第2部  プラント特捜最前線  倉田事件簿シリーズ

第2話 無責任の罠 だろう判断がもたらす罪
            過加工食品プラントでのパイプ洗浄後の経過時間管理

 
村上 正志
2008年5月1日


          
調査員 釜石
調査員 木下
調査室長 倉田

食品素材を生成したり配合したり加工したりする工場ではパイプの洗浄作業が実施されるが、過酸化水素水で洗浄したり、高温高圧蒸気で洗浄したり、熱風で洗浄したり、素材の種類や殺菌対象により、方法や時間が異なる。
ある工場でブドウ球菌が製品に入った事故が発生。



釜石 「 パイプ洗浄は製品加工作業の最初の工程で行われているのですが、作られる製品によって使用するパイプのルートが異なっているそうです。その中で長時間使用されなかった系統のパイプ部分にブドウ球菌が発生し、その部分を使ったことで混入したようです。 」

木下 「 使う前に洗浄するのだから、その洗浄が不充分だったと言うことか? 」

釜石 「 いえ、そうではなくて、その洗浄がなされなかった部分を使ってしまったということです。 」

木下 「 それなら、パイプ洗浄のエンジニアリング・ロジックが間違っていることになるなあ。 。 」

釜石 「 それが、システムエンジニア曰く、『そんな使い方は想定されていなかった』ということです。 」

木下 「 想定されていなかったパイプのルートの使い方だったということか? 」

釜石 「 そういうことなんですが、そこが複雑でして、使用する予定の製品が想定需要量以下に終った際、残りの製品を再利用して生成する別の製品があり、製品の二次加工がされる訳です。 」

木下 「 それは分かる。 」

釜石 「 その時のタンクの場所と二次生成する加工攪拌機へのパイプルートがあるのですが、使用する前に使う製品素材が入っているタンクのバルブのところまで、バルブが閉まっている状態で洗浄がされる訳です。普通は。 」

木下 「 それで。 」

釜石 「 圧力差で奥まで洗浄できないケースもある訳です。 」

木下 「 ・・・・・ 」

釜石 「 パイプは使用した後に洗浄して一定時間内は放置されても問題にならない状態ですが、長時間放置されると菌が発生し増えてくる訳です。 」

木下 「 温度が上がったり、取りきれていない菌が残ってそれが増えたりという訳か。 」

釜石 「 そうなのですね。 」

木下 「 その菌が増えたところを使用してしまったということか。時間経過の程度を考えた時に、ここまでは大丈夫だろうが事故を起こしてしまう原因だね。」

倉田 「 しかし、だから、それで許される訳ではないからな。企業責任は。 」

釜石 「 そうなのですが、『どうしたらいいでしょうね。捨てるしかないのでしょうかね?』と聞かれたぐらいです。 」

倉田 「 残った製品の再利用が規定時間内で済ませるにも、製品を別のタンクに一時保管して、使用するパイプのルートの洗浄をしてから、充填タンクへ製品素材を移動させるルート設計もしくは運転操作をすることが考えられるなあ。基本は、品質を保った安全な製品を作って送り届け安心して飲んで頂くことだからねえ。 」

釜石 「 一時保管の別タンクが無い場合は、どうしたら良いでしょうか? 」

倉田 「 別タンクとそのルートを作って、システムロジックも変更し、運転マニュアルも変更していくしかないね。 」

倉田 「 その予算が無い場合は? 」

倉田 「 二次加工製品を諦めるしかないね。不良品を出した回収費用と失った信用を取り戻すまでの費用を考えたら、そんな設備の予算なんて、比べものにならないだろう。信用を失くしたら、工場閉鎖どころか事業継続できないくらいの制裁を受けることになりかねないからね。 」

第2部 第3話 了
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