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計装Cube26
Cubeインタビュー
三井化学(株)技術研修センター長に聞く
−オペレータ教育のインフラ−

実液訓練プラント実習で育成ベクトルを創り出す


聞き手:計装Cube編集長 稲橋一彦

2006年10月に立ち上がった三井化学の技術研修センターは,2007年7月,同社茂原分工場の敷地内に実習の要となるメタノール蒸留訓練プラントの建設を持って,本格的に動き出した。今後,このセンターで,国内5工場のオペレータ,特に新人オペレータは全員,研修を受けることになる。
 センター設立の目的は,工場ごとに相違があったオペレータの技能を,レベルアップと同時に一定の水準に保つこと。つまりオペレータ技能の高度標準化である。
 現在,生産現場では2007年問題に絡み,技能伝承,教育が大きな課題となるなかで,様々な試みがなされている。三井化学の技術研修センターでの実液訓練プラント導入投資は,研修にOJTを持ち込んだ本格的な試みとして評価できよう。  昨年,センター長に就任した半田氏に話を聞いた。


半田安技術研修センター長

――いろいろお聞きしたいことはあるんですが,まず,どんなオペレータを育てたいのか。
半田:オペレータへの望みは,どんな工場でも同じでしょうが,安全への気配りをベースに,運転のみならず,機械や計装に強い運転員ですね。少なくとも機械や計装の人と話すことができる運転員が望まれているわけです。
 あと,オペレータとしては化学工学の知識も必要でしょう。本センターでは,それを目指して体験型設備や教材を整えつつあります。訓練プラントだけでなく,実際に使用していたプラントの計装品,機械や電気機器を集めた実習室もあります。

――プロセス、設備に強いオペレータを育てる?
  半田:例えば,オペレーションといっても幅が広く奥が深い。蒸留塔の中は見えませんがベテランのオペレータはあたかも中が見えているように運転する。そういったノウハウというか技術は伝授して行かなくてはならない。そのため化学工学的知識が必要なんです。ポンプを起動してタンク内部の羽を回したとき内部でどのように攪拌されるか。つまり機械の内部の状態をあたかも見えるような知識を持たせようというわけです。
機械のメンテナンスに関しても同様です。
昔,人が沢山いたときはオペレータもメンテもオーバーラップしていた。境界がはっきりと合ったわけでなくてオペレータもかなり機械のことを知っていました。それが今は省人化されて,境界線が離れてしまうところまできている。その結果,機械屋さんの言葉を運転員が分からなくなってきて,それは機械屋さん,協力会社さんにやらせればいいんだ,という状況が増えてきています。機械屋さん(協力会社さん)の言うことが理解できないオペレータが出始めているわけですが,やはりそれはまずい。メンテナンスの仕事をするしないは別として,すくなくとも言葉を理解して,なにが起こったのか,方向性はどうあるのかぐらいは知る必要があります。

――つまりそれは,オペレータに多能化を望むと言うことですか。
半田:多能化の期待は工場によって違うでしょう。大きいプラントは現場と計器室の担当は,はっきり分かれていますが,小さいプラントは多能化が進んでいて何でもできる。つまりバッチのような小さいプラントは,止めたり動かしたりが多い。そのたび,機械屋さんや工事さんを呼んで話さなくちゃならない。自然に専門用語も覚える。
一方,大きいプラントでは数年に1回しか止めないから,止めたり動かしたりする機会が少ない。そのためなかなか運転停止という非定常な運転経験が身に付かないと言うのが現実なわけです。
ですからシミュレータでできるだけ外乱を発生させて,どう修正動作をするかということも,センターで実習します。

――そうですか。ここにはシミュレータもある? それでは少し,設備の方のお話を伺いましょう。
半田:それでは現場を廻りながらお話しましょう。
まだ,全ての設備が整ったわけではないのですが,基本的なものとして,DCSと組み合わせたメタノール蒸留訓練設備があります。この訓練設備は消防法の危険物認可も取ってある,実プラントと同じものです。ここでオペレータに実際に運転させ実習させます。

