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1.水の流れを測る

1-1 Utilityの流れを測る

(4) 蒸気の密度変化を補正するには


 流量計の設計時に基準値として与えた蒸気の温度・圧力は,実際の測定に際してその流量計の基準値として働く。

【絞り式流量計の密度補正】

 例えば,差圧式流量計での流量計算式は     で示される。

 ここで,W:質量流量,

   C:流出係数,

  ε:気体の膨張補正係数,

  β:絞り直径比,

  儕:差圧,

  ρ1:流体の密度

  を表す。

  実際の測定では儕のみを測定し,他の値は全て定数として計器の目盛り付けをしているので儕以外の定数に変化があった場合には,計器の指示に誤差を与えることになる。

  飽和蒸気の流量測定では,流量計設計時に基準値として飽和圧力(又は温度)を与え,このときの飽和蒸気密度で必要な値を得るように設計している。

  従って,流量測定時には設計時の蒸気密度を使って,差圧(儕)〜流量の関係を求めている。

  前にも述べたように,実際の測定現場では蒸気の状態が設計値から変化しているケースが多くあり,必ずしも設計通りの条件で測定されていない場合がある。

このようなときには,測定した儕に対してその時の密度で補正を加える必要がある。 


  <密度補正の方法>  

具体的な補正の方法について考えてみる。上に示した流量計算式で密度変化は右辺のρ1の変化として作用する。儕を除いて他の定数は変化しないので差圧(儕)から得られた見かけの流量(補正前の流量)に対し次のような補正を行う必要がある。

 

  補正式 W=KWb

 

 ここで, W:補正後の流量,
       Wb:補正前の流量

       K: 補正係数

       ρf:測定時の密度,

       ρb:設計基準値の密度

   この式で,ρbは設計基準値の密度のため定数であるが,ρfはプロセスデータとして測定する必要がある。飽和蒸気の場合は,温度と圧力と密度は決まった関係にあるため温度か圧力か密度のどれか一つが判ればよいことになる。本来は密度を直接測定できればよいが,蒸気の密度を直接測定するのは難しいため,温度か圧力を測定することになるが,温度測定は時間遅れが大きいため通常は圧力を測定している。

 飽和圧力と飽和密度の関係は表2-1〜表2-3に示したが,この関係は完全な直線関係にないため簡単な演算では正確に求めることができない。

  具体的な補正の方法として,手計算による方法と演算器やコンピュータを使って自動補正をする方法がある。

  手計算の場合は,圧力(又は温度)の値から飽和蒸気の密度(ρf)を求め設計基準値(ρb)から,

補正係数K=を求め儕から求めた未補正流量WboにKを乗じて真の流量を求める。

 

   Wf=Kwbo

 

  例えば,設計基準値の飽和圧力が0.7MPa,測定時の圧力が0.65MPaであった場合, ρbは4.1688kg/m3, ρfは3.9216kg/m3 であるから, となり,補正前の流量が10 t/h の場合はWf=0.9699×10= 9.699t/h が真の流量となる。   演算器やコンピュータを使って自動補正を行うときは,圧力(又は温度)の信号から蒸気密度を求めることになるが,通常は演算器やコンピュータに内臓した蒸気表を使って圧力信号から蒸気密度を求めるか,簡易的には折れ線グラフを内蔵し圧力信号から蒸気密度を求めている。


【渦式流量計の密度補正】
 渦式流量計での流量計算式は U=f・w/Stで示される。

 ここで, U:流速,

   f:発生する渦の周波数,

   w:渦発生体の幅,

   St:ストーハル数


 従って,ストローハル数が一定の値をとる範囲であれば流速と渦の周波数は比例関係にある。

  ストローハル数はレイノルズ数の関数であるから流体の物性によって渦流量計の測定範囲は決まってくる。

 

 JIS Z 8766:2002 では適用可能なレイノルズ数を 1×105〜2×106と規定している。

 流量計算式から判るように,絞り式の流量計算式と違って渦式の場合は式の中に密度の項がない。従って流速を測定する場合は流体(飽和蒸気)の密度が変わっても補正の必要はない。

 しかし,蒸気の流量測定では通常 t/hやkg/h のように質量(重量)流量で表すことが多いので,この場合は密度が関係してくる。

 渦流量計で得られる信号は流速に対する周波数であるから,周波数を測定して流速を知り,流量計の口径から容積流量を得ている。蒸気の流量を測定する場合は容積に蒸気の密度を乗じて質量(重量)流量に換算する。

 渦流量計の場合は絞り式流量計のように密度変化が流量信号に直接影響を与えることはないが,得られた信号から質量(重量)流量へ換算するときに影響してくる。

    従って,渦流量計での密度補正は正確に言えば補正ではなく換算係数の変化と云える。

 

<密度補正の方法>

 渦流量計の質量(重量)流量は次の式で得られる。
   W=ρ1Qq
  ここで,
   W:質量(重量)流量,
   Qq:容積流量,
   ρ1:流体密度

蒸気の状態が変化したときの影響は密度の変化として表れるため,上の式は次のようになる。

   W=KWb

  ここで,

   K=ρf/ρb:補正係数,

   Wb:補正前の質量(重量)流量(ρb・Qq)

