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1.水の流れを測る
 

 1.3 下水処理場の流れを計る

(2)下水処理における流量測定


  下水処理施設における流量測定は、およそ以下の設備において行われている。

 

(3)下水処理に関する流量測定の特徴


下水処理で流量測定の対象となる流体は次の4つに分類することができる。
1、下水そのものと処理水を主体とする液体。
2、下水処理の結果生成される、固形物を主体とする汚泥。
3、下水処理のために添加される薬品類。
4、曝気のために送られる空気。
 これらの流体は、流量測定の対象として見た場合それぞれ特徴があり、それに見合った流量計 の選定が重要になる。

 (流下下水の流量測定)


 下水道を流れてくる下水は、そのほとんどが自然流下によるものである。
下水処理に関して測定される流量は、下水処理場だけでなく処理場に入る前の下水道において も行なわれる。
 下水道内で行なわれる流量測定は、次のような特徴的な条件の下に行なわれることになり、こ れに適用できる流量計は限られてくる。
 下水道内における流量測定の条件
 1、流路が非満水管である。
 2、測定流体にはいろんな混入物が含まれる。
 3、管路の傾斜が小さい。
 4、設置場所が地下であり、搬入はマンホールであることが多い。
 5、円形水路である。
このような流路、流体条件に使用できる流量計は現在でも限られており、そのほとんどがパーマ ボーラス(P-B)フリュームと呼ばれる流量計や非満水電磁流量計が使用されている。

(パーマボーラスフリューム流量計)
 この流量計は、管路の落差を利用して流量を測定するもので、開水路流量計の一つであるパー シャルフリュームの変形である。
 測定原理は、管路の途中にスロートと呼ばれる絞りを設けて限界流を生じさせることで、スロート 部上流側水位の関数として流量を求めることができるものである。
 図1と図2にP-Bフリュームの概略構造と測定原理を示す。




 一般に、自由表面を持つ開水路においては、常流(Subcritical flow)という、比較的勾配の小さ い水路に生じる重力が流れの慣性力より支配的な流れと、斜流(Supercritical flow)という、比較 的勾配の大きい水路に生じる重力より流れの慣性の方が支配的な流れがある。
  通常の水路において生じる波(重力波)の伝わる速さは、水深を h とするで表される(g は重力の加速度)。常流とは流速Vが波の伝わる速さより小さい流れ、すなわち  の流れ であり、斜流とは、 の流れと定義されている。
  従って、流れの下流側で何らかの水位変化が起きた場合、常流ではその影響が上流側に伝わ るが、斜流では流速が大きいので影響が上流に伝わらない。
  上述の限界流(Critical flowh)は、常流と斜流の間の限界状態、すなわち、  の流れを 示す。
  フリュームのスロート部に限界流を生じさせると、流れの状態は、常流→限界流→斜流と遷移す るから、フリュームの下流側の影響は、上流側に伝わらないことになる。従って、フリュームの上 流側の1点のみの水位を測定することにより流量を求めることができる。

  P-Bフリュームによる流量と水位の関係は次式で示される。
   Q=f・ha
   ここで Q:流量   ha:水位  f:サイズにより決まる値


使用上の注意
  P-Bフリュームは上流側に少なくとも水路呼び径の5〜10倍の長さの直管部が必要であり、設
置に当っての条件となる。
  流量測定のための水位測定に当っては、水位計の選定が必要である。以前はフロート式の水
位計が多く用いられたが最近では水面に非接触な超音波式やレーダー式が使われるようになっ
た。これらの日接触式では水面の泡立ちや波の影響、また周りの構造物の影響等に注意が必要
となる。
  構造的に上流からの混入物が堆積しにくい構造になっているが、低流速で沈澱するような土砂
など比重の大きいものが混入している場合は、入口部および出口部に沈澱し流量測定精度の維
持ができないのでメンテナンスが必要となる。

 (非満水電磁流量計)

 非満水電磁流量計は、通常の電磁流量計と同じくファラディの電磁誘導の原理を利用している
が、管内を流れる流体が満水状態ではなく低水位から満水状態まで水位が変化する条件で、流
量測定を行なうことを可能にしている。
  通常の電磁流量計は管内が満水であることを条件に、誘起される起電力は流速に比例すると
して流量を測定している。しかし、非満水である場合は管内を流れる流量は起電力の他に管内の
水位にも影響されることになる。この点を解決するため、電極配列や磁界分布に工夫をして水位
を測定しなくても非満水状態の流量測定ができるようにしたものである。

(下水処理場内の処理水および汚泥の流量測定)


 処理場に取り込まれた下水は沈砂池、沈澱池、反応タンク(高度処理)・・・・等で処理されていく
が、処理が進むに従って水と固形物の分離が進み、更に有機物の分解が行なわれていく。
結果として、水の浄化が進むと共に不純物は汚泥として分離されていく、この過程で装置の要所
において流量測定が行なわれる。
このようなプロセスにおいては、初めの段階では土砂混じりの固形物を含む流体であり、流量計
測をする上での流体の物性としては最も厳しい状態であると言える。
  処理場内での処理水(下水)の流量測定では、次のような特徴的な条件下で行なわれることに
なり、これに対応できる流量計の選定が必要になる。
   下水処理のプロセスにおける流量測定の条件
  1、浮遊懸濁物を多く含む流体である。
  2、プロセスの中間で生成される汚泥は高濃度のスラリー状流体である。
  3、最終段階の脱水された汚泥は脱水ケーキと呼ばれる半固形の状態となる。
  4、最終段の法流水は開水路であることが多い。