 隣の部屋には、同じDCSを使ったシミュレータがあります。シミュレータ室では蒸留設備の動特性を組んで模擬運転をさせるわけですが,これは三井化学のSEがプログラミングしました。工場でもDCSシミュレータを入れているものですから。


その他,体験型設備として水運転訓練設備,異常体験設備があります。
オペレーションに関わるものとしては,メタノール訓練設備と並んで水運転の設備があります。これはポンプの起動運転等基本操作を経験させるためです。また異常体験設備としては,蒸気ハンマリングを起こして衝撃音の体験をさせ,上手に蒸気を流すにはどうしたらよいか教える。またこの設備では配管の一部をアクリルでつないで中の流れを見えるようにして,プラント中で何が起こっているのか実感してもらう。燃えるものですと流速数m以上で大気中に出すと静電気着火が起きる。流速約1m以下なら静電気着火は起こりませんので,安全な流速というのはとのような感覚か体験設備をつかって身体で憶えてもらうわけです。
 その他の室外の設備としては,酸欠タンク体験や高所からの墜落落下など,安全に関する設備があります。
(以上,センター建家裏側にある設備でした。続いて建家の横手にまわりますと)
 建家の2階には本物の高圧盤やモーターコントロールセンターなどを教材に転用した電気研修設備もあります。

――先ほど流量計などの計装品,ポンプやモータなどの機器,高圧ケーブルなどの電気機器など分解したものも見せてもらいました。確かに,座学よりもこうした実物に接した方が,理解が深くなりますね。
半田:ここでできることは学ぶことに対する動機付けだけですね。基本的には製造現場のOJTを抜きにして優秀な運転員を作ることはできない。大事なことはコンピュータやセンサがいくら発展しても人間の五感に勝るものはないといってもいいでしょう。しかし,運転のプロといっても昔に戻るわけじゃなくて,新しい運転のプロ集団としてドキュメンテーションを読み解くことも必要ですよ。
センターとしてできるのは,三井化学のオペレータとしてベクトルをそろえることにあるわけです。

――現場,つまりOJTに要求することがありますか。せっかくベクトルをそろえて送り出すんですから。
半田:研修をはじめて間もないのでフィードバックはこれからですが,研修毎に個々人の理解度を評価して、弱点や伸ばして欲しい点は評価して職場にフィードバックしていきます。そこで,各工場で新人をフォローしているチュータと連携を持つ必要があるでしょうね。
ともあれ,こういうことはいえます。ここに各工場から集まってくるわけですから同期同士で刺激を受け合いシナジー効果が出てくると思います。研修ではグループ討議も取り込んでいますので、お互いに刺激になるはずです。それが、工場にフィードバックされる。なんといっても,人を育成するのは,基本的に製造現場で日々行うOJTが大部分を占めています。
 そこでセンターとして,育成段階別に,カリキュラムを組んでいます。現在のところ,入社時は1週間,3ヶ月たって1週間,半年目で4日、1年目が3日、初年度17日/年ですが,3年後、7年後にまたステップを踏むという具合に,段階別のカリキュラムがある。
 3年ぐらいで自分の担当する仕事を一人でできるぐらいを目指してカリキュラムが組んであります。そこで,先ほどのフィードバックと,カリキュラム(レベルや項目軸と時間軸によるマトリクス)による標準モデルを組み合わせ,工場と連携しながらウォッチするのも大事な役割です。
 各工場で持つ研修機材は、技術研修センターにできるだけ集約し、利用機会を向上させながら、将来的には,移動式の実習型教材を開発して,必要なときにはコンテナに詰めて工場に送ることも考えています。つまり,このセンターをオペレータを定年まで実習教育できる,教育のインフラ施設としていきたいと思っています。

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