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4.困難な流量計測

 流量計測の対象となる流体には、様々な条件によって流量計測を困難にしているものが存在する。 その条件には、流体の物理的や化学的な物性の問題、気泡や固形物の混入によ問題、物性の異なる複数の流体が混合することにより起こる問題等がある。 物性の問題としては、腐食性流体による材質の問題や粘度や密度による流量計の測定原理に問題があるものなどがあり、気泡混入やスラリー液の場合の問題は、流量計測の基本的問題として一般的である。 複数液混合の問題は、2層流や電磁流量計で問題となる導電率の違う2液混の合場合に見られる。 このような流量計測上問題となる要件をもった流体の条件を体系的に整理して流量計測上の問題点を考えてみる

1. 混合流体

 ここで取り上げる流体は、気体・蒸気・液体が基本流体であるが、混合流体とはこれらの基本流体のうち、例えば液体中に気体が混入したり、蒸気に液体が混在したりする状態を混合流体とする。  また、液体に固体が混入したもの(例えばスラリー流体)もここでの対象流体となる。このような混合流体の概念から外れるものとして物性の違う同じ基本流体同士の混合流体があるがここではこれも混合流体の対象とする。  導電率が大きく違う液体同士が混じり合ったような場合がこれに相当する。

(1)気液混合流体

 気体と液体が同時に存在して流れる状態を通常は2相流と呼び、いろんな状態の流れを造り出す。
 気液混合流体とは、一般には液体の中に気体が混入した状態を指す。気体の中に水分が含まれる場合があるが、これには2つの状態がある。
 1つは水が気体(蒸気)の状態で存在する場合であり、これはここで云う混合流体の概念ではなく湿り気体として扱われるものである。
 もう1つは水が液体の状態で気体中に存在するものでありミスト状の流体がその代表である。
 ここでの気液混合流体の代表は「気泡を含む液体」である。
 気液混合流体の場合プロセスの圧力が大きく影響する、一般に流量のラインが高圧の場合気泡は圧力によって圧縮されたり、液に吸収されるので気泡として存在しにくくなるが、低圧になると気泡と現れやすくなる。
 特に負圧の場合は、液中に溶存していた気体が気泡として液中に出てくるので、配管の場所によって圧力が低下していくようなプロセスでは注意が必要となる。
 液体の中に気体が混入した状態は、気体の含有量によって次のような状態があり流量計測上の困難さの度合いも違ってくる。
 また、プロセス配管の面から、許されるならば水平配管よりも垂直配管で測定することが望ましい。

(バブルフロー)
図1バルルフローのイメージ

 液体中に気体が小さな気泡として混入している状態。
 流量計測上は、測定可能な場合が多いが通常は気泡の容積分だけ誤差となることがある。
 超音波流量計では測定方式によって気泡の影響が違ってくる。伝搬時間差方式の場合気泡が超音波の伝搬に障害となるので気泡の混入率が計器の仕様に謳われており注意が必要である。
 一方、ドップラー方式では液体中に超音波を反射するものがなければ測定が出来ないのである程度の気泡は測定原理上許されることになる。ただし、気泡ではなく固形物などの微粒物が存在しても超音波の反射源となる。いずれにしてもドップラー方式の超音波流量計ではまったく不純物を含まない液体では測定できない。  質量流量計として最近普及してきたコリオリ式流量計は、バブルフローに対して比較的強い流量計であると云える。
 差圧式流量計や面積式、渦流量計では測定原理から気泡の混入は測定の障害となるのでバブルフローであっても気泡の混入はないほうがよい。

(プラグフロー)
図2プラグフローのイメージ

 バブルフローの気泡が成長し大きな気泡の塊となって流れる状態。
 この状態になる条件としては、気泡の混入率と流体の流速の関係が相互に影響する。
 流速が遅いと気泡の混入率が小さくてもプラグを形成しやすくなるが、流速が早くなると気泡の混入がある程度多くてもプラグの形成が阻害されバブルの状態が保持されることになる。
 プラグフローでは流量計測上は、そのままで測定することは困難になり何らかの対策が必要となる。
 一般的には気液分離器で気体を分離除去し、液体だけの状態で測定することになる。
 気液分離器はいろんな方式のものが市販されており、プロセスの条件に合ったものを選択して使用することが必要となる。
 特殊な場合としては負圧のプロセスである。負圧でない場合は分離した気体は大気へ放出するのが一般的であるが、負圧の場合はそのままでは大気への放出ができない。
 したがって何らかの方法で分離後の気体を回収するか流量測定後の液体と再合流させてプロセスへ戻す等の工夫が必要となる。

(スラグフロー)
図3スラグフローのイメージ

 プラグフローが成長した状態であり、この状態では気体は水平配管では上面に偏って流れ気液二相流の様相を呈する。
 流量計測上はバブルフローと同様で、このままでは測定不能となり気液分離が必要となる。

(ミストフロー)
図4ミストフローのイメージ

 この状態は液体に気体が混入するのではなく、気体に少量の液体が混入した状態である。
 プロセスの中でこの状態は運転の最後によく現れる。製造ラインが終了するとき今まで流れていた液がなくなってくると最後に気体が流れ始め、管壁に付いていた液が気体に吹き飛ばされる形でミストとなる。
 このような状態では当然液体用の流量計では正常な測定はできなくなるが、特に電磁流量計を使っている場合は管壁に付着した液が気体に引きずられて高速で移動るときに大きな信号を出すので注意が必要となる。

(2)スラリー流体

 スラリー流体とは、液体中に粒子状の固形物が混入したもので泥状になった流体のことを云う。
 セメントミルク、モルタル、コンクリート、土木工事での泥水、食品工業での澱粉乳、半導体製造装置での研磨液などスラリー流体は多くのプロセスに広く存在する。
 スラリー流体はその性情から流量計の構造に制約が多くあり注意が必要である。スラリー流体の流量計測における注意すべき点を挙げて、流量計選定の参考としたい。

