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計装Cube19
「Cubeインタビュー:
シーケンサーに計装を取り込む
――工業炉の計装化に取り組む宮本工業所――


話し手:(株)宮本工業所 工業炉技術部 主幹
向井 昌
インタビュアー: 月刊「計装」編集長 稲橋 一彦

―――工業炉へのPLC(シーケンサ)の適用と,PLC計装の適用とは別物だということですが,まずはその差を知っておきたい。


向井 昌さん

向井 シーケンサと計装の違いというのは,簡単に言うと,ディジタル信号を扱うか,アナログ信号を扱うかの違いなのです。従来PLCは,主にリレー盤をソフトロジックに置き換える事が目的であった為,ON,OFF,タイマー機能を使用すれば,ロジックを構築する事が可能でしたが,アナログ信号の扱いがハード的にもエンジニア的にも不得意であったといえます。
近年,PLCの機能向上によりアナログを扱える様になってきた。いわゆる計装制御が可能なPLCの登場です。しかしこのPLC計装というのはシーケンスを主にやってきた人が扱うにはかなりの壁がある。例えばタイマーというのはカウントしているだけですが,同じ変化する数値でも温度,圧力などを扱おうとした途端に,慣れないエンジニアはどう処理すべきかがわからない。そこで壁ができてしまいます。
―――それはどんな壁なのでしょうか。
向井 根本的に信号の取り扱い方が違います。結果,処理言語,方法の違い,文化の違いといってもいいと思います。シーケンサとPLC計装は,ハードは同一の物ですが,文化が違うのです。それはシーケンス中心のエンジニアがPLC計装を取り扱う上で,越えなければいけない最初のハードルなのです。
―――なるほど,文化が違う。文化の違いを乗り越えるには?
向井 その足がかりは,反語のように聞こえるかもしれませんが,シーケンサがアナログを扱えるようになったというところにあります。アナログ=実数演算が扱えるようになった,つまりシーケンサが実数を扱えるようになったがゆえに,計装の分野の処理が出来るようになった。
計装というのはかなり感覚的な世界なのです。しかし,それだけ理解しても計装ははじまらない。経験することが必要です。
今,社内外で,従来のシーケンス処理をメインにしてきたエンジニアの人たちに対してPLC計装でシステムを組んでもらっています。どの様に理解して戴いたかといいますと,まずは設備を理解してもらっています,その設備の中で温度を測っているとしましょう,そうしますといきなり***℃と言った数字でPLCに入力される訳ではないので,変換器で1-5VDCや4-20mADCといった統一信号にする必要があると言うことがわかります,温度というのは0〜100%じゃないから,レンジ付けしなければいけない,警報も出さなければいけない,そういうことがでてきます。
また,流量を測りましょうというと流量というのはセンサからの生データに対し温圧補正かけないと使いものになりません。演算が必要だ,じゃあその演算をさせるための手段としてアナログ処理が簡単に出来るPLC計装が必要になってくる。
つまりPLC計装が最初にあるのではなく,まず設備を理解してもらい。設備を動かすために何を使わなければいけないかを知ってもらう。今は簡単にアナログ信号を処理できるPLC計装がありますけど,ラダーで補正演算なんかやっていたら気が狂いますよ。ほんの数年前までは,本気でそれでやっていましたけれど。
―――今お話の設備というのは,例えば工業炉で言えば,工業炉本体だけでなく設置する温度計とかバルブだとかを含めた設備ということですか。
向井 設備にもいくつか段階があって,それに応じて,計装という世界でも層が出てくると思います。設備の目的を果たす為にどの様な制御をすべきか,なぜその制御が必要なのかを考える計装屋さん。その制御の目的を達成させるためにはどの様な機器が必要なのか,どのようなバルブを,流量は,口径は,材質は,測定方法はオリフィス,それとも電磁流量計といった目的に合ったセンサ,機器を選ぶシステムを考える計装屋さん。
そうことを考えられる計装屋さんというのと,ソフトを作る計装屋さんは職種としては別物です。本来は全てが出来る計装屋さんがいるとよいのですが。
―――ソフトというのは制御システム構築という意味?
向井 そうです。そして制御システム構築にも層があって,P&IDをかけるという人とそれを見てソフトを組めるという段階がどうしてもある。一言で計装といってもあまりにも範囲が広すぎるので,皆わけがわからなくなってしまいます。
