HOMECONTENTS>化学品の流れを測る

3.空気の流れを計る

 

 1.工業的に測定する空気の流れとは

 空気は水と同じく、われわれにとっては特別な存在ではなく常時触れ合っているものでありまた空気の存在なしには生きていくことのできないものである。
 空気の流れは日常的には風として感じることができるものであり、気象現象の中でごく一般的な現象である。
気象現象としての空気の流れである風は、気象観測で風速計として馴染みのあるものであるが工業的にはもっと過酷な条件で測定することになり、その条件は広範囲である。

1.空気の流れを作り出すもの

(1)気象現象としての空気の流れ(風)
 気象現象である風も工業計測の測定対象となる。気象学的には人間の生活圏での風と、航 空機など高層圏を対象とした(ジェット気流など)高層気象の風に区別される。
 生活圏で感じる風は、心地よいそよ風から嵐や竜巻、突風など災害をもたらすものまで多様な形で現れる。そのため日々の気象データによる予報は我々の生活に欠かすことのできないものとなっている。
飛行場や海上の風速(風向)は、航空機や船舶の運航に重要な要素でありその観測データは欠かすことのできないものとなっている。
 工業地帯や橋(特に最近の長大橋)などの構造物にとっては操業や通行の条件として観測されており、最近の都市では超高層ビルによるビル風の発生源となって生活環境に影響を与えている。
また、最近では新エネルギー源として風力が利用されるようになり風向・風速のデータの重要性が増してきた。
(2)工業的な空気の流れ
 空気の流れである風は産業のあらゆる分野で利用されており、その活躍する場面は広範囲である。
農業の世界では古くから自然の風を利用して作物の実と殻やごみを分別し、ごく最近まで手回しの農機具・唐箕(トーミ)でこれと同じことをやっていた。
 日本の工業としては、砂鉄を精錬するタタラ製鉄でのフイゴは高温を得るために無くてはならない道具として活躍してきたし、つい最近まで町や村の鍛冶屋で見かけたものである。
現在の産業においては、いろんなプロセスにユーティリイとしてまた原料として空気は利用されており、一番身近な流体であると云える。

(2−1)空気の流れとその発生源
空気の流れを作り出すものにはいろんな装置があるが、基本的には次のように分類される。
 1.ファン
  
図1.軸流ファン    図2.ファンモーター
  圧縮比1、1以下(吐出圧:約10KPa以下)のもので、遠心ファン・軸流ファンなどがあり、用途としては排煙、各種装置の送排風、除塵、集塵、乾燥機、燃焼用送風などがある。
ファンモーターはモーターと羽根(ファン)が一体となった構造のもので、電子機器やコンピュータなどの冷却用として機器に組み込まれて使用されている。また、家庭用の排気ファンもこれに属する。
 2.ブロワ
  
図3.遠心ブロワ    図4.ルーツブロワ
 送風機の中で、圧縮比1、1〜2程度(吐出圧100kPa程度まで)のものをブロワと云う。
遠心ブロワ、軸流ブロワ、容積ブロワなどの方式があり、用途としては液体中への曝気、バーナー燃焼空気への送風、燃焼炉内への押込み送風、冷暖房送風、集塵装置、空気搬送などがある。
 3.コンプレッサー
 圧縮比2(100kPa)以上の送風機をコンプレッサー(圧縮機)と云う。
 往復動(レシプロ)、スクロール、スクリュー、ロータリー等の方式があり、用途は車両ブレーキ用空気源・空圧機器用空気源等の動力源、噴霧器、また空気以外の気体圧縮装置として冷凍機の冷媒圧縮機として多くの需要がある。
               
          図5.往復動(レシプロ)コンプレッサー      図6.スクロールコンプレッサー

(2−2)流量測定の対象となる装置
 流量測定の対象となる空気の流れは、最初に取り上げたように自然現象の風から工業的に作り出されたものまで広範囲に亘っており、それらを流量測定の観点から整理してみる。

図7.風杯型     図8.風車(プロペラ)型
 1.気象観測
 自然現象の風速を測定するもので風速計が用いられる。風速計の種類としては風杯型、風車型が一般的に用いられるが、最近では超音波式や熱線式なども作られている。 風速ではないが、航空機の速度計として用いられるピトー管も一種の風速計と考えられる。個々の風速計の詳細については機器の説明の項で取り上げる。
 2.ダクトの流量測定
 ダクトとは空気を通す管(通風管)のことであり、建造物(建物)や船舶・車両・航空機の空調、給排気・排煙等に用いられる。
 

