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技術・技能伝承へのプロセスシミュレータの活用〜実例からの提案

干スペンテックジャパン  原 真伸
2006/5

キーワード「運転支援/教育/安全/環境」

1.はじめに

 1980年代以降,数々の商用プロセスシミュレータが開発され,多くの企業で導入・活用されている。現在のプロセスシミュレータには,プロセス内で起こっている伝熱,反応,物質移動,相平衡などさまざまな事象に対して,化学工学の先人達が見出した相関式や物性データが組み込まれており,ある意味で先人達の知識やデータを多くのエンジニアが広く活用できるように伝承した成功例である。  技術者は自社で得たデータや技術をこのプロセスシミュレータに組み込んで自社プロセスのモデルを完成させ,基本設計や運転原単位改善検討に用いている。こうして開発されたプロセスモデルも設計や改造プロジェクトが終了するとお蔵入りし,多くの場合日常の運転業務に活用できていない。逆に実際の運転現場で起きている問題がプロセスモデルに反映されるケースも少ない。つまり,部門間のノウハウ伝承の問題がある。
 一方,国内のプロセス産業はアジア諸国とのコスト競争がますます厳しくなり,ユニークな技術やノウハウを取り入れた高付加価値製品や原料供給源などサプライチェーンの利点を生かした主力製品へ注力せざるを得なくなってきている。こうした新製品や主力製品の新規プロセス開発の過程で技術者によって得られた知見やデータを世代間で伝承していくためには,属人的知識としてでなく,基本原理にまで踏み込んだ形で残しておく必要がある。
 デュポン社のジム・トレインハム氏(当時)が1994年のアスペンテック世界ユーザ会で,戦略的事業分野で21世紀に生き残るための8つの重点施策を発表しているが,その中に,プロセスに関して基本原理に沿った基本的かつ深い理解が必要であること,その理解を関係者や後継者が活用できる形,つまりプロセスモデルで実現すること,そしてそれを実験やパイロット設備で実証し,理解の足りない点を改善してモデルにフィードバックすること,とあり,プロセスエンジニアに製造プロセスに関わる技術のモデル化を義務づけている。つまりプロセスモデルを用いた知識の継承である。こうして基本原理に基づいて構築されたモデルは安定・安全操業のための支援ツールとしても活用できる。
 本稿では,モデリングとシミュレーションを技術・技能伝承に活用するための提案として,基本原理をモデル化するためのツールである「Aspen Custom Modeler」と,作成したプロセスモデルを製造現場や他部署で活用するためのツール「Aspen Simulation Workbook」についてその機能,活用例を紹介し,企業内での運用について提案したい。

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