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食品・医薬品工場における品質保証のための画像検査の活用

コグネックス 川内丸 隆弘
2002年冬

キーワード「トレーサビリティ/外観検査/パターンマッチング」

1 はじめに

  日本の製造業は今日まで,中国をはじめとする海外の桁外れに安価な労働力に対し,日々積み重ねたコストダウンアイデアや自動化を柱とした極限までの合理化で対抗してきた。だがそれゆえに,これ以上大幅に製造コストを下げる余地はあまり残されていない。
 一方,万一不良品が流出した場合のリカバリーコストとなると,トレーサビリティが十分に機能していないばかりに,ほんの少し流出した不良品のために全ロット回収,あるいは全品回収となり,億単位の損失はもちろんのこと,それにより長年培ってきた企業ブランドイメージの失墜から生じる損失は計り知れない。ましてや,問題が全社に波及することを恐れ,違法と知りつつ隠蔽行為という誤った対応に走った末,結局内部告発などでより大きなスキャンダルとして発覚し,企業生命を絶たれた例も記憶に新しい。
 品質管理手法においては,従来から欠陥の根本原因の解明と流出防止が二つの大きな柱として励行されてきているが,極限までのコストダウンと昨今の不況にともなう大幅な人員削減の影響で,作業員一人あたりの負担が増え,これまでには考えられなかったような人為的ミスやポカによる不良品の流出が増加傾向にあることが否定できない。万一流出してしまった場合でも回収(リコール)などの後処理が最小限の損失で済むような対策をリーズナブルな投資額で行なっておくことは,品質保証上重要になってきたばかりか,特にブランドイメージが命であるコンシューマーインダストリーにおいては企業の危機管理,すなわちマネジメントの大命題となってきているのである。
 ところがこの頭の痛い問題も,画像処理装置を導入することで回避できる部分がある。画像処理装置を使うと,検査対象物と識別コードが記録されているラベルを同一画面で取り込み,タイムスタンプを打って全品インサイトのネットワーク機能を利用して外部のストレージ用パソコンの記憶媒体に保存しておき,市場で発見された不良品に関し流通している商品の保存データを提示することができるので,コンシューマあるいは監督官庁に対して全品回収の必要のない旨の説得力ある説明が可能となる。また,最悪のケース,企業に対して不良品流出による損害賠償請求や株主代表訴訟が起こされた場合においても,その時代に最も有効と考えられる対策を打った上での事故であれば,企業の賠償責任なども軽減される方向となろう。 
 厚生労働省や農林水産省も参加した食品表示問題に関する消費者問題懇談会でも,IT技術を利用した生産管理や帳簿・伝票類の一定期間の年度ごと保存義務付けの要望も出ており,農林水産省では既にトレーサビリティ・ガイドライン策定事業を来年度の予算案に計上する。こういった背景から,これまで単に検査・位置決め・計測・認証などに大きく分類されていた画像処理装置に,FDAや国内監督省庁の要求を満たす高いセキュリティーレベルでの生産管理記録や捏造・改ざん防止という新しい役割が期待される。 
 当社は従来から,弊社製品を組み込んで画像処理のシステムアップノウハウという付加価値をつけて再販するシステムインテグレータに多くの弊社製品を供給してきた。そして,2000年には半導体検査などでの高い技術を一般産業向けに活かすべく,小さなカメラのボディーに画像処理装置プロセッサを内蔵した「In-Sight(インサイト)」を世に送り出した。In-Sightは,人間の能力により近づいた目と判断力を持ち,大容量の画像データを通信することができるインテリジェントカメラであり,少ない投資で工場のいたるところに配置し,一括管理やモデル変更を離れ場所にあるPCからネットワークにより容易に行えるようになった。
 今後はトレーサビリティ管理・リコール対策・通信・ネットワーク制御・セキュリティ管理・監視といった,画像処理技術とは違った分野の付加価値を加えてシステムを構築する,エンジニアリングやビジネスコンサルティングなど上流側のシステムインテグレータへの供給を広げ,In-Sightの持つ高い画像処理の基本性能とネットワーク適応ポテンシャルを広く社会に役立ててもらえることを願っている。

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