   Ρf:測定時の蒸気密度,

   ρb:設計基準値の蒸気密度

   W=補正後の質量(重量)流量

 この式でρbは設計基準値の密度であり定数であるが,ρfは測定する必要がある。

前項の絞り式と同様,通常は圧力を測定して飽和蒸気密度を知る方法が一般的である。

 具体的な補正演算の方法は,絞り式と同様,手計算と自動演算があり手法も同じである。

       

ただ注意したいのは,絞り式は密度の比率を開平演算しているのに対し,渦式の場合は開平演算がないことである。


  【面積式流量計の密度補正】

  面積式流量計の流量計算式は次の式で示される。
   

ここで,

  Q:流体の体積流量,

  C:流出係数,

  A:流通面積,

  g:重力の加速度,

  Af:フロートの水平最大面積

  Vf:フロートの体積,

  ρf:フロートの密度

  ρb:流体の密度(設計状態),

  ρ:流体の密度(使用状態)

 

 測定値を質量流量(W)で表すときは

W=Q・ρb であるから,上の式にρbを乗じて次の式を得る。

  
<密度補正の方法>
 測定対象の飽和蒸気の密度が設計基準値(ρb)からρに変化した場合は,補正係数Kを求めて  W=KWb で補正する。

   W:補正後の質量流量,

   Wb:計器の読値(補正前の流量)

 面積式流量計では質量目盛の場合の補正係数Kは次の式で求める。

  

 具体的な補正の方法は,前2項の絞り式および渦式と同じであって,手計算と自動演算があり,蒸気圧力から蒸気密度を求める方法はいずれも同じである。

 

〈測定原理による流量特性の違いに注意〉

   以上3種類の流量計について,飽和蒸気の密度変化が測定値に与える影響について述べたてきたが,ここで流量計の測定原理の違いによって密度変化が測定値に与える影響について考えてみる。

   先ず,3種類の流量計の密度補正式はそれぞれ次のようになる。

絞り式 : K=ρf/ρb

渦式  : K= ρf/ρb

面積式: K=ρ/ρb

面積式ではフロートの密度にρfを使うので測定時の密度はρとする。

 

   ここで注意することは,密度の比率を開平する場合と渦式のようにそのまま補正係数とすることである。

この違いにより補正係数がどのようになるか例を挙げて考えてみる。

 

  【例:絞り式と渦式の補正係数】

   次の条件で設計された流量計で,測定時の蒸気圧が変化した場合の補正係数を求めてみる。

     設計基準値の飽和蒸気圧=0.7MPaG(飽和蒸気密度ρb=4.1688 kg/m3)

     測定時の飽和蒸気圧   =0.1 MPaG (飽和蒸気密度ρf=1.6582 kg/m3)

 

 (絞り式の場合)               (渦式の場合)

  補正係数 K=              補正係数 K= ρf/ρb

         =                = 1.6582/4.1688

         = 0.6307                      = 0.3978

 

   このような状態で使用したとき,補正前の計器信号はどうなるか検証すると

 

 (絞り式の場合)               (渦式の場合)

   W=WbK                       W=WbK

   Wb=W/K  ここで,K=0.6307なので      Wb=W/K  ここで,K=0.3978なので

   Wb=W/0.6307                   Wb=W/0.3978

   ∴W=0.6307(63.07%)以上はWbが      ∴W=0.3978(39.78%)以上はWbが

    スケールオーバーすることになる。       スケールオーバーすることになる。

 

  ここで,

   W:補正後の質量流量,

   Wb:計器の読値(補正前の流量)

 

  この例では,絞り式の場合は補正後の値が63.07%まではスケールオーバーすることなく生データを得られるが,渦式では補正後の測定値が39.78%以上で生データ(補正前のデータ)がスケールオーバーしてしまうことになる。

  さらに,絞り式の場合の差圧信号は流量の二乗に比例するので流量値より小さくなり差圧信号がスケールオーバーすることはないが,渦式では渦の信号は流量(速)に比例するので流量と同じところでスケールオーバーしてしまうことになる。

  このように蒸気の条件が設計値と大きく相違する現象は,装置の立上げ運転時にしばしば見られる現象で,蒸気の供給先の装置や配管が冷えているときに蒸気を流し始めると,蒸気が急激に冷却されドレン化することで流量計を低圧の蒸気が高速で通過するようなときに見られる。

 

   このような状況は,絞り式流量計を渦式流量計にリプレイスするようなときに注意が必要となる。
  絞り式では運転開始時の測定値に異常はなかったが,渦流量計での測定では運転開始時にスケールオーバーしてしまう,と云う現象が見られることがある。   その原因は上記のように設計値よりも大幅に低圧の蒸気が通過することによることが多い。流量計のレンジ選定や蒸気の密度補正について事前に検討しておくことが肝要である。

 絞り式では運転開始時の測定値に異常はなかったが,渦流量計での測定では運転開始時にスケールオーバーしてしまう,と云う現象が見られることがある。

  その原因は上記のように設計値よりも大幅に低圧の蒸気が通過することによることが多い。流量計のレンジ選定や蒸気の密度補正について事前に検討しておくことが肝要である。