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計装Cube16
「Cubeインタビュー:
トヨタ自動車に聞く
−オープン化による新生産情報システム− 独自性を生かす柔らかい標準を使う

話し手:トヨタ自動車 高野 正利
インタビュアー 月刊「計装」編集長 稲橋 一彦

―ユーティリティプラントの将来像として「プラント状態のより高度な自動認識とそれに基づく最適制御」,「プラント状態の視解化・情報共有化によるPDCAが回る仕組み」,「人が中心となる機械に使われないヒューマンインタフェースの実現」ということをおっしゃっていますが(月刊「計装」2005年1月号),ネットワーク,標準に絡ませてまず概論的にお話しいただけますか。

●フィールドネットワークの柔らかい標準

高野 フィールドネットワークということに関しては2つの視点があると思います。第一として,ユーティリティは製造現場に対するインフラとして,安定に供給するということが大事です。プラントを止めないようにするために,いろいろなデータを測って安定供給のための仕組み作りをしています。 第二に,各ベンダの得意な分野のフィールド機器をうまく繋ぐということ,標準ということに関わってきますけど,その2つの視点があると思います。
次の,プラント状態の見える化・情報の共有化の例としては,エネルギーの使われ方を「見える化」して情報提供するという仕組みがあります。
それをどうチェックして,どうアクションするかというマネジメントの仕事に対して類似ラインがどうなっているか(ベンチマーク)も提示できます。
最後のHMIに関して,こういったユーティリティのプラントは自動制御・スケジュール運転が進んでいますので,プラント監視としてのHMIの現状を説明します.今の時点ではコンピュータ側が提供するインタフェースでオペレータは対応するしかないという状況です。

―現在,フィールドネットワークとして,混在する各種のフィールドバスを統合,解消する手段としてEDDL(Electronic Device Description Language)に期待を寄せられているようですが。

高野 プラント制御システムを使うユーザとしては,インテリジェントデバイスとフィールドのインテリジェントのネットワークを使って何をやりたいかというと,プラントの信頼性を上げたいということです。制御の信頼性,そしてアセットマネージメントの視点からはメンテナンスの精度を上げていくこと。また,より進んでいく分散制御の信頼性を上げ,なおかつそれらの情報連携が取れていないと,プラントワイドでの最適制御はできません.これらはマルチベンダで構成する必要があります。まず,繋げられるということが第一だと思っています。
その上で,FDTEDDLということがあります。それらは,複数のフィールドバスが扱っているデバイスをもう一つ上位の概念から見た時に,同じように見えるというツールで,要はセンサの描き方とか,記述をあるメタ言語的なものが仲介しています。FDTやEDDLの詳細はSICE学会誌(2005年6月号)で取り上げられています。これを1対1でコンバージョンシステムを作ったならばユーザは大変なことになってしまいます。

●情報共有化の柔らかい標準

―フィールドの上の話として,化学分野ではMESの問題にあたるかと思いますが,そのレベルでの情報の共有化としてXMLが話題となっています。ユーティリティプラントの中で情報の共有化,何が可能となってきたとお考えでしょうか。

高野 トヨタ自動車は愛知県以内に12の生産工場がありますが,それらのユーティリティプラントのスーパーバイザリーシステムを担当していますので,その立場から情報共有という視点でお話したいと思います。
 ユーティリティのスーパーバイザリーシステムとしては,エネルギーの使われ方の情報共有というのはいろいろなレベルで必要になります。第1に,スティームプラントの運転・制御というレベルでの情報共有があります。
そのレベルからもうちょっとレベルが上がるとマネジメントレベルで,「昨日は自分のところはどのくらいエネルギーを使った」といった,マネジメントに対する情報が要ります。さらにその上のレベルでは,環境報告書などへの情報提供なども重要となってきます.制御からマネジメントまでの各レベルでの情報共有が必要となります。

―その各レベルでの縦横をXMLにより「見える化」する?

高野 「見える化」というのは,今の問題点を顕在化する,もしくはベンチマークを提供する手段です。12工場の類似ラインのインターナルベンチマークを提供するというのは非常に大事なことになります。それから,どうアクションするかというマネジメントにつながっていきます。

―XMLに期待される点は?

