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3、腐食性流体の流量計測

     前項で腐食のメカニズムや代表的な腐食性流体について述べてきた。  

 そこで今回はこれらの腐食をもたらす流体の流量を測定するときの具体的な方法について考えていきたい。  腐食性流体の流量測定では、まず流量計が腐食性流体に直接接する部分の材質を選定するところから始まり、同時にその流体の物性と使用される条件から流量計の種類(測定原理)の選定へと進んでいくことになるが、さらには流量計の使い方(運用)についても注意を払うべきである。

 (1)腐食性流体の流量計選定
 腐食性流体の流量測定に当たって問題となるのは、接液材質の選定であることは初めに述べたが実際に選定する段階では悩むことが多い。

 それは、同じ流体であっても流量を測定するときの条件によって材質に与える腐食の状態が大きく変ってくることである。  

 その条件とは濃度や温度・圧力あるいは流体に含まれる他の物質(不純物であったり、工業的な混合物)の種類やその割合による。  

 例えばフッ酸に対するA級材質は表-1(末尾)に示すようなものとなる。

 先の腐食性流体の項で述べたように、金・白金以外の金属は何らかの形で全て腐食の対象となる。  また、硝酸に対するA級材質を表-2(末尾)に示す。  

 これらの表が示すように濃度や温度によって耐食材質やその状態も変わってくることが分かる。  

 これらの耐食表を基に流量計の材質を選定することになるが、現在実際に使用されている腐食性流体用の流量計には電磁流量計の採用が増加している。  

 その理由として考えられるのは、接液する大部分が絶縁性のライニング部であり金属の接液部は電極とアースリングの極僅かな部分であるため高価な貴金属が経済的にも使用可能であるためと考えられる。  

 また、最近では接液する金属部である電極を有しない無電極式の容量式電磁流量計が実用化されたことも電磁流量計の採用が増加している理由の一つと考えられる。

 腐食性流体用の流量計として現在まで使用されているものには古くから容積式流量計や絞り式(オリフィス)流量計などがあるがこれらは現在までに多くの現場で実績を持っているため、材質選定や使用に当たってのノウハウが豊富にあると考えられる。  

 ここでは最近使用実績やトラブルの解析が進んできた電磁流量計について取り上げていきたい。  

(電磁流量計の接液材質)

 腐食性流体に電磁流量計を使用するに当って、接液する部分の材質を検討することになるが、電磁流量計の場合その構造上接液部は電極・ライニング・アースリングの3ヵ所のみであり無電極の容量式であればライニングとアースリングの2つだけとなる。  

 通常電極とアースリングは同じ材質を使用することになるので、材質の検討は金属の電極とアースリングおよび絶縁物であるライニングの2つを考えればよい。  

 これらの材質選定に当たっては、先ず今までに実績のある既設流量計があればその実積に従うのが第一である。またその流体のプラントに使われている装置材質を参考にするのも有効な方法である。     (電磁流量計の電極とアースリング材質)

 耐食材のデータからも分かるように、同じ流体であっても濃度や温度によって金属に対する腐食性の度合いが大きく変わってくる。  

 標準的な電極材質としてはSUS316(L)が使われていることが多いが、ここで取り上げている腐食性流体に対しては不適であることが多い。  

 これらの流体に対して幅広い条件で使用できるのは、白金(Pt)であるが高価であることが難点となる。温度が低いなど使用条件によっては他の材質(例えばハステロイCなど)の使用が可能となることがあるので十分検討する必要がある。  

 電磁流量計の電極材質では使用できる金属の条件として、構造材における耐食材と大きく違う点があることに注意が必要となる。  

 その理由は、電極が電気回路の一部であることから導電性を保つ必要があると云うことである。一般に耐食性のある材質では接触する流体との間に不動態と呼ばれる酸化被膜を生成し耐食性を発揮するものがある。基本的に酸化皮膜は電気的に絶縁性であるため、構造材としての耐食材には使用できるが電気回路としての電極用耐食材には不適である(不動態を作りやすい金属としてはアルミニウム・クロム・チタンやこれらを含む合金がある) 。

