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プラントシミュレータによる運転改善への取り組みと応用

オメガシミュレーション 横山 克己/林 田  豊
2005年9月

キーワード「非定常/小人化/シミュレーション」

1.はじめに

国内の化学,石油化学,石油精製に代表されるプロセス産業は多くの課題を抱えている。最近,技術伝承をテーマにした雑誌の特集が組まれ,これを題材にした講演会が開かれている。また,国内にプラントの新設がほとんど行われていない状況で,現場スタッフの減少や,若手オペレータがトラブルや非定常運転を経験する機会の減少で,現場の技術力が落ちているという話を耳にするようになってきた。課題のいくつかをここに整理してみた。
 1)ベテランオペレータの多量退職
 団塊の世代の退職が迫っており2007年問題として話題になっているが,同時に石油化学黎明期のプラント建設時から運転に携わってきた,経験豊かなベテランオペレータの退職も意味している。運転支援ソフトを使ってSOPを電子化したり,事故やトラブルの事例をパソコンで見られるようにしたり,IT技術を活用した技術伝承の取り組みが行われているが,有効な手だては見つかっていない。
 2)続く製造業での事故
 昨今,製造業での事故が多発している。石油コンビナートの事故発生率は10年前の2倍以上に上昇しているというデータ(消防庁まとめ)がある。それぞれ固有の原因があるのかもしれないが,設備投資を控えたために設備の年齢が年々上がり,設備の老朽化が進んでいるということも事実である。しかし,これが大きなニュースとなるのは,事故が起きた後の対処が的確に行われず被害を大きくしてしまっていること,対応が後手になっていることにある。
 3)原油価格の高騰
 1985年以降,しばらく1バレルあたり20ドル前後に落ち着いていた原油価格は,2000年に入って高騰を始め,最近60ドルを突破したことはご承知の通りである。中国の旺盛な需要増もあって製品価格に転嫁できていたが,急激な上昇はそれも難しくなってきている。さらなる省資源・省エネルギー,エネルギー効率改善が求められる。
 4)環境への取り組み
 京都議定書に代表されるようにCO2排出量削減やゼロエミッションなど,環境への取り組みは社会の要請として特に重視されるようになってきた。この取り組みが進んでいる企業ほど社会的に高い評価を受けるようになってきており,環境会計を公表している企業が増えてきている。
 さて,弊社は設立以来,プラント運転にフォーカスしたモデリング技術,シミュレーション技術を提供してきたが,このような課題に我々の技術がどのように支援できるであろうか。
 弊社のコア技術である「Visual Modeler」は「プラントシミュレータ」を標榜している。図1にプラントシミュレータの領域を示した。主に定常状態を扱うプロセスシミュレータはプロセス設計が主体であるが,プラントシミュレータはプラント運転にフォーカスしている点が大きく違う。オペレータの運転技術のブラッシュアップを目的とする運転訓練,増産や省エネルギーのための改造についての制約や能力の事前評価,制御方式の変更検討や制御系のチューニング,最適なスタートアップやシャットダウンの操作手順の設計や検証,安全設備の事前検証など,広い意味で運転改善にふさわしいシミュレータとなっている。
 次の章では,プラントシミュレータとはどんなものかご存じでない方もいらっしゃると思うので,Visual Modelerについて紹介する。その後の章でプラントシミュレータが運転改善にどのように適用できるか,どのような応用事例があるか,話を進めることにする。

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