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計装Cube31
計装機器を巡る現場エピソード

編集部
2008年6月号
キーワード「フィールド/経験/トラブルシューティング」

エピソード@流量計測−オリフィス流量計「プラントは脈動している」

天然ガスを受け入れ,レシプロコンプレッサで昇圧して流量計測しながら球形タンクに受入れ,送出していた。ところが,オリフィス流量計の計測値とタンク内の圧力変化量が合わない。オリフィスでの計測値が実際の受け入れ量より多くなってしまう。カロリーコントロールの制御にはフィードフォワード制御を採用している。そのためレシプロコンプレッサの出口の正確な流量計測が必要となった。

●対策


原因を追及していくと,脈動で発生するサイン波を差圧の平均値に加算されていたことがわかった。そこで,レシプロポンプの脈動の周波数と幅を計算してチャンバ(クッションタンク)を設けて,脈動を抑え,測定誤差を解消した。

オリフィス流量計の測定原理

 @ベルヌーイの式(エネルギー保存の法則)
  
   ρ:上流側の流体の密度 P1:上流側の圧力
   P2:下流側の圧力 υ1:上流側の流速
   υ2:下流側の流速

 

A連続の式(質量保存の法則)
  
   A1:上流側aの断面積 A2:下流側bの断面積

B下流側bの体積流量
  
   Q:体積流量
  @とAからυ2 を求めて…
       

   実際の計算式(質量流量)
    
      Qm:質量;(Qm=Q・ρ) C:流出係数ε:気体の膨張補正係数
       β:絞り直径比(d/D) d:絞り孔径 D:上流側管径

 オリフィス板の前後の差圧から流量を計測するオリフィス流量計は差圧の変動があると誤差が生じます。プラントにはたくさんのポンプ,コンプレッサにより加圧して流体を搬送しており,変動周期的な流れである脈動流となります。
 脈動流の計測では差圧の平方根ではなく,差圧の平均値の平方根から流量を計算してしまい平方根誤差が生じるとされます。
  ・流量測定の一般式(C:流量係数)
    
  ・脈動流の場合:変化する差圧の時間平均値で計算
   
  ・真流量:各瞬時の平均値
   
  ・平均誤差
   
 そして,この誤差はプラスとなり,オリフィス流量計での測定値が実際の流量より多くなります。測定原理上,オリフィス流量計は脈動流の計測が困難とされます。その対策として
  @差圧を下げる
  A配管径を小さくする
  B容量性の容器と抵抗性の機構で脈動を抑える
  C脈動振幅の小さい部分(例;コンプレッサの吸引側)に絞り機構取り付け位置を変更する
などがあげられています。一般的にはBの対策が多いようで,エピソード@でもポンプとオリフィス流量計の間にチャンバを設けて脈動を抑えています。脈動発生出口に小口径のオリフィス板を設置して抑える方法などもあるそうです。

 そのほか,「脈動の範囲の前に開閉演算を先に行うと誤差はかなり小さくなる」,「ダンピング機能により制御を安定する」などの方法もあるとのことです。またはオリフィス(差圧流量計)をあきらめて脈動に強い流量計(例えば,電磁流量計(液体),コリオリ式質量流量計)に置き換える手もあります(表)。
  

〈引用・参考文献〉
・工業計測技術体系編集委員会:「工業計測技術大系3 流量(下)」,日刊工業新聞社,S39年
・小宮勤一:「流体量の測定」,朝倉書店,2005年
・川村貞夫,石川洋次郎:「メーカーの技術者が書いたやさしく計装がわかる工業計測と制御の基礎」,工業技術社,2008年

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