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2.油の流れを測る
 

 2.1 石油製品の流れを計る

2.石油製品の流量測定


 2−1 精製工程での流量測定

 原油を蒸留装置や分解装置を通して、有用な石油製品が得られるが流量測定の視点から石油製品を見てみたい。
  一般消費者の立場から見れば、暖房用灯油や自動車用ガソリン・軽油を購入するときの、取引証明用流量計が身近なものであるが、ここでは石油製品の上流側から製造過程に沿って各過程における流量測定について考えてみる。
 最上流の原油採掘に関わるプロセスから蒸留装置に到るまでは、原油の状態であり我が国では、そのほとんどが輸入されている。
 国内での流量測定は、原油の陸揚げから始まり、蒸留装置への原料供給(原油)、蒸留装置から留出する各製品の流量、および蒸留装置の運転に必要な装置内の各部におけるリフラックス(還流)量が測定される。(図 1 常圧蒸留装置フロー図 参照)
 その後、最終製品までには減圧蒸留装置、各種分解装置、脱硫装置、混合(調合)装置を経て添加剤を加えたあと出荷さるが、出荷までの各工程では運転管理および生産量把握のための流量測定が行なわれている。
  石油製品の流量測定では、その目的が生産量の測定と装置の運転管理のためのデータとに大別できる。生産量は課税対象のデータとなるため、取引証明用に承認された計量器を使用しなければならない。取引証明用には容積式流量計が用いられる。
  一方装置の運転管理用では、監視・制御の目的に使用されるため一般の流量計が使用できる。

2−2 流通段階での流量測定

  製油所から出荷された各製品は、いろんな流通ルートで市中に供給されることになるが、共通して言えることは、流通過程での流量測定は取引のために行なわれるものであり、そのためには取引証明用に承認された流量計(計量器)でなくてはならにいことである。
 日頃目にするガソリンスタンドで販売されるガソリンや軽油、灯油の計量器は直接不特定多数のユーザーに販売するための取引用であるためこの仲間に入る。
 石油流量の測定に用いる流量計は、産業技術総合研究所(産総研)のつくばセンター内にある国家流量標準施設(石油流量校正施設)で国家標準とのトレーサビリティがとれるよになっており、流量計の精度維持が行われている。
 2−1項の精製工程で使用される課税対象となる流量測定に用いる流量計も当然国家標準とのトレーサビリティが要求される。

 

2−3 消費段階での流量測定

  消費段階での流量測定の必要性は、石油製品を燃料や原料として使用する産業界が対象であり、一般消費者(家庭や店舗)は対象となることはすくない。
 一般消費者では燃料消費量が問題であり、瞬時流量を必要とすることは少なく、通常は燃料タンクの残量で消費量を確認している。
 燃料として石油製品を消費する場合は、工場の原価やエネルギー効率のために測定する必要があることと、燃焼管理(制御)のためのデータとして制御システムに取り込むために必要となる場合がある。
 前者は公の証明用として使用される場合には、前項の取引用並の条件が要求されることがあると考えられる。それ以外に使用されるものは取引用の制約をうけないので、使用目的にあった流量計を選定できることになる。

3.石油製品の流量計

 石油製品の流量測定に関して流体の物性で特筆すべきことは、電導度がほとんど無い絶縁物であること、製品の種類によって粘度などの物性が大きく違っていること、などが挙げられる。 また、流量測定の目的が取引であることが多く、この場合使用する流量計に制約があることも挙げられる。取引以外の目的で使われる流量計は通常の流量計が使用できるが、導電率の関係で電磁流量計が使用できないことに注意すべきである。

 3−1 精製工程での流量測定

  

精製工程で使用される流量計では、投入された原料油や精製後の製品別生産量については課税対象の関係で、取引証明用として認められた流量計の使用が必要となる。
 製造装置の運転管理(監視や制御)のために使用される流量計は通常の計器が使用できる。  