PLC計装という視点では,ソフトを作るひとが対象でしょうね。ただそのソフトを作る人が機器の選定もできてP&IDもかければ最高ですけれど,残念ながらそこまでいくには10年はかかりますよね。
―――ただし,PLC計装のソフトを組むにあたって温度とか,流量だとか周囲からの入力,出力を知った上でないと,ソフトが組めない。
向井 組めないとは言わないですけれど,わけもわからずにいるより,知っていた方が最終的によりいい物になりますよね。計装的に言うと,例えば,補償導線,熱電対がK熱電対だ,R熱電対だということもありますけど,それは置いておいて,0〜1000℃の入力を処理するためにはどうしなければいけないか,そういうことから始めていって,じゃあ温度をコントロールするためにはどうすればいいのか,と進む。
幸いわれわれがやっている炉の世界は,ある程度,特化されていますので,何回か現場を経験すれば,意味がわかる。何のためにこの測定,制御をやらなければいけないのかということをわかってもらって,それから徐々にソフトはこう組まなければいけないということで理解してもらっています。
―――それは社内で。
向井 社内,社外問わず。
―――社外というのはお客さんという意味ですか。
向井 いえ,お客さんではなく,当社で制御盤からソフトまで組んでいるわけではないので,県内にある計装サービス会社であるとか,普通の電気屋さんであるとか,ソフトを組める盤屋さんとか協力会社で理解してもらって進めています。
これらのエンジニアの人たちはもともとON,OFF,タイマーといったシーケンス中心の設備をメインとしていたわけですが,それが今,アナログ処理が主の設備が変わったわけで,まず,設備ありきです。この設備を立上げる為の制御を考えるにあたって,計装的な考え方をしていかなければいけないということですね。
―――なるほど。工業炉の中に計装が入ると,その工業炉がどうなるのか,というところから始めた。それはエンドユーザに対しても?
向井 工業炉にもいろいろな種類がありますが,バーナーを使って物を温めると言うことについては,30年前から基本的のは変わっていません。ですからお客様へアピールするためには特色を出さなければならない。当社は自動制御を全面的に押し出して,操作が簡単であること,燃費がいいことを訴えています。何年たっても計器のメンテナンスさえすれば,性能的にはそんなに落ちませんと。
どこの炉もそうなのですけど,長く使用すると必ず性能が落ちてきます。そして落ちたままでずっと使用していますので,電力原単位,燃料原単位がどんどん悪くなっている中小規模の炉がいっぱいあるのです。そのようなユーザの炉をきちんと計装化して,メンテナンスすれば燃費が3%ぐらいは上がりますよと言っています。言い過ぎかもしれませんが,当たり前の事をきちんと制御する,これで本当に3%は改善できます。
当社が納入してきました炉についても同じ事がいえますので,まずは当社が炉を納めたユーザに対し計装化によるメリットを説明しています。
―――そういうユーザではチューニングなどは難しいでしょう。御社のようなセットメーカがやれば良いけれど,手が回らないでしょう。その辺はどう考えていますか。
向井 そこで当社としては,PLC計装が有効だと考えているのです。当社の場合,見た目や操作系はなるべく簡単にしていますが,中で動いている制御ソフトは非常にフレキシブルに飛んだ形としています。ユーザにおいて難しい調整を行う必要がなく,パラメータを変更する事で性能を維持する事が出来る,言い換えれば多少の設備不調をパラメータのセッテングでごまかす事が出来ると言うことでしょうか?,それを実現する為には現段階ではPLC計装が最適だと判断している訳です。
また,当社としてはPLC計装へ移行して貰う手段として,ユーザの既設炉に対して設備診断をしようじゃないか,診断をしてこれは小手先じゃだめですよと。炉を更新するほどではないが,計装を強化する事でかなりの効果が期待できますよと,そういう話をするためにはある程度数字化された診断をしなければならないということを考えています。当社で構築した炉診断用のデータロガーを持ち込んで,圧力,流量を取り込んで,温度や流量がこうなっています,だからこういうコントロールを追加すれば,センサや自動操作を追加すれば,もっと良くなりますという話をできるように,今そのように動いています。
計装制御が改善されれば,設備の運転効率も上がり,エネルギー消費量も下がる。工業炉に限らず,現場完結型で十分な小さな設備それこそたくさんあります。私個人としては,このような設備が計装化されていくことで地球温暖化の原因とされるCO2の排出量が低減されることを願っています。

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