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計装Cube53 運転改善への“現場力”の向上と実践
化学プラントにおける運転員のスキル開発への取り組み


奈良先端科学技術大学院大学 倉 恒 匡 輔/西 谷 紘 一
2007年10月
キーワード「特別寄稿/運転支援/教育」

    

 今日,製造業では2007年問題などが話題となり,技術・技能伝承の重要性が高まっている。そのため,プラント運転員の実態調査を行い伝承を可能にする育成の課題について考察した。この調査は3製造課(いずれもバッチプラント)の運転員と運転経験者の約120名に対してアンケート形式で行った。4つの視点(@運転マインド,A運転に必要なもの,B異常の発見と対応,C教育のあり方)に関する20の設問への回答を分析した結果,次のことがわかった。
  ・運転員は標準作業手順書(SOP)で学習しているが,SOPには作業の理由や背景,正しく作業が行われなかった場合の影響などの記述が余りない。
  ・異常時の対応では,多くの運転員は何らかの不安を感じたり自信があると言い切れない状態にある。
  ・日々の運転業務で重要な,すべての製造管理要素に注目したオペラビリティ・スタディの訓練が十分とは言えない。
  ・運転員個人の成長を念頭においたスキル開発モデルやスキル評価が確立しておらず,運転班全体の編成要件や組織としての運転能力の評価について明文化されていない。
  ・多能工化を実現するためのきめ細かい戦略,すなわち育成についての指針が明確でない。
  ・個人別のキャリアパスが本人に見えないため,多くの運転員は具体的な学習目標を立てにくいことに不満をもっている,と推察できる。
  以上のアンケート結果から,次のような現状認識と共に運転員の育成に関する課題が明らかになった。
  @運転員が定常作業に関するSOPの一定数を自己学習で習得すれば定員化させているが,異常対応のSOPがないため定常作業のように自習できない。また系統的な異常時対応訓練がなく,異常対応では熟練運転員に依存してしまう。そのため,非熟練運転員は異常対応に不安を持ち,運転に自信が持てない状態に陥っていると言える。少人化においてプラントの安全確保と運転員の育成をどのように図るのかは重要な経営課題である。
  A運転のバイブルはSOPである。そのため,定常・非定常作業をすべてSOP化し,必要があれば更新し,伝達していく仕組みをもつことが重要となる。
  BOff-JTを受けた記憶がないという意見が多かったが,入社後数年目に自由参加の研修がある。しかし,製造現場の少人化の影響で,運転員を研修に出すと欠員が生じるため製造管理者層が積極的に研修を推奨しにくい状況にある。
  C運転員には3種類のOJTがある。新人へのOJT,多能工化でのOJT,そして昇格研修のOJTである。新人OJTと昇格研修OJTの間は10数年空いている。この間に多能工化OJTがあるが,自己学習が基本でありノウハウなどの伝授も制度化されていないため,大きなレベルアップは期待できない。この間は,目標管理制度の中での改善業務の中で,知識と論理的思考能力の向上に期待するしかない。
  D班の運転能力を一定レベルに維持するために班編成は重要課題である。このためには個々の運転員のスキルを評価する仕組みと班全体の運転管理スキルを評価する仕組みが必要になる。
  本稿では,運転員に関する現状分析と運転員のスキル開発と評価について考え方をまとめ,最後に,運転員育成をナレッジマネージメントの仕組みを使って行う方法について述べる。


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