 従って、電極の材質として使用できる金属は不動態を生成せずに耐食性をもつものが使用可能となる。白金が幅広い腐食性流体に対して電極材として使用できるのは、不動態による耐食性ではなく白金そのものがこれらの流体に侵されることもなく、また酸化することもないためである。  

 白金以外の金属としてはタンタルやハステロイなども電極の材質として腐食性流体に使用されることが多い。  

 ステンレス(SUS)やアルミニウムは電気回路に採用されることが多いが、通常の環境(特に腐食性流体の環境ではない場合)でもこれらの金属は表面に薄い不動態(酸化被膜)を生成しているが、極く薄い膜であるため電気的な導通を保っている。

(電磁流量計のライニング材質)  

 ライニングに用いられる材質は電気的に絶縁である必要があるのでプラスチックやゴム(樹脂)、セラミック(ガラスを含む)等が用いられる。  

 (テフロンライニング)  

標準的にはフッ素樹脂(通称テフロン)が採用されているが、通常耐薬品性に優れているフッ素樹脂でも、ここで取り上げている腐食性流体ではテフロン(PFA・PTFE)では不具合を生じることがあり、万能ではない。 よく知られている現象は、フッ酸や硝酸で使用した場合のテフロンに対する浸透現象である。  

 これはテフロンがこれらの液に侵されるのではなく、例えばフッ酸の場合、結晶化度の低いテフロンライニングにガス化した低分子のフッ化水素ガス(フッ酸・HF)が浸透して絶縁劣化を起こしたり、変形(膨らみ)を生じたりするトラブルが発生するものである。  

 また、硝酸でも同じような事象が報告されておりテフロンライニングの変形や剥離、および電極部の絶縁不良などライニングへの硝酸ガスの浸透による不具合が派生している。これらの不具合は腐食によろものではないので、運用によってある程度防止することができ寿命を延ばすことができる。図-2にテフロンへの透過の様子を示す。  

 フッ酸や硝酸ではいずれもガス化した分子がライニングの結晶の隙間に浸透して起こるトラブルであるため、これらの液がガス化しないような運用をすべきである。(配管内 の流体が空になる時間や液が静止している時間が長いほどこれらの不具合の発生が早い、または多いと云うことがわかっている)

 フッ酸や硝酸以外の酸やアルカリの流体に対してはテフロンライニングで十分対応できるので硫酸や苛性ソーダ(水酸化ナトリウム)には使用可能である。   

(セラミックライニング)  

 フッ酸や硝酸にはテフロンの分子間に、これらのガスが浸透し電極の絶縁劣化や材の膨潤を起こすことがあり流量計の寿命を縮める。  

 テフロンに代わって使用されるのがセラミックであるがセラミックの場合ライニングではなく測定管そのものをセラミックで製作することになるので正確にはセラミック測定管となる。 図-4 にセラミック測定管の電磁流量計検出器構造を示す。  

 セラミックの場合にも腐食性流体に対して万能ではなく、状況によっては腐食される場 合があるので注意が必要である。  

 例えばフッ酸では、フッ酸濃度が40%〜50%の中間濃度でセラミックが腐食されるので注意が必要となる。この場合テフロンライニングを使用し、寿命を延ばすために、測定配管(流量計)内を満水状態に保ち出来る限り流体を静止させないなど、流体がガス化しないような運転状態で使用するための工夫が必要である。  

 また、フッ酸濃度が99%を超えて無水状態になってきた場合、導電率が低くなるので通常の電極式電磁流量計が使用できなくなり、無電極式の容量式電磁流量計でないと測定が困難になってくる。図-5に容量式電磁流量計の原理を示す。硝酸に対しては一般にテフロンライニングで対応しているが、アプリケーションとして可能であれば無電極式の容量式電磁流量計を使用することも推奨できる。セラミック自身が硝酸に侵された例は報告されていない。


容量式電磁流量計の原理回路図


表−1 フッ酸に対するA級材質一覧(化学装置材料耐食表より)


表−2 硝酸に対するA級材質一覧(化学装置材料耐食表より)