HOMECONTENTS>化学品の流れを測る

2、腐食性流体

  流量計測の対象となる流体の中で流量計を構成する材料を腐食するもの(腐食性流体)の場合は、  測定原理や精度確保など流量計測にかかわる基本的事項の他に、使用する流量計の材質に何を  使う(選定)かと云う問題に直面する。  腐食性流体の代表としては、酸やアルカリに代表される化学薬品があるが、海水など通常はにわ  かに腐食性を発揮しない流体であっても、長時間の使用では材料にダメージを与えるような流体も  ある。また使用条件によって同じ流体でも腐食性がなかったり腐食性を発揮したりとその挙動が変  わってくる場合があり、より複雑性が増してくる。

(1)腐食とは
 自然に存在する鉱物は純粋な形(物質)で存在することは少なく、そのほとんどは何らかの化合物として存在する。
 例えば鉄の原料である鉄鉱石は酸化鉄として存在するし、アルミニウムは酸化アルミニウムであるボーキサイトから精錬して得られる。腐食と云う現象の一つの見方として、例えば金属であれば人工的に精錬して作られたものが精錬前の元の姿に戻る現象であると云える。
 一般に腐食と云えば化学的作用により外見や形態が損なわれた状態であり、金属の場合は特に錆びと表現されている。また、金属以外(生体等)では腐食した状態を腐敗と呼び、これは生物学的作用により物が腐食されたものと考えればよい。
(2)金属の腐食
 金属の腐食は酸化還元反応により、表面の金属が電子を失ってイオン化し、金属の表面から脱落していくことから進行していく。
 酸化還元反応とは、金属と酸素が反応するときの様子を表すものであり、酸素と反応することを酸化と呼び酸化した酸化物から酸素を取り除いて元の金属に戻すことを還元と呼ぶ。
 例えば、金属の銅を酸素と反応(空気中に曝して置く)させると、酸化反応により表面が酸化されて酸化銅となる。この酸化銅を高温で炭素と反応させると、酸化銅中の酸素と炭素が反応し二酸化炭素となる。
 一方、酸素を奪われた酸化銅は元の金属の銅となる。この現象の酸化銅中の酸素と炭素が結びつく反応が酸化であり、酸素を奪われて酸化銅から元の金属の銅に戻る反応が還元である。
 この現象だけからみると酸化還元反応とは必ず酸素が介在する反応となるが、現在では最初に述べたように酸素の介在に限定せず、物質間に電子の授受を伴う反応のことを指すようになっている。
 金属のイオン化しやすさを表すものとしてイオン化傾向と云う尺度があり、イオン化傾向の大きいものが、より腐食しやすいと考えればよい。
 水素よりイオン化傾向の大きい金属を一般に卑金属と呼び空気中でも高温で容易に酸化する。一方イオン化傾向の小さい金属を貴金属と呼び、金、銀、白金などがこれにあたる。
 (腐食の分類:1)
 金属の腐食の起こり方は次のように分類することができる。
 

 ここで湿食とは水分が関わる腐食のことであり、乾食とは水分が関わらない腐食のことである。
 別の言い方では、湿食の場合外部からの電流により電気分解による腐食が起こることであり、この場合水分が関わってくることになる。従って乾食の場合腐食性ガスによる場合と非電解質による腐食となる。
 電食では周囲に流れているいろんな電流源からの迷走電流が主な原因となる。また、湿食では電食の他、自然腐食と呼ばれるものがあり、局部的電池作用、ミクロ的通気差、バクテリアによるものや異種金属の接触マクロ的通気差などがある。

  イオン化傾向 (イオン化傾向の大きいものから並べた表を下記に示す)
      

      

 (腐食の分類:2)
 もう1つの腐食の分類として、その発生や進行の様子により次のようなものがある。
 ?孔食?  
 腐食して穴が開くくとであるが、その発生の様子は次のよなものである。
 金属表面に局部的な保護被膜の破壊が起こることにより腐食が始まる。ステンレスなどの腐食に多くみられる。
 例えば鉄の孔食ではCl-(塩素イオン)の存在下においては図のような状況で進行する。

 孔食は金属表面を保護している不動態被膜が破壊されることによって始まる。
 (不動多被膜とは金属表面に生じた酸化物や水酸化物の薄い被膜によって保護されることで腐食の進行が停止することで金属自身が保護されるもの)
 従って、孔食の発生場所は表面の性状が不均一な所(傷など)や他の物質が接触して いる場所などが一般的である。
 ?隙間腐食?
 よく見かける腐食に、ボルト、ナット、ワッシャーなど金属の重ね合わせ部分や、フランジ のパッキンのように金属とゴム、プラスチックの合わせ目、またスケール(付着物)錆び、 生物や異物などの付着物の隙間部および塗装・ライニングなどの履材のキズ・剥離の隙 間などに発生するものがある。
このような腐食を隙間腐食と呼び、金属と異物の隙間が選択的に腐食する現象で特に 表面に不動態被膜を生成することで耐食性を維持している金属であるステンレス鋼や アルミニウム、チタンなどに多く見られる。
 隙間が形成されると、隙間内部の溶液は隙間内に封じ込まれるため、酸素濃度は外部 より低くなり、酸素濃淡電池が形成され、隙間内部がアノード(陽極)、外部がカソード (陰極)となって腐食が生じる。
酸素の欠乏域である隙間部では、金属表面の薄い不動態被膜が不安定となり、Clイオ ン等のハロゲンイオンによって容易に破壊され、より強く腐食されることになる。
 ?ガルバニック腐食?
 異種金属が接触することによって金属が腐食する現象をガルバニック腐食と呼ぶ。
例えばステンレスと炭素鋼が接触するとき、両者の間に水が存在すると、これが電解質溶液となって 電気回路が形成され、両者の腐食電位の違いのため腐食が進行する。この場合、より電位の低い 炭素鋼の方が腐食することになる。

