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1.水の流れを測る

1-1 Utilityの流れを測る

(2) 蒸気の流量を計る

ボイラーで水を蒸発させて得られる蒸気は、大きく2種類に分けられる。
 1つは飽和蒸気あり、1つは過熱蒸気である。さらに最近では大型の発電用ボイラーで得られる  超臨界の蒸気があるが、これは蒸気ではなく固体ー液体ー気体(蒸気)の三相に対して、もう  1つの相をなす超臨界水とすべきかもしれない。
 現在工業計測の世界で流量計測の対象となっているのは、飽和蒸気と過熱蒸気である。



飽和蒸気の流量測定

飽和蒸気とは

水が蒸発する温度は圧力によって決まる、大気圧(101.325kPa abs)では100℃で蒸発し、2気圧  (202.65kPa abs)では120.65℃で蒸発する。  ある圧力の下で決まる蒸発温度のことを、その圧力における飽和温度と云い、その圧力のことを  飽和圧力と呼ぶ。  飽和蒸気とは、飽和圧力・飽和温度の状態にある蒸気のことである。  このような状態にある飽和蒸気は、その環境が変わると飽和状態でなくなることになり不安定な  状態であるとも云える。

蒸気の持つ潜熱

  蒸発温度(沸騰温度)に達している水に、熱を加えていくと水はその熱を奪って蒸気となって蒸発  する。この時、蒸発するために必要な熱を「蒸発の比エンタルピー」と呼び蒸気が持つ「潜熱」とな  る。このように水は飽和水から更に熱を加えることによって蒸気へと状態変化を起こす。  この時加えられた熱は状態変化のみに使われ、水(蒸気)の温度上昇とはならない、従って蒸気  になるために熱を必要とするが、温度上昇として現れない(顕在化しない)ため、潜在する熱と云う  意味で「潜熱」と呼ぶ。 飽和蒸気は熱源として利用されているが、その理由はこの「潜熱」が大きいためである。  飽和蒸気は圧力が高くなるほど潜熱は小さくなり、顕熱は大きくなる。このことは蒸気を熱源とする  加熱プロセスにおいて圧力の高い蒸気ほど無駄にするする熱量が大きくなり非効率となる。  一方、蒸気の密度は圧力が高くなると共に大きくなり、同じ量の蒸気を輸送するには圧力の高い  蒸気の方が配管径を小さくできるため経済的に有利となる。

飽和蒸気の減圧による効果

 こののように飽和蒸気の潜熱は蒸気の圧力が低いほど大きくなるので、潜熱を有効に利用するに  は圧力の低い方が有利となる。  しかし、最初から低圧の蒸気でボイラーから熱利用の装置まで輸送すると、径の大きい配管が必要  となり設備効率が悪くなる。  蒸気を効率よく利用するには圧力の高い状態で輸送し、利用する直前で減圧するのがよい。  例えば0.6MPaGの蒸気を0.1MPaに減圧した場合を考えると次のようになる。
  0.6MPaGの飽和蒸気の顕熱は 697.39kJ/kg, 潜熱は 2064.67kJ/kg である。   従って 0.6MPaG の蒸気の全熱は 697.39+2064.67=2762.07 kJ/kg である。  一方 0.1MPaG の飽和蒸気の顕熱は 505.59kJ/kg であるから、0.6MPaG の飽和蒸気を 0.1MPaG  に減圧すると 2762.07-505.59=2256.47kJ/kg の潜熱をもった蒸気が計算上は得られるが 0.1MPaG の飽和蒸気の潜熱は2201kJ/kgであるから、上記計算値との差は蒸気温度を上昇させることになる。  したがってその分飽和温度より高い温度の蒸気となり、過熱蒸気となる。  実際には飽和蒸気では湿りがあり、その水分に熱を奪われるため潜熱は小さくなる。  飽和蒸気の湿りの度合いを表すのに、乾き度という表現を用いており、乾き度95%の蒸気の潜熱は  次のようになる。  0.6MPaG、乾き度95%の蒸気の潜熱は 2064.67×0.95=1961.44kJ/kg

蒸気の流速

  配管内を流れる蒸気の流速は次の式で表される。

  

飽和蒸気の流量測定にあたって

  蒸気流量の測定では何種類かの測定原理による流量計が使われており、それぞれに特徴的な 要素を備えている。
 具体的な流量計選定に入る前に飽和蒸気の性質について検証してみることにしたい。

  <蒸気の性状変化>
 配管中を流れる蒸気は途中の抵抗で圧力損失があったり、熱損失で温度が低下したりする。 温度が下がって飽和温度を下回ると蒸気の一部は蒸気から水に戻り、水分を含んだ湿り蒸気  となる。蒸気には大きな気化潜熱があるため蒸気から水になるとき大量の熱を放出し蒸気の温  度低下を食い止めることで飽和状態が保たれる。
 蒸気流量の測定において、問題となることは多くはこの性状変化による。

 <圧力の変化>
 圧力の変化は必ず圧力の低下となって現れ、途中で上昇することはない。
 蒸気の輸送は配管内を圧送することで行われるので、配管途中の障害物(各種の弁や配管の曲  がり等)や配管壁の摩擦抵抗によって圧力損失が発生しこれが圧力の低下となって現われる。  理論上、外部への熱損失が無く圧力損失のみが発生した場合は顕熱の差が生じ余剰の熱が蒸気  温度を上昇させることになる。
 この現象が蒸気流量測定において、いろんなところに問題を起こす原因となっている。  特に減圧弁で急激に圧力を下げた場合に、その直後でこの現象が確認される場合がある。

 <温度の変化>
 温度の変化は、圧力と違って低下することもあれば上昇するもあり、その変化は複雑となる。  一般には蒸気が配管を流れる時、管壁や弁その他の配管機材を通して逃げる熱による温度低下  となって現われる。  また、圧力変化で述べたように急激な圧力低下が温度上昇となって現れる場合があり注意が必要である。
 蒸気の輸送経路では配管を初め途中の機材には保温が施されており、熱損失を防いでいるが,上記圧力低下による温度上昇を除いては下流に行くほど温度は低下すると考えておく必要がある。

 <圧力・温度変化が流量測定に与える影響>
 では圧力や温度変化が何故流量測定に影響を与えるのかを考えてみる。  現在蒸気流量測定に使用されている流量計には、いろんな方式の流量計があるが、蒸気の圧力・  温度が蒸気流量測定に影響を与えるのは、圧力・温度によって*蒸気密度(比重量)が大きく変化す  るからである。
 具体的には流量の密度補正で詳しく取りあげるとするが、蒸気の流量測定ではその単位にkg/hや   t/h と云った重量(質量)単位を使っており、原理的に流速計をベースとしている流量計の場合は  同じ流速であっても蒸気の密度が変化すると流量計を通過する蒸気量は重量(質量)に換算すると  変化することになり、何らかの補正が必要となる。
  飽和蒸気の密度を表2 及びグラフ1に示す




 このように飽和蒸気の圧力と温度の関係は一義的であり、配管内の輸送途中での放熱によって熱  エネルギーが失われ一部が水になってしまう。(このようにして発生した水をドレンと呼ぶ)  ドレンは蒸気を利用する熱交換器等の各種機器や減圧弁に悪影響を与えると同時に、流量測定に  おいては流量計の正常な動作を妨げ、誤差要因となると共に場合によっては計器の寿命に影響を  及ぼすことがある。
 従って、ドレンはこれらの機器に流れ込む前で除去することが望ましい。
   図1 に標準的な蒸気配管システムを示す。