HOMECONTENTS>化学品の流れを測る
3.化学品の流れを計る
 

 1.流量測定における化学品の特徴

 化学のプロセスにおいて流量を測定する場合の問題として次の二つのことが挙げられる。   一つは流体の性状であり、もう一つはプロセス条件である。まず流体について考えてみる。

 

  

(1)化学品の流体の性状
 前項で化学品には有機化学と無機化学があり、それぞれの内容について取り上げてきた。その中で有機化学に属する化学品は、本来生物由来のものであるために現場計測器である流量計に対して腐食性を有するものは無いが、現在では有機化学の多くが石油由来の製品であることから導電性を持たない非導電性流体となっている。
 このため、代表的液体流量計である電磁流量計が使用できない。これに対し、無機化学の製品は硫酸・塩酸・硝酸・苛性ソーダなど腐食性の強いものが多く、流量計の接液材質を選定するときには注意が必要となる。
 化学品の流量測定では、接液部の腐食に対してその耐食材料を選定することが流量計選定の大きな要素を占めることになる。
 最近では腐食ではないが金属に対する水素による透過、脆化や硝酸によるテフロンへの浸透透過が問題となるケースが見受けられる。
 (2)プロセス条件
 化学プロセスでは非常に特徴的な条件が多く存在する。先ず、一般的に言えることは高温・高圧といった物理的に過酷な条件のプロセスが多く存在することであり、特に反応(重合)を伴うプロセスではこの傾向が強い。
 石油化学プラントでは取り扱う流体の性質上、現場の雰囲気は防爆を必要とする。このため使用する計器は防爆システムが要求されることになる。
 また、反応や重合のプロセスはバッチで運転されるプラントが多いが、石油化学の多くは連続運転で操業されるのが基本であり、一旦プラントが運転に入ると年単位で稼働し続ける。
 このため、プラント運転のために設備される流量計は安定した連続運転に耐えることが要求されることになる。
 特殊な例としては、ソーダ工業の電解プラントがある。
 前項の電解ソーダで説明したように、電解プラントは電解槽で食塩水を電気分解して苛性ソーダを得ているが電気分解のために電解槽には電圧が印加せれている。1槽当たりの印加電圧は数ボルトと小さいが、電極面積の大きな槽では流れる電流は数10kAに達する。
 このような環境下では、大電流による磁界が生じ電解槽周辺で使用される流量計に電磁誘導障害をもたらすことを念頭に置く必要がある。
  また、電解槽の電流が迷走電流となり流量計を流れる流体へ流れることで電磁流量計では電極に電位を生じ流量計の出力に影響を与える。
 電磁誘導の現象として流量計に直接影響を与える他に、アース電位の上昇と云う問題がある。 これは、発生した磁界が直接地表に電磁誘導による電位上昇をもたらし、電磁流量計の基準電位であるアース電位が変動し流量計の出力信号に影響を与えるものである。

 2.化学品に使用される流量計

(1)オリフィス流量計
 化学プロセスではオリフィス流量計が多く使われており、特に石油化学においては液体の性状 から電磁流量計が使用できないこともあり、運転管理用の流量計としてはオリフィス流量計が主流となっている。
 ここでオリフィス流量計について、基本的な事項を下記に説明する。
オリフィス流量計の差圧(儕)と流量(W)の関係は次

の式で表わされる。

   

 ここで、W:質量流量、C:流出係数、ε:気体の膨張補正係数、
      β:絞り直径比 、儕:差圧、ρ1:流体の密度、d:絞り孔径 を表す。
     この式で差圧(儕)を得るために使われるのがオリフィス(絞り機構)であり次の図1〜2で示す ような構造と形式がJIS Z 8762 で規格化されている。
 (1−1)オリフィスの構造と差圧の取出しについて
 図1はオリフィスの構造と管内の圧力変化の様子を表している。
 絞り機構であるオリフィスは円盤状の板に同心円の孔をあけたものであり、構造としては至って 簡単なものである。  オリフィス流量計の規格である JIS Z 8762 では同心円状の孔の大きさを決めるための条件やそれに基づく計算方法、および工作、仕上げの精度を細かく規格化している。
 図1は管内の圧力変化も示しており、流れの上流(左)から下流に向かって変化する圧力の様 子を表している。

  
 管内圧力はオリフィスに近づくと直前で一旦上昇し、オリフィスを通過すると急激に降下する。
 図1のようにオリフィスを通過した流体圧力は、一度降下した後除々に回復に向かうが元の圧 力までは回復しない。このように最終的に回復しない圧力がオリフィスによる圧力損失(永久 圧損)となる。  図2 はオリフィスの差圧取出し方法を示したもので、JIS Z 8762には図2-1〜2-3のように 3種類の方法が規格化されている。