 このような条件下での流量測定では、1〜3項に適用できる流量計は電磁流量計が最適であり
4項ではセキ式流量計が使用される。

 (電磁流量計)
電磁流量計については、浄水場設備における流量計選定ポイントで測定原理や正常測定のた
めの基本条件について記述したが、下水処理の工程で通常の電極式電磁流量計で測定できるの
は、汚泥処理の脱水機投入前までの汚泥である。
  脱水ケーキはモーノポンプやピストンポンプによって送られるため、流速は2〜10cm/sと大変遅く
流体の性状は半固体であり、水分率は70〜80%程度である。
  脱水ケーキについては、最近容量式電磁流量計を使用した測定が可能になってきた。
通常の電極式電磁流量計ではスラリーノイズ、電極表面への油脂等絶縁物の付着による指示へ
の影響、アンモニア等の樹脂、ゴムライニング部へのガスの透過による絶縁劣化があり大変難し
いアプリケーションであった。
  容量式電磁流量計はスラリーノイズの発生源である電極が管の表面に無く、鏡面仕上げされた
セラミックで測定管ができたいるため摩耗やガスの透過の影響もなく脱水ケーキの流量測定に適
している。
  容量式電磁流量計の測定原理と開発の経緯について次に紹介する。

 

 (容量式電磁流量計)



  図3 に容量式電磁流量計の測定原理を示す。
ファラディの電磁誘導の法則により、発生する起電力を検出することは、従来の電磁流量計と変り ないが、容量式ではその起電力を検出する方法が異なっている。
  測定管であるアルミナセラミック製の管の外側にシート状の面電極を配置し、コイルに従来より はるかに高い周波数(165Hz)で励磁電流を流し、管内に高周波の磁界を発生させる。流体が流れ ることで発生する高周波の起電力は、セラミックパイプの管壁の容量を介して管の外側の面電極 で検出される。
流量信号である液中に発生する起電力は 絶縁物であるセラミックパイプを介して検出 されるので、この回路は非常に高いインピ ーダンスをもった信号源となる。
そのため、この信号を受けるヘッドアンプは 入力インピーダンスの非常に高い回路が 必要となる。
また、高い周波数で励磁している理由は、 低導電率流体特有のフローノイズを低減 させるためである。
図4 に導電率をパラメータとしたフローノイ ズと励磁周波数の関係を示す。


















フローノイズとは流体が管内壁と擦れる ときに発生する電荷が、流体の移動と共に 発生するノイズで、低導電率で低粘度な アルコールや純水などに特有なノイズのこ とを言う。














 (薬品測定用電磁流量計)
 下水処理の反応過程と放流前の工程では凝集剤や消毒用に薬品が添加される。
反応工程で添加されるのは凝集剤であり、主に硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム(PAC) ポリ硫酸第二鉄、等が用いられる。
 放流前の消毒では、次亜塩素酸ナトリウムが用いられる。これらの薬品の流量測定は処理水 の量と水質によって添加に必要な量が決められるため、重要な測定量となる。
これらの薬品には腐食性があり、特に次亜塩素酸ナトリウムは強い腐食性をしめすので材質の 選定は重要である。
 添加される薬品の量は処理水に比べれば小さいので、流量測定に使われる流量計のサイズ も小さくなる。一般に流量計は微小口径(5〜10mm)の電磁流量計が使用されておりライニング はテフロン、電極・アースリングなど接液材質は次亜塩素酸ナトリウムではチタンや白金系合金、 凝集剤では次亜塩素酸ナトリウムに比べ、腐食性は弱いのでそれぞれの薬品に見合った材質 が使われている。
(放流水用流量計)
 放流水は開水路となっていることが多い。このため流量測定には開水路用としてセキ式流量計 放流用電磁流量計が使われている。
セキ式流量計については、浄水場設備における流量計選定ポイントの「開水路形流量計」で記 述しているので、ここでは放流用電磁流量計について説明する。

 図7−1のようにセキの下流側へ放流 するとき、セキ板の下部に上流と下流 を貫通する形で電磁流量計を取付ける 電磁流量計の検出器は、セキの下流 側に設置し、上流側には直管部を設け るために検出器と同サイズの管を取付 ける。 上流側、下流側の先端(流体の入口と 出口)は90°の曲がりを設け、それぞ れ上向きに開口するよう配管する。 これにより安定した流れを確保し、精度 良く流量測定が行なえる。 電磁流量計検出器は下流側水位の上 昇により水没することを想定して、水中 形の検出器とする。 図7−2 は実際に取付けたときのイメー ジを示す。 水頭差と電磁流量計のサイズから、流 量測定範囲が決まるが、流量計と同サ イズで同形状のダミー配管を取付ける ことで測定範囲を2倍・3倍と拡張する ことが可能となる。