高野 XMLというのは非常に緩やかなフォーマットを提供する標準だと私は考えています。そういう意味ではガチと決まっているわけではないのです。例えばある団体ごとにあるフォーマットを決めておく。その代わりそれを公開して,例えば受変電システムのXMLデータとコジェネシステムのXMLデータの間を取り持つ,コンバートする,そういったことがやれるような仕組みが可能と考えます。
完全にどこかの標準に合わせてガチガチに作ることをしなくても,うまく話ができるという仕組みなものですから,期待できると考えています。例えば,スタンダードセントリッックで,それが決まらないと何もできないということではないので,それぞれが作りながらもうまく柔らかく繋ぐという仕組みづくりができますから,ユーザとしても動きやすい。 これは現場の姿を「見える化」する,もしくは今までだとあるプラント単位にベンダが違っていて,その間を繋げなかったのが,より自由に,よりやりやすくなる,よりプラントワイドに可能になると思います。そういった部分にXMLが役立つ可能性を持っていると思います。

●XMLはシステムを柔らかくする

―システムの継承性と先進性という,一見,背反する期待をユーザさんは持っていらっしゃる。XMLはこれを超えることができるとお考えのようですが?

高野 そうですね。計装のシステムベンダの方々が大事にされているものの一つがシステムの継承性だと思います。10何年か前のシステムを継承しようと考えているわけで,これはユーザにとっても非常にありがたいことなのですけど,独自のフォーマットに固執しすぎるとリビジョンアップでは先進性を犠牲にする可能性があります。
さらに,今の技術進歩の中で,ユーザとしても15年のスパンでしかプラントシステムをリビジョンアップしないとなると陳腐化の方が先に進んでしまう。そうするとベースの部分と,そうではないコストがあまりかからない部分とを分け,必要な部分のみもう少し早いスパンでリビジョンアップや改善をしていく,ということが必要だと思います。
例えば,HMI(参考文献:1[装置の情報化・見える化を加速する新HMIソリューション]/2[月刊「計装」2005年3月号特集 工場(PA・FA)における装置の情報化と計装−PLC/HMI活用の視点から−])や,制御のシステムについても15年のスパンで考えるとコストが一桁下がっていますし,スペースも二桁ぐらい下がっています。逆に信頼性は上がっています。そういう意味では部分的にいろいろと更新して,新しいことに取り組める状況にはなっていると思います。そういった機器については,やはり陳腐化しないように新しい技術を取り込んでいきたいと考えています。

―部分的な更新をした時には,前からあるデバイスとのマッチングを考えたものであれば,陳腐化もしないし,新しいものも受け入れられる。制御のレベルでいうと具体的にコントローラでも良いですけど,その辺は満足されていますか。

高野 我々もそれをトライしていますけど,まだまだやることは沢山あると思います。今までのシステムは階層型のシステムですから,どこか変えようと思ったら全部変えなければなりませんでした。これでは新しいことはできない。今後のシステムではネットワーク型の仕組みが非常に重要になってきます。そうなればネットワークのあるコンポーネントだけを変えてもいいという部分的な更新,リビジョンアップや追加などができるような仕組みになってこないといけない。そうしますと,その間を繋ぐ技術がものすごく重要になってきます。
その期待に応えるもののひとつがXMLだと思います。今はMESの部分でのXMLの議論ですけど,本来はコントローラレベルでの繋ぐためのXMLだと思っています。
コントローラレベルでXMLを介して接続できるようになってくれば, A社とB社のシステムがつながっている状態でも,例えばA社のシステムを入れ替えようという時にサッと入れ替えられることになってくるでしょう。

―そうしますとコントローラレベルでもセキュリティついて考えていかなければならない?

高野 プラントシステムにとってもサイバーセキュリティというのは非常に重要であり,しっかり考えておかないといけないと思います。
情報系の分野ではセキュリティが重要な問題となっていますし。OSやネットワークベンダの方々はいろいろ考えていて,もう少し先には期待できるものが出てきそうですけど,今の時点ではユーザは一生懸命がんばってパッチを当てるとか脅威に対する対応をしっかりやるしかないのが現状なのです。こういった状況がプラントシステムにも必ず発生してくる。  
今はユーザもベンダもそうですが,インターネットに接続されていないから大丈夫と考えていますが,そうではないですし,そうでない時代がやってきている。トヨタ自動車のユーティリティプラントシステムもイントラネットを使っていますので,そこについては非常に意識しています。セキュリティの脅威でシステムが崩壊する可能性さえあり,そういう意味で情報系のシステム以上にサイバーセキュリティに配慮しないといけないと考えています。
制御LANも結局はIPネットワークですから,情報系のベース技術を使っているのです。ベースの技術は一緒ですので,サイバーセキュリティをよく考えておく必要があるということです。
情報共有のメリットを得るための仕組みづくりをプラントのフィールドレベルまでしていくと,サイバーセキュリティをより配慮しないといけない。

(了)

〈関連文献〉

関連情報リンク

サイバーセキュリティに関する参考文献

  • Masatoshi Takano,End-user Requirements on Industrial Networks,SICE(The Society of Instrument and Control Engineers)Annual Conference 2004
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