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「製造プロセスにおける分析計装−その取り組みのポイント


分析産業人ネット 村 山  健
キーワードキーワード「品質管理/PAT/NIR」

 1.製造工程におけるプロセス分析の意義

 諸工業の製造工程における原材料,中間製品および製品の組成や特性などを測定する「プロセス分析」は,製造工程の運転状態監視や制御・製品品質管理・記録,大気・排ガス・排水などの環境測定・安全管理などに利用され,極めて重要である1)。
 製造工程で行われるプロセス成分の分析は,工業生産の過程で行われモノの「質」の測定である。例えば,ガソリンと灯油は同じ石油製品ではあるが,この二つは異なったモノとして使われている。ガソリンを灯油と間違えて使用すると,爆発燃焼する危険がある。実際にガソリンと灯油は規格でそれぞれの性質が定められており,ガスクロマトグラフによる成分測定による性状管理が行われている。また,家庭に供給されている都市ガスの消費量は,その流量で計測されているが,一定量のガスの発熱量については規定されており,ガスクロマトグラフなどの成分測定による熱量計で測定された発熱量で「質」を決めている。
 最終製品の「質」だけではなく,多くの測定が製造の過程で行われ,それにより,より目的に合致したモノを収率よく安全に製造することができる。半導体プロセスでは,材料やユーティリティの純度が歩留まりを決定する大きな要因であり,石油化学プロセスなどでは,付加価値の高い化合物が多く生産されるようにプロセスをコントロールすることが求められる。また,医薬品・食品製造工程においては,安全な製品つくりのために,有害となる成分の測定が求められている。
 このような製造工程における測定では,正確な測定とともに,その結果を生産に反映することが求められており,制御のためには時間をかけて構成している成分をすべて測定するのではなく,制御に適した指標をとらえることが重要である。それには,どのようなデータが製造工程と結びついているかを理解する必要がある。また長期にわたって安定した結果が得られることが機器として重要であり,使用される。このほかに経済性,安全性も考慮する必要がある2)。

 

2.プロセスへの分析計の適用視点

  製造工程へ適用されるプロセス分析計の技術と特性は,工業により大きく異なっている。化学,石油ではプロセス分析計の主要なユーザであり,ここで使用されるプロセス分析計は,連続モニタリングとフィードバック制御を組み合わせた大規模システムである。一方,この他の工業のプロセス分析計のユーザは,食品および医薬品製造業などであり,これらの工業では,分析計が分析室から製造プロセスの近くに移動することが増加している。
 分析室で使用するラボ用分析機器からプロセス分析計への移行過程(図1)は,次のようである。
(1)off-line測定
 分析室にサンプルを持ち込んで行われる。
(2)at-line測定
 測定地点の近くに専用機を設置してプロセス要員が分析機器を使用して測定する。分析機器とプロセスはオフラインで人間が介在する。
(3)on-line測定
 分析機器は自動化され,プロセスとサンプリング装置を介して結合する。
(4)in-line測定
 成分センサあるいは光検出プローブをプロセス内に設置し,in situ(あるがままの状態で)で測定する。これによりサンプリング装置が不要となると同時にサンプリング装置が負担していた問題をセンサあるいはプローブが解決しなければならない。
(5)noninvasive測定
 非接触・非浸襲で測定できる。プロセス分析としては理想的な段階となる。
 プロセス分析計は,製造プロセスに不可欠な役割を担うため製造プロセスに密接あるいは近くに設置され,頑丈で,信頼性があり,経済的で,総合的にシンプルであることが求められる。
 現在,急速に成長しているプロセス分析計の用途は,製薬と生化学・食品工業である3)。米国FDA(Department of Health and Human Services, Food and Drug Administration)は,2004年9月に「21世紀の医薬品cGMPsイニシアチブリスクベースアプローチ」を公表し,あわせて,PAT(Process Analytical Technology)のガイドラインを公表した。PATは,「原材料と中間材料および加工プロセスの主だった品質と性能を適時(加工中等)測定することで製造条件を設計,分析,管理するためのシステム」であり,医薬品の製造プロセスにおいて何が起きているか,医薬品の品質を担保する上で種々の変動要因のうちのどれがキーとなる要因であるか,その要因をどのようにコントロールすればよいかを明らかにするとともに,こうした解析結果を製造工程にフィードバックしてその改善に役立てることや,その要因をリアルタイムモニタして品質担保の指標とすることを指向している。
 PATの目指しているところは,一貫して所定の品質を実現できる“よく理解されている”製造プロセスを設計・開発することであり,そのために必要とされているものには,@設計・データ収集およびデータ分析に用いる多変量ツール,Aプロセスアナライザ,Bプロセスコントロールツール,C連続的な改善と知識管理のためのツールがあげられている4)。
 PATは,製造工程の進行中,on-line,in-line,at-lineに組み込まれたセンサ(分析計)により,品質あるいはそれに関連したプロセスパラメータを測定し,データ解析,統計処理などにより製品が望ましい品質であることの保証を,プロセスの進行と平行して実施しようとするものである。
 PATの目的に対応するプロセス分析計として,近赤外分析法(NIR)が最先端の分析技術である。また,他の分析技術としては特に,質量分析計が注目されている。石油精製,化学工業,鉄鋼業などで重用されてきたガスクロマトグラフ,赤外分析計なども対応できる。製造工程の過程で,注目する成分などをon-line,at-lineで測定することは,すでにプロセス分析計を重用してきた石油精製,化学工業,鉄鋼業などの連続プロセスで多く行われてきた。しかしながら,多品種少量生産のバッチ生産方式が多い医薬品製造工程においては,ガスクロマトグラフなどのon-line分析しやすいプロセスが少なかった。in-line測定が可能となったNIR分析計の出現で,PATに適用できるようになったと言える。
 近赤外光利用の特色は,@エネルギーの低い電磁波を用いるため,試料を損傷することがほとんどない。非破壊,無侵襲の測定ができる。A固体,粉体,フィルム,ペースト,液体,溶液,気体など種々の状態にある試料に適用できる。B赤外(IR)に比べ,NIRでは水の吸収強度がかなり弱くなるので,水溶液の分析が容易になる。
 このような特長を活かしてNIR分析法は,@非破壊分析,in-situ,in-line分析ができる。A非接触分析,あるいは光ファイバーによる分析も可能である(危険な環境にプローブを置き,遠隔操作を行うことも可能である)。on-line分析に向いている。B絶対定量分析法よりも相対定量分析法が用いられる場合が多い。C多成分の同時分析が可能である。D化学量のみならず物理量(粉体の粒度,密度,結晶化度など)の予測もできる。E化学薬品を必要としない,すなわち,環境に優しい分析である5)。
 NIR分析法は薬液やサンプルの前処理が不要な非破壊分析であり,リアルタイム連続測定が可能という,プロセスでのin-line,on-line測定に適した分析法である。

