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ESCO事業におけるM&V (計測と検証)の意義とポイント


ミューテック 杉 山 利 夫
キーワード「省エネ/トレンド/環境」

1.はじめに

  昨年2月16日に京都議定書が発効し,地球温暖化防止対策もまさに「待ったなし」の状態になってきたが,わが国の省エネルギー政策の一つとしてESCO事業が推奨され,今や温暖化防止策の主役になりつつある。しかし,ESCO事業は削減量を保証する省エネ支援事業であるため,契約後の削減量が何らかの理由で達成できなかったり,ユーザとのコミュニケーション不足により想定外の設備稼働状況が発生した場合,ESCO事業者が保証のリスクを負うケースも徐々に増加しているものと思われる。
  したがって「こんなはずでは無かった」を少しでも避けるために,事前調査やM&V(計測と検証)を継続していくことがESCO事業者のリスク回避できる大きなファクタであると考えられる。

 

2.M&VそしてESCOへ

  わが国では1997年にESCO事業導入研究会がスタートし,契約標準分科会等において北米エネルギー測定・検証プロトコル(NEMVP)などが翻訳され,日本向けのM&Vプロトコルが検討されたが,本格的にESCO事業に利用されるケースは多くなかった。現在でも事前の詳細計測診断や改修後のエネルギー削減効果測定を,ユーザとの合意の上実施するケースは意外に少なく,ESCO事業者が任意に行っているケースが多いと思われる。それでもESCO事業が成立し,削減保証が可能な理由として,改修に用いられる最新の設備機器自身の性能等要素技術に依存しているといえよう。
 しかし,本来のESCOによる省エネは「まず,エネルギー診断」が必要で,われわれ人間の病気治療のスキームによく似ており(図1),現状がわからないままの改修(治療や手術)は,ESCO事業者(医師)もユーザ(患者)も危険でリスクが大きく,問題となるケースが多い。
 したがって,最初に現状のエネルギー使用状況を計測診断して問題点を抽出し(M&V),さらに設備改修後に継続したM&Vを行うことが結果的には,ユーザにとってもESCO事業者にとっても最も大きな省エネルギー効果を得られると思われる。

3.M&Vの種類と方法

 
   ESCO事業においてM &Vは規模や方法が色々と変わるが,一般的なM&Vで行う計測方法は,次の様な種類にまとめられる(表1)。
 簡易計測は,ESCO事業の可能性調査時などで事前に入手したエネルギー使用情報や設備稼働情報などの確認のためにスポット的に行い,比較的変動要素の少ない機器などの計測を短時間で行うので一般的には精度 は低い。
 詳細計測は,特定の機器や設備ごとの現状性能や稼働状況を詳細に計測するので,事前に十分な計測目的などを検討し,その特定機器や設備の影響(相乗効果)が及ぶと思われる他の機器や設備も計測するかどうかを判断する「計測マップ」をあらかじめ作成することが必要である。
 次に計測に用いる計測機器も多種類あり,簡易的な計測の場合は通常ポータブル式の計測機器を使用するが,計測ポイントが多数で長期間に及ぶ場合や遠隔地での詳細計測診断などの場合には,いわゆる遠隔計測システム等を使い,データ回収コスト(主に人件費や交通費等)節減や解析期間を短縮するケースもある。
 遠隔計測システム(図2)は,遠隔地の電力,温・湿度,パルス,計装信号(DC4〜20mA等),ディジタルI/Oなど様々な要素を取り込み,インターネット(Web)経由で好きな場所において専用のエネルギーモニタリング,ソフトを使い,解析や日報・月報作成,報告書等の作成が可能である。
 計測データはユーザもESCO事業者も専用のIDとパスワードで管理され,自由にデータ解析や報告書作成ができ,ユーザは自社のエネルギー使用状況や設備稼働状況をリアルタイムで見ることが可能である。

4.M&Vの費用/効果

 
  計測の方法によっては,コストが大きくなる場合もあるが,一般的に計測機器の設置や計測データの検証に多くの時間が費やされ,人件費の占める割合が最も大きくなる。
 ESCO受注前の詳細計測診断は,費用負担が問題になるケースがあり,ユーザから「無償診断」を要望されることもあるが,現状のエネルギー使用状況を知るために正確なエネルギーデータを多数収集し,多くの労力を使いM&Vを行うので,ユーザには削減効果を精度よく予測するための必要不可欠な経費として理解してもらい,その費用が結果的にはより多くの省エネ提案や「削減保証」を生み出すことを説明し,契約を取り交わすことになる。
 ESCO契約がスタートしてからのM&Vは,毎年ユーザと行う協議において削減効果の確認に欠かすことのできないものであるが,ESCO事業者にとっても常にM&Vを行い,PDCAを繰り返せば高い省エネ率を維持でき,計画した削減効果を実現することができる(図3)。また,導入した機器の性能監視や早期異常検出にも利用できる。
 ここで実際の電子機器工場におけるエネルギーデータを図2のようなWebを利用した遠隔計測システムで収集し,検証した例を説明する。計測データは,受電点から各変圧器の二次側や動力・電灯分電盤での電力量や外気温度,油の流量などデータで解析を行った。
 
