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計装Cube22
安全・安定,そして「安心」のプラント運転へ −分解炉における安全計装PLCの導入−

2006/11
三菱化学エンジニアリング 鹿島支社 メンテナンス技術センター 計装グループ
青山貴征
三菱化学科学技術センターR&Db部門生産技術研究所 環境安全工学研究室
中川昌樹
キーワード「安全/インターロック/安心」


 三菱化学且ュ島事業所では,エチレンプラントの分解炉の増設にあたり,安全計装PLCを導入,2006年より運転を開始した。従来のハードリレーによるインターロックから,国内でははじめてとなる安全計装PLC導入にいたる経緯,安全性評価,今後の期待などについて,三菱化学エンジニアリング褐v装担当の青山氏と三菱化学渇ネ学技術研究センター環境安全工学研究室の中川氏に聞いた。

Q.新設の分解炉に安全計装PLCを導入した経緯は
青山 当初,ライセンサの要求事項の中に,TMR(Tripl Modular Redundancy:三重化)PLCを使ったインターロックが盛り込まれていました。実際にライセンサから受領したP&ID(Process and Instrument Flow Diagram)にはPLCによるインターロックが前提にかかれており,それがスタンダードとして推奨されていました。(@論文A座談会
 一方,プラント建設ベンダには,既設のとおりハードリレー(アナログ演算回路)によるインターロックの仕様で依頼していました。P&IDをもとにシステム設計を進める中,三菱化学科学技術センターほか関連部署とともに,インターロックについて詳細に検討・評価していく段階で,かなりシステムが複雑なものになることがわかりました。そして,そのインターロックに必要なロジックを実際にリレーで組む,あるいは演算部分だけを他のもので行いリレーと組み合わせるなど,いろいろなパターンを検討しましたが,最終的にはセーフティPLCでなければ難しいという結論になりました。
 コストや実績についても検討され,安全PLCは海外では当たり前のように使用されており,リーズナルな製品もでていますが,日本国内ではまだ実績もないためリレーと比較すると割高になってしまいます。また,実績面では初めての安全PLC導入であり,本社においてはIEC61508(B論文)(1998年)が発効された当f時からウォッチされ,いずれその規格に適合した安全システムの導入の方向に進むと考えられていましたが,各事業所ではまだ詳細について把握していませんでした。

Q.安全PLC導入はコスト高であり,実績がない中で導入に踏み切った理由は
青山 ハードリレーの場合,ONかOFFしかなく,演算をハードで構築するとなると,非常に大きなシステムになってしまいます。これらの演算部分は安全性評価の上でも必要であり,ハードウェアネックで安全性を下げるようなことは避けたいというのがあります。また,複雑な安全システムをリレーで構築するとなると,機器点数は増え,安全性はPLC並に確保できたとしてもシステム全体としての信頼性が低下してしまいます。計装担当の立場からいうと,安全を担保するものがあるとするならば,それらを導入して安全性を実現する義務があると考えています。

Q.安全計装PLCを導入する上で,他部門との意志統一はどのように進められたのですか
青山 増設にあたり,製造部門,保守部門,設計部門,そして安全部門として三菱化学渇ネ学技術研究センターから関係者が参加してプロジェクトチームが組まれ,その中で安全システムについてお互いに意見を交わし,検討がなされてきました。さらに,安全計装PLC導入は従来システムよりもコスト高になることもあり,その必要性を経営サイドにも説明してきました。
中川 私は安全性を要求する環境安全工学の立場から参加してきました。確かに安全計装PLCの導入はイニシャルコストでは割高になりますが,実際に事故が発生した場合の経済的,そして社会的,環境的なコストを考えると,安全性の追求は企業として大きなメリットだと考えています。