3.プロセス分析における導入例

 pH計などの電気化学分析法,可視・紫外・赤外光を用いた吸光光度分析法,カラムでの成分分離を行って計測するガスクロマトグラフィーなどがプロセス分析法に適用され実績をあげてきた。ここでは,最近注目を浴びているプロセス分析計を中心に紹介する。
 




(1)NIR分析計
 NIR分析計(写真 1,図2)は,固体,スラリ,固液混合体などの性状のサンプルにも,in-line測定ができるなどの利点があり,急速に発展している。実際にNIR分析法で濃度未知サンプルの定量を行うためには,アプリケーションごとに測定対象成分の検量線をあらかじめ作成しておく必要がある6)。
NIR分析計の品質管理への適用に関しては,医薬品製造プロセス7, 8),石油精製プロセス9),化学プロセス10)があり,製品の特徴と実施例11, 12, 13, 14, 15)が明らかにされている。
(2)TOC計
 製薬工業で使用される製薬用水については,2006年4月に交付された第十五改正日本薬局方(JP)では,超ろ過法にて製造された注射用水(WFI)の全有機炭素(TOC)値は0.5mg/l以下であることが規定された。米国薬局方(USP),欧州薬局方(EP)では,精製水(PW,蒸留,イオン交換,逆浸透,ろ過などの方法で製造された水)のTOC値は0.5mg/l以下と規定されており,その測定には手分析,連続分析いずれの方法も可能としている16)。測定方法は各国の薬局方の規格を調和させる動きもあり,今後はTOCのon-line連続測定の需要が増加すると予想される。
 水中には種々の有機化合物が存在しており,TOCはこれらの有機化合物に含まれる炭素量をいう。TOCの測定法は,水中の有機化合物と無機化合物を酸化分解して生じたCO2を測定して全炭素(TC)とし,無機化合物から生成するCO2を測定した無機炭素(IC)を差し引いて全有機炭素(TOC)としている。on-line TOC計の測定原理は様々の方式が開発されている。紫外線(UV)酸化−導電率測定方式(メトラー・トレド(Thornton),堀場アドバンンスドテクノなど)は,UV照射により生じたCO2を導電率変化として捉える方法である(図3)。湿式UV酸化ガス透過膜式導電率測定方式(セントラル科学(GEionics-Sievers Instruments))は,サンプル水に過硫酸UV照射を同時に行い生じたCO2ガスを膜透過させて導電率変化として捉える方法である(図4)。680℃燃焼触媒酸化非分散赤外吸光測定方式(島津など)は,サンプルを空気などのキャリアガスで680℃以上に加熱した白金等の触媒に導入し,有機固形物も溶存有機物も酸化され生じたCO2を非分散赤外分光法で測定する。
 TOC計は,半導体製造分野では,超純水の管理指標としてμg/lレベルのTOCがon-line測定されている。また,上水分野では,有機物の測定方法が2005年4月より上水試験方法の改正で過マンガン酸カリウム消費量からTOCに変更された17)。水道水の水質基準としてのTOCは5mg/l以下であることとなっている。液晶製造プロセス,原子力発電プラント,食品・飲料工業などで,μg/l〜mg/lの広い濃度範囲のon-line TOC計が必要となっている。
 

