HOMECONTENTS>水の流れを測る
1.水の流れを測る
 

 1.2 浄水場の流れを計る

(3)上水道設備における流量計選定のポイント

   

 上水道設備における各設備ごとの流量測定について概略を述べてきたが、ここでは実際の   流量計選定にあたって注意すべきポイントについて整理してみる。
  一般に流量計選定に当っては、測定流体の性状(液体、ガス(気体)、蒸気、粉体、スラリー*1 など)、流路の形状、配管サイズ、測定の目的(制御、監視、取引等)、要求精度、流体温度、 流体圧力、流体粘度、流体の腐食性、許容圧力損失、価格、雰囲気温度、保守性、接続方式等で測定する流量計の測定方法の違いも含めた選定が異なるため、流量計そのものの選定が大変難しいことである。

 1.満水路形流量計

 1-1 電磁流量計
 (選定上のポイント)

  上水道設備の満水路では、電磁流量計が多く使われている。
  電磁流量計の仕様的特徴は口径サイズが2.5mm〜2600mm位までと範囲が広く、精度は1〜2%of span、圧力損失がなく、測定流体によって接液材質を選べる等がある。
  例えばライニングはポリウレタン、EPDM等のゴムライニング、フッ素系のPFA、セラミック等があるが、水の測定にはゴム系、次亜塩素酸ソーダなど薬液ではPFAライニングが採用されている。電極材質はSUS316L、白金系、ハステロイC、タンタル、チタン等があり通常はSUS316Lが次亜塩素酸ソーダには白金系が使用される。電極材質については単に流体に対する腐食性だけでは選定できず、電気的導通性が保たれる必要がある。
  一般の耐食材には、酸化皮膜等が表面に形成され、それによって材質が保護されて耐食性が発揮されるものがあるが酸化皮膜は電気的に絶縁体であることが多く、この場合は電磁流量計の電極としては使用できない。SUSやタンタルがこれに相当する。

 (使用上のポイント)
  使用上の注意として、殺菌のために添加される次亜塩素酸ソーダの測定では配管が塩ビ 管で配管されていることである。この場合流量計をフランジタイプを選ぶとかガスケットをバ イトンゴムのように柔らかい材料にするなどの工夫が必要である。
  取水ラインのようにスラリーを含む流体では、電極表面に固形物が接触して流れたときに スラリーノイズが発生し出力を不安定にするが、この現象については各メーカーが特性改善 の対策をおこなっており近年問題になることはほとんどなくなってきた。
  最も一般的な注意事項としては配管内が非満水とならないようにすることである。

 (電磁流量計の測定原理)
  電磁流量計の測定原理を図1に示す。電磁流量計は図に示されているように、磁界の中を 流体が流れるときに発生する起電力が流体の平均流速に比例すると云うファラデーの電磁 誘導の法則を応用したものである。
  起電力は、フレミングの右手の法則により流体の運動方向(流れ方向)および磁界の方向に直角な方向に発生する。 電磁流量計は、この発生した起電力を測定管内に設けた1対の電極で検出し、流量として演 算して統一電流信号(4〜20mA DC)やパルス信号(1L/P等)に変換して出力する。

 

 図1において起電力の大きさは、次の式で表される。ただし、磁界は均一、電極は点電極 と云う仮定である。
    E=α・B・V・D
  ここで、α:比例定数
        E:起電力
        D:管内径
        V:管内平均流速
        B:磁束密度である。
  管の流路断面積は、であるので容積流量 Q は
    となり、
  起電力はこれらの式から次式で表される。
    E=α・4/π・B/D・Q
  この式から、起電力は、容積流量Qに比例することがわかる。またこの式には、流体の温度, 圧力、粘度、密度、導電率などは、いっさいでてこない。よって基本的には、それらの変化の 影響を受けないことがわかる。ただし、実際の検出器の場合、磁界は均一ではなく、電極も ある大きさがあるため、これらの物理量の変化に影響が一部出てくることがある。

   ここで正常測定のための基本的な条件およびその理由をまとめると以下のようになる。

正常測定のための基本条件
(1)管内が満水
  管内が流体に満たされるなら、流体の流速分布が軸対称流となり、起電力は平 均流速に比例する。
(2)流体導電率が均一
  導電率が不均一だと、流速演算上の誤差またはノイズが生じる。
(3)管壁は絶縁物
  測定管の一部が金属管のような導電物だと起電力がアースに流れたり、ショート され、誤差を生じる。
(4)流体の導電率が規定値以上(例えば5μs/cm以上)
  安定測定のためには、これらの4つの条件を満足するだけでなく、必要な直管長、適切な接液材料を選択することが求められる。

 1-2 超音波流量計
  電磁流量計には、表1に示すような欠点もあって近年大口径の場合には、より安価でしかも既設配管にも管の外から流量計をクランプによって容易に設置できる超音波流量計が採用されるようになった。 超音波流量計の精度が電磁流量計により近くなってきたこともその理由となっている。ただし、配管の曲がりやポンプ出口の近くでは電磁流量計より直管長を長く取る必要がある。
  図 3 に超音波流量計と電磁流量計の直管長の要求比較を示す。





 (超音波流量計の測定原理)
  ここでは伝播時間差方式について記述する。
  伝播時間差法は配管内の測線上の流速Vを流体中の超音波の伝播速度の変化である伝播 時間差凾狽ニして計測し、流量演算する原理である。
  図 2 に伝播時間差方式の超音波流量計の原理図を示す。
   Q∝k・凾煤EA
   ここで、
   k:流量補正係数
     