 3−1−1 取引証明用流量計
 石油精製保税作業における原料課税に関して、原料原油及び各留出品の数量の確認にはそれぞれ法令の規定に合致するタンク検尺又は流量計により行なうことになっており、使用できる流量計の種類は容積式流量計に限定される。
 容積式流量計であれば全ての流量計が使用できると言うものではなく、取引証明用として認可された流量計である必要がある。言い換えるとこのような条件で使用することのできる流量計で取引証明用として認可される流量計は容積式流量計に限られることになる。
 取引証明用流量計の中にも、揮発油(ガソリン)計量器のように容積式以外に軸流式の流量計が使用される場合もある。
 【容積式流量計】
容積式流量計は枡で一杯・二杯と計るやり方を連続で自動的に行なう仕組みを持った流量計   であり、枡に相当する部分が計量室として内蔵されている。
 計量室には幾つかの形があるが、代表的なオーバルギヤ式とルーツ式を紹介する。
 オーバルギヤ式流量計
 図1はオーバルギヤ式の動作を説明したものである。楕円形の歯車(オーバルギヤ)2個がお互いに長径と短径に接する形で組み合わさって回転する。
 歯車が回転する部分はケースに収納されており、流体は図の左から右へと流れるとき歯車を矢印の方向に回転させながら歯車とケースの空間を通って下流へと流れる。
 この時、流体が通過する空間は決まった容積であるため、歯車が回転する毎に決まった容積の流体が下流へと流れることになる。従って歯車の回転数を数えればここを通過した流体の容積を知ることができる。
 オーバルギヤ式の場合2個の歯車が噛み合って回転するため、溶剤のような潤滑性を損なうような流体に使用すると歯車の噛み合いが悪くなり、滑らかな回転ができなくなる。

    

 ルーツ式流量計
 容積式の代表的な形式として、ルーツ式があり、図2にその構造を示す。
 オーバル式がギヤ(歯車)で構成されていたのに対し、ルーツ式は歯車を持たない2個の繭形の回転子で構成されている。2個の回転子はお互いに接触せずパイロットギヤを介して連動する。 枡に相当する計量室は繭形の回転子とケースの間で構成される。
 パイロットギヤはそれぞれの回転子に接続し、ギヤはケースの外側にあって噛み合っている。
このため、回転子自身は接触しておらず摩耗による消耗がなく長寿命が保たれる。

    


 容積式流量計の特徴
 容積式流量計には長所と短所があるが、石油製品の取引用としては長所の方が勝っている。
 @精度について
 容積(体積)を枡で量っているのと同じであり、一般に高精度である。特に取引用に使われるものは±0.2%の精度が普通である。
 A流量計前後の直管が不要
 差圧式や渦式などの流量計では必須条件である流量計前後(上流・下流)の直管部が容積式では不要となり、設置場所の選定が楽になる。
 これは、測定原理や流量計の構造から判るように管内の流速分布や乱流等の条件に無関係であるためである。
 B流体の粘度に注意
 流量計の中に回転部があるため、必ず隙間が必要となる。
 この隙間によって、低粘度の流体では漏れが生じ低流量域では精度が低下する。
 逆に粘度が高くなると隙間からの漏れが少なくなり、低流量域での精度保証範囲が広くなる。
 C異物の噛み込みに注意
 構造を見ると判るように、流体は回転子とケースの隙間を通って流れるため、異物が流体に混入すると、隙間に詰まったり回転子に絡まって回転を止めることがある。
 このタイプの流量計は流体によって回転子を回転さることによって、流体が流量計を通過するので、回転が止まると流体が流れなくなる。
 このことは、他の流量計にはない特徴でこのようなトラブルの対策として流量計の上流側にストレーナを設け異物の浸入を防いでいる。
 また、機械式の計器であるため定期的なメンテナンスが必要となり、この間流体を止める必要がある。メンテナンス等で流体を止めることが許されない場合は、流量計にバイパス管路を設ける必要があり容積式流量計の場合はバイパス配管を設けるのが一般的である。
 信号処理について
 容積式や軸流式流量計からの信号は、測定原理から回転数をパルスとして取り出すものであり、本質的にディジタル信号である。従ってパルス信号をそのまま積算すると積算流量となる。
 流量計本体に機械式や磁気結合で積算値を表示する機能を持ったものが多く、瞬時流量のアナログ信号を得る場合はパルス/アナログ変換が必要になる。

    
    

   3−1−2 取引証明用以外の流量計
 取引や課税に関係なく、製造装置の運転管理(制御や監視)に使用される流量計は、上記の容積式の他、一般の工業用流量計が使用できる。
 ただし、前にも述べたように石油製品は導電率がほとんどない絶縁物であるため液体用流量計として広い用途がある電磁流量計を使用できないことが不便な点である。
 蒸留装置で使用される流量計の大部分は絞り式でありオリフィス流量計が大半を占める。
  【差圧式流量計】
 差圧式流量計は、流体の流れる管路に流体の抵抗となる絞りを設け、絞りの前後(上流・下流)に発生する圧力差(差圧)が、流量(流速)の二乗に比例すると言う原理を利用して流量を測定するものである。
 圧力差(差圧)を発生させるための絞り機構は、JIS Z 8762 に規格化されており次の4部構成となっている。
 JIS Z 8762-2007 の構成
 JIS Z 8762-1:絞り機構に関する一般的事項、定義、記号並びに測定原理及びその方法を規定する。
 JIS Z 8762-2:オリフィス板について規定し、コーナータップ、D・D/2タップ、フランジタップの圧力 取出し方法について規定する。
 JIS Z 8762-3:ノズル及びノズル形ベンチュリ管について規定する。
 JIS Z 8762-4:円すい形ベンチュリ管について規定する。
 この規格によると絞り式流量計による流量の計算は次の式で行なうことになっている。