(3)その他の分析計
 従来から重用されてきた赤外線ガス分析計,吸光光度計メータ,熱伝導度式ガス分析計,酸素分析計,水素炎イオン化検出式炭化水素分析計,レーザガス分析計をモジュール化し,成分測定に必要な4台までのモジュールとセンターコントロールユニットを組み合わせた統合型マルチ分析システムが出てきており,総合イーサネットポートを介して,PCネットワークまたはより上位の制御システムに組み込むことができる18)。
 溶液のin-line測定の例として溶存酸素(DO)計を紹介する。DOの測定法は,隔膜形ガルバニ電池式あるいは隔膜形ポーラログラフ電極式が用いられることが多いが,蛍光式DO計(東亜ディーケーケー(Hach))が出現した(図5,写真2)。酸素に感応する発光物質を塗布した面に青色LEDを照射すると,DO濃度に比例した赤色を発色することを利用する19)。前者隔膜形DO計は,隔膜を透過する酸素を消費して検出するのに比べ,酸素は発光物質に可逆的に着脱するため,センサは長寿命となる。







4.今後のプロセス分析の課題

 プロセス分析計は,現場の過酷な環境に耐えて,信頼性高く,丈夫で長持ち,維持管理が簡単,経済性に見合ったコストが求められており,継続的課題である。
 また,NIR分析法のように,特定の成分を分離分析しない分析法では,検量線を,多数のサンプルにより,既知分析機器の測定値とあわせ作成する必要があり,時間を要する作業となる。しかしながら,産地が違うなどロットが異なるサンプルを測定するにあたっては,苦労して作成した検量線が有効でなくなることがあり,課題となっている。

〈参考文献〉

1)川村貞夫,石川洋次郎:工業計測と制御の基礎,工業技術社(2003)
2)黒森健一ほか:産業応用計測技術,コロナ社(2003)
3)“New demands for process analytical instruments”,Instrument Business Outlook April 30,2004
4)米持悦生:医薬品製造プロセスにおける近赤外分析計の活用と評価,『計装』,Vol.48(No.1),58〜61(2005)
5)大原寿樹,村田明弘:近赤外分光分析のプロセスモニタリングへの応用(1),THE CHEMICAL TIMES 2005 No.4,2〜5
6)松野 玄:近赤外分光分析のプロセスモニタリングへの応用(2),THE CHEMICAL TIMES 2006 No.2; 10〜14
7)横山 誠:医薬品製造プロセスにおける近赤外分析計のニーズと評価,『計装』,Vol.48(No.1),62〜65(2005)
8)大崎一男:FT-NIR分析計の医薬品製造プロセスへの応用,『計装』,Vol.48(No.1),75〜78(2005)
9)出口博光:石油精製プロセスにおける近赤外分析計の活用と評価,『計装』,Vol.48(No.1),66〜70(2005)
10)村田明弘:オンラインFT-NIRの紹介と化学プロセスへの応用例,『計装』,Vol.48(No.1),93〜95(2005)
11)達林顕一:オンライン近赤外分析計の基本的考え方と実施例,『計装』,Vol.48(No.1),71〜74(2005)
12)東山尚光,落合周吉:近赤外レーザを用いたラマン分光装置によるプロセス分析,『計装』,Vol.48(No.1),79〜82(2005)
13)山元幹夫:オンライン近赤外分析計による効率的製品管理およびコストダウン,『計装』,Vol.48(No.1),83〜85(2005)
14)笹倉大督:FT-NIR分析計のプロセスへの適用および要件,『計装』,Vol.48(No.1),86〜89(2005)
15)荒川 智:プロセス近赤外分析計の最適な活用法,『計装』,Vol.48(No.1),90〜92(2005)
16)堀場アドバンテストテクノ・ニュース:低濃度の全有機炭素を高精度に測定するTOC計「HT-100」を発売,2006.5.11
17)(社)日本水道協会:上水試験方法2001年版−追補版(2006)
18)AO2000シリーズ モジュール構成の連続式ガス分析計,ABB潟Jタログ(2004)
19)Data sheet: HACH LDO Dissolved Oxygen Probe,Lit.No. 2455 Hach Company(2005)
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