(3)代表的な腐食性流体
 工業計測の対象となる流体の中で、代表的な腐食性流体である化学薬品には次のような物がある。
 @:フッ酸(hydrogen fluoride).・・・・・フッ化水素 HF
   刺激臭のある無色の発煙性液体。多くの無機、有機化合物を溶かし、その溶液は高い導電率を示   す。無機、有機フッ素化合物の製造に用いられる。フッ化水素は、その水溶液とともに極めて毒性   が強く、皮膚に触れると激しく痛み内部に浸透して腐食する。水溶液は、フッ化水素酸

   (hydrohluoric acid) またはフッ酸と呼ぶ。白金、金は侵されず、銀、銅は徐々に侵される。鉛は表   面だけが侵され、その他の金属は全て溶ける。またガラスを腐食するのでガラスの目盛や模様付   けに用いられる。
 A:硝酸(nitric acid)・・・・・HNO3 
   無色の液体で湿気を含む空気中で発煙する。代表的な強酸の一つで、様々な金属と反応して塩を   形成する。
   高い導電率を示し、硫酸よりも金属に対する作用は強く銅、銀なども溶かす。水素よりイオン化傾   向の小さい金属溶かし、白金、金は溶けないが硝酸と塩酸を混合した王水ではこれらの金属も溶   かすことができる。
   アルミニウム、クロム、鉄は表面に酸化被膜を作り不動態となるため腐食が進行しない。有機化合   物のニトロ化に用いられ、硝酸塩から火薬、肥料などの製造に用いられる。
 B:硫酸(sulfuric acid)・・・・・H2SO4 
   無色の油状液体。金属と反応あせた時の挙動は、金属の種類の他、硫酸の濃度・温度に依存する   。例えば濃度と温度がいずれも高い場合では酸化力が強くなる。
   反応生成物の種類も多く、一般には水素(H2)、硫化水素(H2S)、硫黄(S)、二酸化硫黄(SO2)、金   属の硫化物、硫酸塩が生成する。
   希硫酸は水素イオン化傾向の大きい金属と反応し水素を発生させる。ただし、鉛は表面に不溶性   の硫酸塩を生じ反応(腐食)が進行しない。スズ、ニッケルなどの反応も極めて遅い亜鉛との反応   は実験室で手軽に水素ガスを発生させる方法として用いられる。
   加熱した濃硫酸(熱濃硫酸)は強い酸化力があり、酸化剤として使われる。イオン化傾向の小さい   銅や銀などとも反応し、炭素や硫黄などの非金属反応する。
   用途としては肥料、繊維、薬品などの製造に欠くことのできないものであり、界面活性剤として合成   洗剤やシャンプー、金属の電解精錬用や鉛蓄電池の電解液、硫安・過リン酸石灰などの肥料の原   料として用いられる。
 C:塩酸(hydrochloric acid)・・・・・HCl
   無色透明または薄い黄色の液体。硫酸、塩酸と並ぶ一般的な強酸の一種であり、水素よりイオン   化傾向の大き金属と反応し水素を発生する。
   例えばアルミニウムや亜鉛と反応し、塩化アルミニウムや塩化亜鉛と水素を発生する。水素よりも   イオン化傾向の小さい銅、銀、白金、金などは希塩酸には溶解しない。
   硝酸の項でも触れたが塩酸と硝酸を混合した王水は白金や金を溶かすことができる。
   爆発性、引火せいはないが金属を腐食し、そのとき発生する水素が爆発することがある。
   工業的には医薬、農薬、調味料などの製造に広く使用されており、また洗浄剤として日常の用途と   して一般に使用されている。
 D:水酸化ナトリウム(soudium hydroxide)・・・・・NaOH
   苛性ソーダとして知られている。無色・無臭の固体でだが水に溶解し強いアルカリ性を示す。空気   中の水と二酸化炭素(CO2)を吸収して炭酸塩を作り、これが流量計測では障害となることが多い。   理由はこの炭酸塩が絶縁性の付着物として接液部に付着し、例えば電磁流量計の電極に付着す   ると電極抵抗を大きくして測定に支障をきたすことになる。
 E:過酸化水素(hydrogen peroxide)・・・・・H2O2 
   無色で弱酸性の液体で強い酸化力を発揮する。不安定で酸素を放出して水となる。
   強い腐食性を持ち、それ自身は可燃物ではないが他の物質と混合すると過酸化物を作り発 火する   ことがある。
   工業的にはパルプの漂白や半導体の洗浄などに使用される。塩素系の漂白剤が環境負荷の大き   い廃棄物を伴うのに対し、過酸化水素は水と酸素に分解され、いずれも無害であるため環境負荷   の小さいものとして環境にやさしいことで需要が広まっている。
 F:海水
   海水は天然に大量に存在し、日常的に接するものであるから腐食性などはあまり気にする存在で   は無いが、工業的には腐食性流体として扱われるべき液体である。
   海水のPH値は8前後、溶存酸素は10ppm程度であり淡水とそれほど変わりはないが淡水と比べる   とかなり強い腐食性を持っている。
   炭素鋼では全面腐食の条件として、液の温度とPH値および溶存酸素によって腐食速度が決まると   されている。しかし、これらの値は淡水と比較して海水のそれは同程度であのに何故海水は淡水に   比べて強い腐食性をもっているのだろうか。
   海水中でも条件によっては淡水と同程度の腐食に収まることもあるが、海水には1.9%と云う大量   の塩化物イオンを含んでおり、電気抵抗率が27Ω・cmといずれも淡水の100倍以上も大きいので、   条件次第では強い腐食性を発揮する。