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計装Cube18 工場訪問
「日本油脂に聞く
「いつ」「どこで」「だれが」「どのように」作業をしたか」
―――1時間でトレース完了―――

日本油脂(株) 川崎事業所 大師工場
川崎事業所所長 佐々木義浩
製造部 森嶋 徹

月刊「計装」編集部:野呂淳矢

 食品製造でもっとも要求されるのが安全性。一方,バッチを中心とした食品製造プロセスは人による作業が必要不可欠である。2004年6月に竣工した大師工場はマーガリンやショートニングなどの食用加工油脂を製造する工場。ミス防止などの作業支援,トレーサビリティの確立などを目指しバーコード,タッチ付きパネコンなどを活用した生産管理システムを構築した。

■「食の安全と安心」を目指したものづくり

佐々木 大正6年操業の王子工場から大師工場に食用加工油脂ラインを移転するにあたり,「食の安全と安心」を第一に,そして新しい生産管理システムの導入による生産性と品質の向上を目指しました。「食の安全と安心」への対応はゾーニング(HACCP対応),およびトレーサビリティシステムの確立です。ゾーニングは事務所,食品研究所などの製造以外の「一般エリア」,配合乳化室,練り機室,包装工程などの製造の中心となる「準清浄エリア」,最も高い清浄度が求められる充填工程の「清浄エリア」の3つに区分けされています。そして,一般エリアでは白色のシューズ,準清浄エリアでは緑色のシューズ,清浄エリアでは青色のシューズの着用を義務付けるなど,ゾーニングに対する意識を高めるとともに日常定着化する工夫などもなされています。
 一方,小分け秤量作業や原料投入作業においてバーコードリーダを活用して,ミスの防止を図るとともに,それらのデータはすべてデータベースに蓄積する仕組みとなっており,「いつ」「どこで」「だれが」「どのように」作業をしたかを追跡できるトレーサビリティシステムを構築しました。ペーパの指示書をもとに作業を行っていた頃はトラブルがあった場合,その原因を追跡するのにかなりの時間がかかっていましたが,現在では1時間もあればトレースできるようになりました。

■作業工程と導入システム−トレーサビリティの実現

森嶋 食用加工油脂製造プロセスは,まず原料油を精製,硬化,脱臭して食用加工油脂製品のベースとなる「脱臭油」を製造する一次工程があります。この一次工程は連続プロセスであり完全自動化されています。
 次に,一次工程で製造された脱臭油に製造する製品に合わせてさまざまな原料を配合し,乳化,そして殺菌,冷却・練り工程を経て製品ができあがります。バッチプロセスである二次工程は配合での原料投入はオペレータが行い,乳化,冷却・練り工程での温度制御等はコントローラと,手作業と自動制御が混在しています。この2次工程にDCS機能とMES機能を持つ日立那珂エレクトロニクス鰍フバッチ統合生産システム「HIBIS」を採用しています。
 実際の作業の流れは,工場ホストから当日入荷する原料一覧が中央管理室にあるHIBISサーバ(以下サーバ)にダウンロードされ,それにもとづきバーコートを発行し,オペレータが入荷した原料に貼付,入庫します。次に,サーバが生産量と処方マスタの配合表から算出した原料小分け指示書に従いオペレータが秤量作業を行います。発行された小分けバーコードラベルを小分け容器に貼り付けた後,小分けバーコードラベルと受入バーコードラベルを読み取り秤量作業を行います。秤量の指図値と実績値が一致しなければアラームが発生されるとともに,不足,超過などの内容をが秤量器の画面上に表示されます。実績値が指図値と一致するまで,OKがでないようになっており,秤量ミスを防止することができます。また,実際に行われた秤量作業のデータはサーバに収集されます。これで,二次加工の準備が整います。
 二次加工の最初の工程は脱臭油に製品の目的に合うように小分けされた原料を配合し,水相部タンクから発酵乳などが自動制御で注入されます。原料の投入作業はオペレータによる手作業で,サーバから現場にあるタッチ付きパネルコンピュータ(フィールドオペコン/以下,オペコン)に送られた指図に従い行います。オペコンから送られた小分け原料に関するデータは,オペレータが使用する無線バーコードリーダで小分けされた原料のバーコードと照合され,間違いがなければ配合タンクに投入します。そして,完了した作業データはオペコン経由でサーバへと収集されます。この工程を経て,次に殺菌,そして練り機によって連続的に急冷しながら掻きとり,マーガリンが製造されます。配合,殺菌,冷却・練りの工程はDCS(マルチコントローラ)により自動制御されます。
 できあがった製品は充填,包装され,パレタイザー(ロボット)により自動でパレットに積まれ,立体倉庫に入庫します。立体倉庫は温度設定が異なる4つのエリアに区分けされ,各製品に適した倉庫が選択されますが,ここでもバーコードによりオペレータがチェックします。 
 以上のすべての工程は中央コントロール室のオペレータが管理・監視し,全体を把握しています。オペレータやコントローラへの指図はすべてサーバから出され,行った作業・運転のデータはすべて逆にサーバに吸い上げられ,使用された副原料材料名,ロット番号,製造条件,製造実績などのデータは必要に応じてトレースすることができるようになっています。