   受電点での計測データ(図4)や他の計測ポイントからのデータを解析してみると以下のようなことが検証できた。
@デマンド発生要因分析→ 各ポイントの最大値管理
A電力量と外気条件(エンタルピー)との相関→正常な運転管理指標
B運転パターン認識による省エネに対する意識の向上
C電力量演算による,ブレーカー&幹線容量の管理→事故防止
Dこんなはずではない!!→ 何かがおかしい??
E休日出勤の実態把握
F電力料金配賦による原価管理意識の向上
G皆で実施した省エネルギー施策の効果確認→ 昼休みの消灯
 これらの検証結果から社内省エネ意識は,相当進んではいるが,建築後十数年経過した設備全般の老朽化などが指摘され,ユーザは設備全体の見直しとESCO事業導入の検討を行っている。

5.温暖化防止対策とESCO事業

 平成18年4月から改正省エネルギー法と改正地球温暖化防止対策推進法がスタートし,京都議定書の第1約束期間である2008年に向けてさらなる省エネルギー対策を求められる中でESCO事業は,今後ますます発展し続けることと考えられる。しかし,エネルギー起源によるGHG(温暖化ガス)排出量削減ではESCO事業が最も確実で効果的な手法であるが,改正省エネ法及び地球温暖化対策法では,その排出量の定期報告を義務付けてGHG排出量データや環境報告書の信頼性を確保することが求められている。これらは,京都議定書でわが国が約束した削減目標に対して,エネルギー使用量の大きな「第一種・二種エネルギー管理指定工場」のモニタリング・データなどで出来る限り精度良く収集し,削減量の予測をすることも含まれている。当然ながらESCO事業者が提案するエネルギー削減効果についても,十分なM & Vを実施した精度の高い提案とするか,あるいは「第三者によるGHG排出量の有効性審査」が必要となるのではないかと予想されてくる。
 さらに,ユーザにとっては,ESCO事業導入により得られたエネルギー(GHG)削減効果が,京都メカニズムに利用できること(排出量取引)となり,ユーザにとっては大きな利益につながることも考えられる。したがって,ESCO事業導入後の継続的なM & Vはより必要なものとなり,GHG 排出量取引や削減量保証などの「取引」のために重要な意味を持つ作業となる。

6.U2/エネルギーモニタリングシステム(図5)

 
 弊社では遠隔計測システムに使用するためのソフトウェアを開発した。このソフトウェアは省エネルギーを目的としたエネルギーデータを統合管理し,さらにBEMSとしての中央監視機能と電力のデマンド監視制御機能をパッケージ化し,多機能でコストパフォーマンスに優れている。
 このシステムはイントラネットを使用するものと,インターネットに接続し遠隔からでもモニタリング可能なWeb版の2つのシリーズを用意している(図6,図7)。
(1)特長
 ・柔軟性と拡張性を備えている
 ・電力,空調,熱源などのエネルギー全般の計測が可能
 ・LAN,無線,CANのネットワークに対応
 ・グラフ表示,帳票作成,監視図を標準で用意
 ・ユーザで設定の変更可能
 ・計測データをデータベース化し,過去のデータの閲覧,加工が容易に可能
 ・オープンシステムで計測モジュールを選ばない
(2)計測対象
 ・エネルギーデータ:電力,ガス,重油,水道などの使用量
 ・空調・冷凍設備の管理:温度,流量,圧力
 ・燃焼設備の管理:温度,流量,圧力
・空圧設備:流量,圧力
(3)主な用途
 ・省エネルギー推進
 ・定期報告書の作成,省エネルギー対策の立案,設備の運転管理
 ・建物,設備の性能評価と検証
 ・ESCO事業における計測・検証
 

  (4)主な機能
 ・最大500点の監視が可能(算値計測を含む)
 ・グラフ表示:折れ線,棒,積上げ棒(図8)
 ・帳票:日報・月報・年報(図8)
 ・現在値表示(簡易グラフ表示機能付)
 ・監視画面表示:現在値,過去値(図8)
 ・計測値の上下限警報機能
 ・計測値の演算機能
最大10点の計測データを四則演算し,演算結果を現在値表示,監視画面,グラフ,帳票に反映。
  〈例〉電力量,流量の合算,按分。エネルギー原単位,二酸化炭素(CO2)排出量の算出。原油換算,冷温水の温度差,カロリー計算など。
 ・各種履歴表示・保存:警報,機器の状態
 ・E-mailによる通信機能:警報,故障,状態変化
 ・スケジュール機能
時間,週間,月間,年間のスケジュールで照明,空調などのON/OFF制御が可能。
 ・運転時間の積算:機器の保守,点検の管理が可能
 ・デマンド監視制御
 ・保存データのCSV形式出力
保存データの中から必要なデータを選択し,1つのCSVファイルに出力可能。
  〈例〉外気温,室温と電力量の比較。部門ごとのデータ抽出,分析,検証
 ・担当者認証機能
操作,閲覧などの機能を担当者ごとに設定可能

7.おわりに

 ミューテックの詳細なM&Vと調査結果から原因を検証し,正確な判断は正確なM&Vからを基本理念にしている。ユーザに十分な理解の上,最善の解決策を提示し,そして納得していただける省エネルギーの解決策を探ることとしている。

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