 @ コーナータップ 
 図2-1はコーナータップと呼ばれる差圧取出しで、オリフィスプレートの直前・直後(コーナー) の圧力差を取り出している。
 図2-1ではオリフィスプレートのコーナーから圧力を取り出すためにリングと呼ばれる環状 の金属環でオリフィスプレートを挟み込む構造となっている。 このため、この方式のオリフィスをリング付オリフィスと呼んでいる。
 A D-D/2タップ
 図2-2はD-D/2タップと呼ばれるもので、上流側はオリフィスの上流面から配管の内径(D) と等しい距離から圧力を取り出し、下流側はオリフィスの下流側面から0.45D〜0.55Dの位置 から圧力を取でしている。下流側の取出し位置のバラつきはオリフィスの絞り比(β)に値のよって決まる。
 B フランジタップ
 図2-3はフランジタップと呼ばれるもので、オリフィスプレートを配管に取り付けるフランジに 圧力取出しの孔をあけたもので、オリフィスフランジと呼ばれる専用のフランジを用いている。

 (1−2)圧力取出しと差圧伝送器への配管(導圧管)
 図3に代表的な流体状況と圧力取出しおよび差圧伝送器までの配管(導圧管)の様子を示す。
 @図3-1は乾燥した気体流量を測定する場合で、測定ガスからの凝縮液を心配する必要の ない場合である。
 A図3-2は蒸気または湿り気体を測定する場合で、圧力を取出した後の導圧管で流体が冷 やされ凝縮液が導圧管に溜まることを想定した配管となる。
  この場合あらかじめシールポット(凝縮槽)と呼ばれる液溜めを設け、凝縮液を最高レベルまで入れておく、使用開始後測定流体からの凝縮液が生じても本管へ戻るように圧力取出し管に傾斜をつけておけばシールポットの液面はそれ以上上昇することはなく、安定した差圧が得られる。
 B図3-3 は湿り気体ではあるが、凝縮液(ドレン)の発生が少ない場合の例である。
  この場合シールポットを設けず、導圧管の下部にドレン弁を設けて必要な時に配管下部に溜 まったドレンを抜くことで対応できる。
 C図3-4は液体を測定する場合で、圧力取出し管は気体や蒸気とは逆に下向きにとり出すことになる。   もし、導圧管に気体が混入しても気体は上向きに上がって行くので本管へ戻るが、場合によっては気泡を抜くための配管と弁を点線のように設けてもよい。




図3 差圧取出しと差圧伝送器の接続


(2)電磁流量計
 石油化学の製品には導電率がほとんどないため電磁流量計は使えないが、無機化学の分野では多くの使用例がある。
(2−1)耐食材料の問題
 硫酸や苛性ソーダなど腐食性の強い流体では接液材質が問題となるが、電磁流量計の場合は接液部に金属が占める割合が小さいため、耐食材質の選定が他の流量計に比べて有利になる。
 電磁流量計の接液部の大部分は電気的に絶縁物であるライニング材で占められており、通常フッ素樹脂(テフロン)が使用されている。
 フッ素樹脂(テフロン)はほとんどの薬品に対して耐食性を発揮するが、摩耗性や衝撃に弱いためこのようなアプリケーションではゴムや最近ではセラミックなどが使われることもある。
 また、テフロンはある種の液に対して透過性をもつことがあり注意が必要である、その代表的な流体として硝酸やフッ酸が挙げられる。
 これらの液では、液中の透過分子がテフロンのライニング材の分子の隙間へ浸透しライニングの反対側へ透過した後、再液化することで電極などの絶縁を劣化させるという現象を起こしている。
 図4 は透過のメカニズムを示したものである。


図4 透過のメカニズム


 従って、このような液体に対してはセラミックライニングを使うべきである。
 ライニング以外の接液部として電極とアースリングがある、これらの材質には導電性のある金属が使われるが、標準的にはSUS316L等が使われているので標準材質で対応できない場合は他の金属(チタン、タンタル、ハステロイ、白金・・・・)を選定することになる。
 最近では、電極が接液しない容量式電磁流量計が実用化され導電率0.01μs/cm程度までの流体が測定できるようになり、電磁流量計のアプリケーションを広げている。
(2−2)水素透過と脆化の問題
 化学プラントで稀に問題となるのが水素透過と水素脆化である。水素透過とは水素の原子やイオンが金属のダイヤフラムの分子間を透りぬけることで、障害の具体例としては圧力計のダイヤフラムを透りぬけた水素原子やイオンが封入液室で気泡化して溜まり、出力のドリフトや特性の劣化を引き起こす。
 水素脆化とは、水素が金属に溶解することにより、金属の延性や展性が劣化して脆くなる現象である。
 例として、圧力伝送器における水素透過についての対応策を表1に、水素脆化についての対応策を表2に示す。

(2−3)電解槽周りの流量測定
 電解槽では数10kAの電流を流しているため、この周辺で使用される流量計に種々の障害を与えることがある。
 @磁界による障害
 プロセスに流れる大電流により、その周辺には強力な磁界が発生することになる。
 電解槽周辺で使用される流量計は、この強い磁界の影響を受け電磁誘導障害に曝されることになる。特に電磁流量計は電気回路および磁気回路をもって構成されるのでその影響は大きい。
 A漏洩電流(迷走電流またはリーク電流)による影響
  電解槽への流体の配管は塩ビ管や内部をライニングした配管が使用されるため、電極間に流れる電流の一部がこれらの配管中の流体に漏洩することがある。
  このラインに電磁流量計があると流量計を流れる流体に電流が流れることになり、測定値に影響 を与えることになる。 図5-1と 図5-2 はこの様子とその対策を示している。


図5 電解槽からの漏洩電流に対する対策