(摩耗性の問題)
 スラリー流体には摩耗の問題が付いて回る。混入している粒子の種類によって程度の差はあるがスラリー流体全てにおいてその影響は無視できない。
 流量計の内部構造に可動部や機械的構造物があると流体そのものの流れを阻害するだけでなく流体に含まれる固体粒子によって構造物そのものが摩耗してしまう。
 したがって、スラリー流体用流量計は内部にそのような機械的構造物のないものが望ましい。
 この要件に当てはまるのが電磁流量計とコリオリ式質量流量計である。
 この両者は流量計内部の流体が通過する部分に機械的構造物がなく配管のみで構成されるので構造物を損傷したり破壊することはないが、それでも配管内部の管壁の摩耗は避けられない。
(摩耗への対策)
 一般に流量計では流体が通過する部分は金属のパイプで構成されている。耐摩耗性の点からは金属の場合何らかの対策が必要となる。
 配管内部の摩耗対策としては、摩耗に強い材質を用いてライニングを施している。
 ライニング材としては、フッ素樹脂(テフロン)、ゴム、ガラスなどが使われているが耐摩耗の面からはポリウレタンゴムが優れている。

 ただし、ポリウレタンゴムは耐薬品性に劣るので注意が必要である。また、フッ素樹脂では耐薬品性に優れるが耐摩耗性ではポリウレタンゴムに劣る。ガラスはその両方に強いが機械的強度(衝撃など)と熱的ショックに弱い。  最近では配管材を金属ではなく、セラミックで構成したものも製造されており耐摩耗性及び耐薬品性にも優れている。
 このような特性から、水道の取水や土木工事現場での泥水輸送のラインではもっぱらポリウレタンゴムライニングが使用されている。
 

図5 礫泥水でのライニングプロテクター
特に土木工事の掘削現場から出る泥水には、小石混じりの礫が多く含まれることがあり、この場合は礫泥水として通常のスラリー流体とは区別した配慮が必要となる。
 土木工事などでの礫泥水測定では、電磁流量計のライニングを礫の衝撃から保護するためのプロテクターを流量計の入り口(上流側)に取り付けて使用することもある。
 図5にその概念を示す。
 通常の電磁流量計ではアースリングが入り口に取り付けられているので、ある程度の保護には役だっているが、入り口のエッジ部分が特に礫の衝撃を受けやすいので、これを保護するには図5のようなプロテクターが有効となる。

(沈殿の問題)
 スラリー流体では、混入している粒子の種類によって低流速では沈殿してしまうことがあり、その影響を考慮する必要がある。
 特に沈殿した固形物が時間とともに凝固してしまうようなものであれば、運転再開にあたって支障をきたし、その除去が困難になる場合もある。
 これは、流量計測上の問題と云うよりはプラント設計の問題であるといってよいが、流量計そのものに沈殿物の影響が及ぶことについては計測の問題として捉えておく必要がある。
 流量計内部に沈殿物が堆積しないためには、電磁流量計では垂直取付で使用するのが有効であるが、コリオリ式質量流量計では取付姿勢の問題や流量計内部の配管構造から、完全に計器内部での沈殿を防ぐのは困難と思はれる。
また、垂直取付した場合の電磁流量計や超音波流量計では流体の流れが停止して固形物の沈殿が始まると、固形物の移動(沈殿)が流体の流れとして検知され流量計の指示として現れるので、この現象の影響を考慮しておく必要がある。

(3)多種液混合流体

 

物性の違う2種類以上の流体を混合し混合液の流量を測定する場合の流量計について検討する。
 多種液混合では混合する液の物性の違い、例えば密度・粘度・導電率などの違いによって生じる現象が流量計測上いろんな問題を引き起こす。
 多種液の混合は工業プロセスの中で、いろんな分野で行われており、極一般的工程である。

  化学工業での原料や製品のブレンド、塗料の調合、食品工業でもブレンドによって多くの最終製品が造られている。土木の現場でも地盤凝固剤やセメントミルクの調合では混合装置があり、化学消防車では水と発砲剤の混合で火災の現場に適した発砲水が車上で調合され造られている。  混合液の流量計測で問題となるのは、混合された液が完全に混じり合わずそれぞれもとの液の状態で存在するときに生じる。
 完全に混合され、密度や粘度・導電率などに濃淡が無くなった状態では流量計測の問題はほとんどなくなると考えてよい。

図62液混合の進行イメージ

(密度の違いによる問題)
 密度の違う液を混合した場合、混合後の液に密度の濃淡が出来ると流量計測上どんな問題が発生するだろうか。
 この場合使用する流量計の種類によって、影響のしかたが違ってくる。一般に云えることは流量計の測定原理によって決まってくると云える。
  例えば絞り式流量計のように、測定原理の流量と差圧の関係を示す式の中に密度の項がある場合は測定液の密度が均一でないと安定した測定は出来ない。式(1)参照
 
  ここで W:質量流量
  C:流出係数
  ε:気体の膨張補正係数(液体の場合は=1)
  β:絞り直径比
  凾o:差圧
  ρ1:流体の密度
 一方、電磁流量計のように流量と発生起電力の関係式に密度の項がない流量計では理論上は密度の濃淡は流量測定に関係ない((2)式参照)が、後で取り上げる混合液の導電率に差がある場合で導電率の濃淡が混合後の液に存在するときは安定した流量計測が出来ない場合があるので注意が必要となる。
 
 ここで、α:比例定数
 E:発生起電力
 D:管内径
 V:平均流速
 B:磁束密度