    

 ここで、式中の記号の意味は次のようになる。
   qm:質量流量
   C:流出係数
   ε:気体の膨張補正係数
   β:絞り直径比
   d:絞り穴径
   △P:絞り前後の差圧
   ρ1:流体の密度
  この式において、C(流出係数)とε(気体の膨張補正係数)は理論的に計算で求まるものではなく実験によって得られたものである。
  幾何学的に同じ絞りに、流体力学的に同じ状態で流体を流すとその時のC(流出係数)とε(気体の膨張補正係数)は同じ値をとることが実験により確認されており、Cとεを実験により求めた結果をまとめたものが絞り流量計の規格であり、絞り機構の幾何学的及び力学的条件がその内容となっている。
 絞り機構の種類
  絞り式流量計に用いられる絞り機構は、次の3種類が規格化されており、それぞれの用途に使い分けられている。

  絞り機構の種類
  JIS Z 8762にはオリフィス、ノズル、ベンチュリの3種類が規格化されているがここでは石油製品に多用されているオリフィスについて解説する。

 (1)オリフィス板

 代表的な絞り機構として、オリフィス板(プレート)がある。
 図5 のように、円形の板に同心円状の孔をあけたもので構造はいたって簡単なものである。
 図6 にオリフィス板を管路に取付けたときの横断面図を示す。
 流れは左から右へと向かい、中央の絞り(オリフィス板)へ達して縮流し絞りを抜けると開放される。
 絞りを抜けて開放されると、圧力は急激に下がり図6 のP2のように最小圧力を経て回復に向かう。
 P3に達すると圧力の回復は終了し安定する。(P1-P3を永久圧損と呼びオリフィスによる圧力損失である)
 オリフィス式流量計は図6のP1又はP1'とP2'又はP2との圧力差(差圧)を測定し流量を測ることにより流量を測定する。

   

 (2)圧力取出し方法
 オリフィス板の上流・下流のどの点の圧力を測定するかによって、圧力取出しの方法が決まっており、規格では次の3種類が決められている。
 
 @コーナータップ
   図7−1はリング付きオリフィスと呼ばれるものでコーナー   タップの代表的形式である。
   コーナータップとはオリフィス板の直前・直後から圧力を取   り出すもので、オリフィス板と配管が接する角から圧力を   取り出すのでこの名称がある。
   リング付きとは、オリフィス板をリング状の金属2枚 で挟   みリングにはオリフィス板と接する部分に溝を設て流体圧   力を導入しこの圧力を取り出す構造をしており、リングと   オリフィス板を一体化しておけば、管路への取り付けと導   圧管(管路から圧力を取り出す配管)の工事が簡単にな   る。
  Aフランジタップ
   フランジタップとは、オリフィス板を管路に取り付けるフランジに圧力取出しの穴を開けて導圧管を取   り付けるもので、図7−2および図7−3に示すような構造をしている。
   フランジタップは取付け用フランジが特殊となり、フランジに圧力取り出しようの穴が開けてあるフラ   ンジタップ用フランジが必要となる。
   このタイプはリング付きオリフィスに比べ、リングが無い分重量が軽くなるため口径が大きくなると有   利になる。

  

  BD・D/2タップ
  このタップ方式は、上流側の圧力取出しをオリフィス板から配管内径(D)に等しい位置とし、下流側の圧力取出しは配管内径の1/2の位置から圧力を取出す。
  D・D/2と言うのはDを配管内径として圧力取出し位置を表現したものである。
  図7−4にその取付状態を示す、この方式は圧力取出しのための加工を配管に施す必要があり現場工事を伴う。
  メリットとしては、絞りによる圧力降下(圧力差)を有効に利用できることにある。
 以前はこの他に縮流タップという方式があったが、今 回の改定により規格から外れることになった。