■システム導入までの経緯−現場の声を生して

森嶋 新工場への導入する生産管理システムとして,パソコン+PLCも検討しましたが,信頼性や使い勝手のよさからDCSを選択することになりました。そして,新工場で目指していた生産計画に基づいた指図発行から,処方管理,秤量,運転制御,実績管理までを一元管理するというコンセプトにもっとも近い生産管理システムを実現できるとの判断から日立那珂エレクトロニクス叶サのHIBISが選定されました。とはいえ,ベンダが提供するパッケージソフトをそのまま使用することでは当社が本当に希望するシステムを構築することができなかったため,独自にカスタマイズを行いました。その一例としては,オペコンやバーコードリーダのインターフェースで,現場オペレータの声を聞きながらより使い勝手がよくなるよう改良しました。また,製造指図書もベンダ標準仕様では十分とはいえなかったため,従来より当社がペーパで使用していたものにカスタマイズしました。食品製造では製品品目が非常に短いサイクルで変わります。例えば,新製品が出て今までの製品と一部だけ原料が変わる場合などは,その部分だけを迅速,容易に変更できように工夫しています。やはり,現場のニーズに耳を傾けることが新しいシステム導入を成功されるためにもっとも重要なことだと思います。
佐々木 新しいシステムの導入は,オペレータの作業が従来とは勝手が違うことになり,抵抗を感じてしまう場合が多々あると聞きます。しかし,当工場では予想以上にスムーズに新システムが定着しました。その理由として当工場が比較的若いオペレータが多いことが上げられ,バーコードによるミス防止チェックはオペレータの不安を解消するという効果もあるかと思います。

■システム導入の効果と今後の課題

佐々木 作業・運転データはデータベース化されており,製造部門のみならず,品質管理など他部門の社員もいつでも見ることができ,データを共有化することができるようになりました。そして,自動制御が行える部分は極力自動制御を実現したことで,オペレータの熟練度による品質のバラツキが抑えられ,均質で高精度な品質を実現することができました。また,バーコードリーダなどを使用することで,ミスの防止およびデータの一元管理,トレーサイビリティの確立により安全と安心を確立することができました。
森嶋 当生産管理システムの導入により複数の系列の製造進捗状況をバッチごとに把握できるようになり,効率的なコントロールが可能になりました。一方,今後の課題としては,現在のオペコンの画面には直接,オペレータの作業工程にかかわるガイダンスなどが表示されていますが,工程全体は画面が小さいということもあり表示できません。工程全体が表示できるようになれば,作業前にあらかじめ段取りを行うことができるようになり,さらに現場の作業の効率化が図れるかと思います。一方,バーコードリーダについては防滴・防塵の観点から現在の機種を選定していますが,今後さらにハードの改良が進み,小型化・軽量化が実現されることを希望します。また,今後さらに製品に関するデータ量が増えていく点から,また現場での読み取りの容易さからも現在のバーコードから2次元コードを利用することも考えております。これらも現場の声を聞きながら改良を図っていきたいと思います。


秤量器:
小分け容器に貼られたバーコードを読み,小分け指図に従い秤量作業を行う。
作業データはサーバに蓄積され,必要に応じてトレースすることができる。


フィールドオペコン:
オペレータへの作業指図をだすインターフェース。
オペコンは無線バーコードリーダとも連動しており,
オペレータの作業実績はオペコンに収集し,さらにサーバに吸い上げられる。


中央管理室:
全製造工程の管理,監視を行う中央管理室。HIBISサーバはこの中央管理室にある。


立体倉庫:
4つの温度帯を常時設定し,外気温に影響されることなく,
それぞれの製品に最適な温度で出荷まで熟成・保管される。
入庫・出庫もまたバーコードにより自動管理されている。
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