    C:流体中の音速
   凾煤F伝播時間差



 (超音波流量計の安定測定のための基本条件) 超音波流量計はその測定原理から平均流速Vを求める方法が超音波がとおる測線における 平均流速であり、管断面の平均流速ではないと云うことが重要である。
  よって各メーカーごとに測定流速を管内平均流速に置き換えるための補正演算を行っている。 これらの条件は直管長や、流体のレイノルズ数に依存していることがあるので、製品ごとの 安定化測定のためには、
  (1)超音波が通過することを阻害する気泡混入があまりないこと。
 (2)管壁に流体付着がないこと。
  (3)満水状態での流れであること。
  (4)検出器の使用温度 範囲の流体であること。
  などが必要である。





  1-3 絞り式流量計
  古くから使われている流量計の一つに、絞り式流量計がある。絞り式流量計にはその絞りの形式 から、オリフィス式流量計、ベンチュリ式流量計、フローノズル式流量計があるが上水道にはオリ フィス式とベンチュリ式が使われてきた。
  絞り式流量計は古くから規格化され使用実績も多く信頼性も高い。多くの実験に基づくデータから 規格化されており、規格どおりに設計・製作し、規格で定められた条件で使用すれば実流量試験な しで規格が保証する精度で測定できるのが特徴である。
  また、欠点として測定のために圧力損失を伴うため、省エネルギーの観点から電磁流量計や超音 波流量計に置き換えられる傾向にある。
  しかし、豊富な使用実績と高い信頼性、価格の面等で現在でも捨てがたい流量計であることには 間違いない。

 (差圧式流量計の測定原理)
 流体の流れる管路中に絞り機構を取り付けて流体の通過面積を狭めると、絞り機構による抵抗に よってその前後に圧力差を生じる。
 この圧力差、すなわち差圧と流量との関係は、ベルヌーイの定理によって表される一定の関係が ある。この原理を応用したものが差圧式流量計で、流量は差圧の平方根に比例する。
 したがって、管内径、絞り機構の絞り穴径、液体の密度や粘度などの諸定数がわかっていれば、 差圧を測定することによって流量を知ることができる。
 (絞り機構の流量計算の一般式)
  図 4 に示すように、断面が円形の水平配管の中心に同心円の穴の開いた板状の絞り機構を流れ に直角に取り付ける。
  液体は非圧縮性で粘性の影響のない液体であり、流れは定常流で管路を充満して流れていると、 絞りの上流断面 a と下流の流れが絞られた断面 b との間には、ベルヌーイの式と流れの連続から 次の式が成り立つ。

   
     
   ここで、
   v:平均流速
   ρ:液体の密度
   p:圧力
   A :流れの断面積
   添字1、2は断面 a および断面 b におけるそれぞれの値
 式(T)(U)から、絞りを通過する体積流量 Q と差圧(p1-p2)の関係は

   

  実在の液体には粘性があり、圧縮性流体(気体)への適用を含めて、実用式は A2 の代わりに絞り   の断面積を用い、体積流量 Qv は
    
  となる。また、質量流量 Q は、  Qm=Qvρ1 により

    

  ここで、
    ρ:上流側における流体密度
   β:絞りの穴径d(m)と管内径D(m)との比;β=d/D
    c :流出係数
   ε:気体の膨張補正係数(非圧縮性流体ではε=1)
  式(W)(X)からわかるように、差圧(p1-p2)の大きさは流量の2乗に比例する。流量が最大流量の
1/10のとき、差圧は1/100となり、低流量域では差圧の測定誤差が流量の測定精度に大きく影響 を及ぼすので注意が必要である。
  安定測定の基本条件は、以下の通りである。
  (1) 満水で気泡の混入が無いこと。
  (2) 流量は差圧の平方根に比例するため、低流量域では差圧測定誤差に注意すること。
  (3) JIS等にある上下流直管長をとること。

 (絞り機構の具体的構造)
  図 4 は絞り機構(オリフィス)の原理を説明したものであるが、絞り機構によって発生する差圧を取 出す方法が規格によって決められており、現在の JIS Z 8762-2:2007:第2部オリフィス板によって 図 5-1、図 5-2、図 5-3、のように3種類の差圧取出し方法が決められている。





 (ベンチュリ管について)
  ベンチュリ管は耐久性に優れ、その上圧力損失が同じ絞り直径比のオリフィスに比べて小さくまた 構造上沈殿物がたまりにくいという特徴がある。異物を含む流体の流量測定や圧力損失をできる だけ小さくしたい場合、あるいは地中に埋設して長年手入れしないで使用したい場合などに用いら れる。
  ベンチュリ管には、円すい形ベンチュリ管とノズル形ベンチュリ管の2種類があり、それぞれJIS Z 8762 で規定されている。
 (円すいベンチュリ管)
  円すいベンチュリ管の形状として図 6-1 に長管形を、図 6-2 に短管形を示す。長管形は出口円 すい管の出口が管径と等しいものであり、短管形は出口円すい管の長さを圧力損失をほとんど変え ない範囲で最大35%まで短くした形状のものである。
 また、入口円すい部の製法の違いによって、 鋳放し入口円すい管付きベンチュリ管、切削入口円すい管付きベンチュリ管および板金溶接入口円 すい管付きベンチュリ管の3種類に分けられる。
  流量の安定測定のためには、 JIS Z 8762 にあるように以下の条件が必要である。
   (1) 流体が均一で単一相として扱える流体であること。
   (2) 管内径、粗さ、絞り直径比、レイノルズ数など、規定された範囲内での使用であること。
   (3) 脈動流がないこと。レイノルズ数が2×105以上であること。 
       管内径が50mm以上で1 200mm 以下であること。
   (4) 内径形状が摩耗、付着等で変化がないこと。
   (5) 必要な上下流直管長を確保すること。
    (JIS Z 8762-2007 第4部:円すいベンチュリ管参照)