 (3)導圧管と差圧伝送器の設置
 オリフィスからの圧力取出し方法については、上に述べた通りであるが取り出した圧力を差圧伝送器*1へ配管する方法にも測定流体や流体の環境によって気をつける点がいくつかあり、注意が必要となる。その代表的な例を下記にいくつか挙げる。


  液体の場合は基本的に導圧管は下向きに取り出し、差圧伝送器はオリフィスより下に設置する。   液体の中に気体の混入がある場合は、導圧管に気体が入り込まないような配慮が必要となる。
  気体が導圧管に入り込むと圧力の伝達が阻害され差圧伝送器に正しい圧力が伝わらなくんり誤   差の原因や動作不良となって正常な動作が得られなくなる。
  このような現象を防止するため、図8−2に示すように導圧管にガス(気体)抜き弁を設け溜まったガスを抜けるようにしておく必要がある。
  図中の均圧弁はプロセスが稼動中に差圧伝送器の零点を確認できるように、高低圧を短絡し強制的に差圧”0”の状態を作り出すためのものである。

 *1(差圧伝送器):絞り機構で発生した圧力差(差圧)を電気信号や空気圧信号に変換し、計測シス   テムや監視・制御システムに信号を伝送するための機器で絞り機構の近くに設置される。


  図8−3、図8−4は気体を測定する場合の様子を示している。
  気体を絞り機構を使って流量測定を行なう場合は、導圧管の取り出しは液体とは逆に上向きとなる。湿った気体の場合は導圧管の中で気体中に含まれている液体が凝縮し、導圧管の中に溜まり、圧力の伝達を阻害したり測定値に影響を与えることになる。
  図8−4は、導圧管に溜まった液体(ドレン)を抜き出すための弁(ドレン抜き弁)を付けたもので、弁の上に液溜めの容器(ドレンポット)を取り付ける。

 (4)絞り機構前後の直管長について
 絞り機構を使用するときに、設置条件として問題となるのが絞り機構前後の直管長である。
 JIS Z 8762 によると、絞り機構の上流側に設置される流れを乱す要素別に、必要となる直管の長さを決めている。
 JIS Z 8762-2 2007 には表3に「整流装置を付けない場合のオリフィス板と継手との間に必要な直管の長さ」として規定が示されている。
 ここで言う継手とは、流れを乱す配管要素であるが、具体的には配管の曲がり、弁類、分岐、合流、縮小・拡大管、などが挙げられる。規格にはこれらの要素及びその組合せ毎に必要な直管の長さを配管内径(D)の倍数で示している。
  一般には絞り直径比(β=d/D)が大きい(絞り穴径dが大きい)ほど、必要な直管長は大きくなる。

 (5)絞り式流量計の信号処理

 絞り式流量計で得られる信号は、(1)式からも分るように流量は差圧の平方根に比例する。これは絞り機構で発生する差圧が流量の二乗に比例するためであり、差圧から流量を求めるときは開平演算を行なう必要がある。





 

3−2 流通段階での流量測定



 精製工場から出荷された後の流通段階での流量測定では、基本的に取引が絡むため、取引証明用の流量計が必要になる。
 取引証明用流量計は精製工程での流量計と基本的に同じものとなるが、流通の末端では容積式以外の軸流式流量計(タービンメータ)も多く使用されている。
 軸流式流量計は容積式と違って、計量室を持たず流体の流れで羽根車(タービン)を回すようになっている、図10にその原理の概要を示す。
 【軸式流量計】
 容積式流量計の他に揮発油(ガソリン)等の低粘度の流体には取引用として、軸流式と呼ばれる流量計がある。原理的には流体中に羽根車を置き、流体の流れによって羽根車を回転させるものであり、タービン式流量計などがこの形式の流量計に当る。

    

3−3 その他の流量測定


  その他消費段階での流量計では多様なものが使用されているが、産業界での需要は燃料として使用される場合の流量計が主体と考えられる。
 燃料としては重油が主体であるが、一部灯油、軽油も含まれる。これらの流量計は主に容積式であり、この場合設備の効率や運転管理としての燃料消費量を知るのが目的であるため、取引用を必要としないことが多い。
 重油の測定で注意が必要なのは、重油の種類によって粘度が大きく違っていることで、3種(C)重油になると常温ではほとんど流すことは出来ず、加温して粘度を下げ流動性を確保しなければならない。
 最近では、容積式の他にコリオリ式流量計も徐々に使用されるようになってきた。
 コリオリ式は原理的に質量流量を測定するもので、容積(体積)流量を知るには流体密度で演算して求める必要がある。コリオリ式にはこれらの演算機能を備えており、選択によって容積流量の信号を出力することができる。