないと残留物に届かない長さだとしたら?
」

釜石 「
写真を見る限りブラシの長さが充分かどうかその確認はできていませんが、そうなるでしょうね。
」

倉田 「
残留物のあるなしを確認するのに、攪拌羽の裏側も確認するとなると身を乗り出さないと直視できない構造ではないだろうか?
」

釜石 「
図面を見る限りでは、そうなる構造ですね。
」

倉田 「
作業管轄は保全だが、保全部門から運転部門への連絡はどうなっていた?
」

木下 「
連絡は出したと保全部門は報告されています。運転部門では、いつもの作業時間より今回は長かったと認識しているようです。
」

倉田 「
なぜ、現場に確認しないのか、札が掛けてあってなぜ電源を投入するのかだね。
」

木下 「
電源投入するだけでミルが動くとは思っていなかったということです。
」

釜石 「
操作盤の電源を入れるだけでミルが回転するものなのですかね?
」

倉田 「
電源を入れた時にミルが数回回転する場合がある。ミルの電源が入っていて、操作盤の電源を入れた時にミルの回転数制御信号が電源投入時のラッシュを受けて回転数を上げる指示信号と同じ状態の信号を出すという訳だが、ミルが回転しないようにチェーンで固定するとか、操作盤に札賭けをするとかあるが、札賭けも工場によっては二つ三つ掛けるところもある。
」

木下 「
作業が終っても札が掛けてあるままということもあり、その札の重要度が下がっていたようですが。
」

倉田 「
作業が長いとか短いとかの感覚そのものが間違っているのではないだろうか。残留物が取れないということで作業が長引くこともあるし、念入りに洗浄しろという指示を受けて作業していればなおさら。その状況連絡もされるべきだし、作業完了確認の認識が薄いというほかないなあ。現場の連絡は、正確・確実を求められる。その認識が狎れで、作業確認の感性を欠いているのではないだろうか。
。
」
第2部 第5話 了