Q.今回の安全計装PLC導入におけるメリットは
青山 インターロックも制御用DCSも同一のオペコンで監視することができるようになりました。機能について両者は切り離して作りこんでおり,バスやDCSが落ちても間違いなくSIS(Safety Instrumented System)は作動します。監視はすべて情報としてバスを通して見ることができるようになっていますので,従来は見えなかったアナログデータをすべて見ることができるようになったことはオペレータにとっても歓迎されました。これは今回のSISでは冗長化されたセンサの情報,制御情報をすべて見ることができるようになったためです。オペレータは危険なときは安全に止めなければいけないとうのは大前提ですが,今の計器が正しい値を示していることを確認しながら運転をしたいという気持ちが大きいからです。最近では安全,安定という言葉に加え,「安心」な設備というのが大事なキーワードになってきていると思います。
 また,設計においては安全計装PLCはソフトの世界に大分近づいてきましたので,運転のインタフェースに加え,実際のロジックがどこまで働いているのか,計装のエンジニアリング的にはデバックなどが従来のハードリレーの時よりは見えやすくなっています。さらに,変更があった場合,従来では図面や配線の修正を現地で行っていましたが,今はロジックの変更で済むようになりました。

Q.三菱化学鰍ニしての全社的な安全への取り組みについて教えてください
中川 安全性を定量的に評価する「HAZChart解析」(三菱化学鰍ニ三菱総研鰍フ共同開発)というツールがあり,基準値を定めてそれに従いプラント設計しています。その基準に満たないならば,付帯設備をつけるなり,プロセスを変えるなりします。この基準は鹿島事業所のみならず,全国の事業所に共通のものとなっています。
青山 HAZChart解析を非常に簡略化して説明すると,機器の「故障する確率」とその機器の故障に対して「防ぐ機能の失敗確率」の関数として,「最終的な事故」が起こる確率を求めます。例えば,バルブが故障して,なおかつそれを防ぐインターロックも故障した場合,事故が起きるということで,それを何年に1度事故が起こると表現しています。(IECのSILでは防ぐ機能の失敗する確率のみを定義している)。
中川 基本的に昔からあるフォールトツリーの考え方ですが,これは人により作り方が違ったりしてしまいますので,フォールトツリーをできるだけフォーマット化し,だれが使っても同じツリーが作れるようにするのがHAZChart解析を作るコンセプトでした。  

Q.安全評価のHAZChart解析に沿って,ハードリレーから安全計装PLCへ移行していくかの判断はどのように行ったのですか 
中川 ここ最近,定量的な安全評価ができるようになりつつあり,そのためのデータも世の中に出はじめて,われわれとしてもインターロックや制御ロジックをどう結びつけて設計していくかを整理する段階に入ってきていると考えています。今,使っている設計基準は何十年も設計に使用しているのですが,設計する人の考え方によってできあがるものが−大きくずれることはないにしても−少しずつ違ってきます。IECの考え方の中に定量的なものが少しずつ入ってきているので,われわれとしてはそれらを有効に活用して考えていかなければいけないと思います。これは鹿島事業所に限らず,全国の事業所が同じ考えに基づいて行っていかなければいけないと考えています。安全計装PLCを導入するか,しないかということについて今回の分解炉での導入が設計基準見直しの一つのきっかけになればと考えています。特に石油化学などの大型プラントでは,設計時に機器の使用実績も考慮するため、新しい技術の普及には多少時間がかかります。しかし,社内的には新設,既設を問わず,安全計装PLCの導入については徐々に敷居が高いものではなくなりつつあると思います。

Q.安全PLCによる安全性の向上に加えフィールド機器を含めたシステム全体の安全性向上のための取り組みを教えてください
中川 基本的には冗長化になります。この点から安全システムはコスト高になってしまいます。また,機器点数が増えますからメンテナンスの点からも運用コストは通常システムよりかかることになります。
青山 そういった意味で,IEC規格に適合した安全計装システム用のフィールドバス(C論文)に期待があります。コスト削減の意味から,また事故診断機能を持った機器の導入による安全性のさらなる向上の意味からも期待されます。

Q.その他,期待されることなどはありますか
青山 最近,安全性への関心が他のユーザさんも高くなりつつありますが,SIS導入による明確なメリット−保険料率(D座談会)の問題や法規制の問題−が見えにくいということが導入にまで踏み切れない理由としてあるようです。
欧州においてはかなり先行し法規制なども進んでおり,北米においても安全性を評価しなければいけないなどの動きがあるようです。今後,国内においても保険や規制などにおいて安全計装システムが評価として取り上げられるようになってくれば,導入の後押しになるのではないかと思います。


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