図9.ベーン式風速計 図10.熱線式風速計センサー
通常、断面が矩形の角ダクトと円形の丸ダクトがある。ダクト内の空気の状態は低圧(数10KPa以下)であることが一般的であり、風速も比較的低速の場合が多い。
 このため、流量(風速)測定上は難しい条件を備えていると云える。またその形状が矩形である場合が多く、工業的に使用される流量計の多くが円形の断面を想定していることからも特殊な形状の部類に入る。
先ず、断面が矩形の角ダクトの場合は直接流量を測定する流量計は無く、流路の断面の平均流速と断面積から流量を測定することになる。
 この場合如何にして流路の平均流速を測定するかが流量測定の精度を左右する。
               
         図11.ピトー管                      図12.多孔式ピトー管  

 流速計として一般に使用されるのは、べーン式、ピトー管式、熱線式、超音波式、などがあるがどれも基本的にセンサーの設置される一点のみの風速を測定するものでありダクト全体の平均風速を測定するには、センサーの数を増やして測定箇所を多くする必要がある。この目的のために作られたのが多孔式ピトー管と呼ばれるものであり、いくつかのメーカーから発売されている。ただし、原理はピトー管であるため信号変換器として差圧伝送器が必要になるが、多くの場合発生する差圧は1KPa以下であるため微差圧伝送器を必要とすることが多い。
 もちろん丸ダクトで流体条件が満足すれば通常の絞り式(オリフィス等)や渦流量計が使えることは云うまでもない。
 これら各種の流量計はその選定にあたって、それぞれの測定原理、特徴、測定の目的などを検討し使用に適したものを選ぶことになる。
 各計器の測定原理や特徴、使用上の注意事項に ついては機器の説明の項で取り上げる。

 

2.一般配管の流量測定

 工業計測としての空気流量測定の大部分は、産業用各種装置の中で使用される空気の流れである。その場合空気の流れる流路は、一般の配管であることが大部分となる。一般の配管とはSGPを始めとする金属管であり一部PVC等のプラスチック配管が含まれることになる。
 この場合の流量計測は、いわゆるプロセス計装の世界での代表的な流量測定であり、多くの流量計が存在する。
 また、この場合の測定対象である空気の状態は、温度・圧力・流量等のプロセス条件によって広範囲にわたるものであり、その条件に適した流量計を選定する必要がある。
 プロセス用流量計の代表的なものとして、オリフィス流量計がある。これについてはこのシリーズの中でいろんな場面に取り上げているので、一般的な事項については参照してほしい。
 次に最近省エネ型の流量計として注目されているのが渦流量計である。オリフィス等絞り式流量計に対して圧損が少なく、流量特性もリニアであるため使いやすいことと、設置に関して導圧管が不要であり工事費が少なくすむと云う利点がある。
 高圧の空気流量ラインではコリオリ式の質量流量計が使用できる。空気の圧力を大きくすることで密度が大きくなりコリオリ式流量計の測定範囲に入るからである。
 プラントの現場で流量指示計として広く使われているものに面積式流量計(ローターメータ)がある、この流量計は構造が簡単で現場で流量を目視で確認できるのでフローゲージとしての需要が多い。
 また、現場指示だけではなく発信機構を付加すれば計装システムの流量センサーとして使えるのでそれほど精度を要求しない場所や他に適当な流量計がない場合によく使用されている。
 その他、面積式中量計はプロセスの中での流量測定だけでなく、液位測定やその他の空気パージが必要なときにパージメータとして専用的に使用されている。


図13.渦流量計の渦発生体の構造  図14面積式流量計:左から(ガラス管)(金属管伝送器付)(パージメーター)

3.特殊用途の空気流量測定

 実験プラントやテスト装置では微小流量の空気流量測定が必要となることがある、このような要求にこたえるのがマスフローメータで知られる熱線式の流量計である。
 この流量計はマス(質量)フローメータであるが、原理的に質量そのものを検出していないので測定流体によってメモリ付けが必要となる。
 本来の質量流量計(原理的に質量を検出する)は、先に述べたコリオリ式だけである。
    
図15.マスフローメーター     図16.ラミナーフローメーター (層流型流量計)  

      
図17-1.ソニックノズルの例  図17.2ソニックノズルの 原理構造図

 図16に示したラミナーフローメーターは層流型流量計と呼ばれるもので、流体が層流状態で流れるとき一定の距離を流れる間で発生する圧力降下が体積流量に比例すると云う現象を利用した流量計である。
 この流量計は絞り式流量計(オリフィスなど)が流出係数が安定する高レイノルズ数(乱流)領域で使用されるのに対し、低レイノルズ数(層流)領域で使用され内燃機関の吸入空気量の測定やファン、ブロワーの送出量等の流量測定に使用されている。
 図17のソニックノズルは流量を測定する流量計ではなく、一定の流量を発生させることのできる標準流量発生器として使用されるもので、流量計を校正するための基準器である。
その動作については、機器の説明の項で述べることにする。