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計装Cube5 関連文献
寸劇「遅い昼食」

計装Cube編集部
2005年3月

最近,社員食堂ではこんな話が花盛り。バーチャル食堂に潜り込んで,現場の声を拾ってみました。編集スタッフの名前を借りて,再構成してみましょう。

登場人物

製造業会社生産技術本部エンジニアリングセンター長
大庭 丘
製造業会社関東工場設備保全課 グループリーダー SE 
清水宗輔 
製造業会社関東工場運転課 副長 Aチーム担当責任者
 榎本 究 

〔はじまりはじまり〕

三人は,新製品投入立ち上げ作業の合間の休憩時間を使って,工場内にある食堂で遅い昼食をとりはじめました。規定の昼食時間には,次の立ち上げテストの段取り準備に時間を使ったので,すでに昼食時間は終了して食堂は空いています。いつもより広く感じられる食堂で,3人はゆっくりと昼食を終えました。榎本が茶を入れ3人の前に置き,やれやれと目を合わせたところから話が始まりました。

1.●●について

榎本「清水と顔を合わせるのは久々だな。」

清水「十一年前に同期で入社して,三ヶ月間研修に行って,五年前の関西工場の新生産ライン立ち上げで一緒にやって以来だな。」

大庭「昨年の改修工事の時は,関西工場で清水とは一緒だったけどな。そうか,私とは5年違いか。」

榎本「ところで今回スタートする設備保全連携ワーキングですが,生産本部としてはどの範囲までを考えているのかが知りたいところですけど。昨日の説明会では,第一の狙いは,今まで紙で行っていた設備保全のマニュアルや指示書・報告書などのドキュメントの電子化。第二に運転員の自主保全の履歴を電子データ化。第三に熟練者のノウハウ蓄積と再活用のためのデータベース化ということで,ポータルサーバーを持ったドキュメントポータル環境を導入するために,第一段階としてテスト環境を生産現場に作って,現場でドキュメント資料構築を行う。ということでしたよね。」

大庭「そう。段々レベルアップしていくけど,どこまでやるかはワーキングを進めていくことで現場の関係者がどこまで成長できるかにかかっていると言った方が良い。考えとしては全てのドキュメントを電子化して再活用できるインフラ環境にまでもって行きたい。設備保全の清水のところでも,ベンダメーカーから装置のメンテナンスに関するドキュメントの電子データ提出を既に動いてもらっているよ。」

清水「電子ドキュメントの提出と言ってもXMLデータで提出するようにとの指示だからね。ベンダからは,『XMLデータ形式では持っていないです。』と言ってくる。でも,『マイクロソフト社のinfoPath2003に取り込んでXMLデータ形式にして提出できるでしょ。』というと,解かったような,解からないような顔して,『はい。』と言っていたよ。」


榎本「どうして,マイクロソフト社の製品環境でやるのです?Linuxでもできるのではないですかね?マイクロソフト製品はセキュリティが問題じゃないかと思うのですが?」

大庭「良い質問だなあ。Linuxのマシンを製造業に提供しているメーカーはいくらで我々に提供しようとしているか知ってるかい?数百万円もするマシンだよ。しかもOPCのドライバでインターフェースを構築したいと話しても数百万円さらに追加される。CSVでデータのファイル渡しをしたいと言っても数百万円。じゃあベンダに設備保全のドキュメントの電子化をしたいからいくらでやってくれるかと話したら,数千万円の見積もりが出てくる。しかも,生産現場でカイゼンできるようにして欲しいと要求すると教育やトレーニングの費用を一人当たり毎年数十万円出すようにと言ってくる。片やWindows搭載のPCは数十万円。Officeソフトウェア製品は数万円。ポータルサーバーソフトで数十万円。Officeを使えば使い方は日頃使っているから新しいソフトの修得だけで良い。しかも,数日もかからない。生産現場でドキュメントのスタイルシートの変更はすぐにできる。XML形式でデータを構築すれば,ドキュメントスタイルシートが変わってもデータそのものは意味を持ち続けて活用できる。Windowsのセキュリティのこの二年間の成長は劇的だ。生産システムの基幹システムではベンダのサービスが重要だが,ドキュメント管理に関しては,我々自身が責任を負わなければならない。ドキュメントの内容までベンダは責任取れないからなあ。」

榎本「Linuxはオープンソースで無料でしょう?」

清水「確かにLinuxの学者が公開したものからいくつかはオープンソースだけど,我々,全てを理解するなんてできないよ。しかも,ドライバは有料でアプリケーション製品も有料だよ。アップデートの費用もかかるし。マイクロソフト製品と比べると結果的に高価だよ。結局,我々の懐からはLinuxの方が出る金が多くなっている。」

大庭「ところで,昨日の説明会とデモを見て,どう?」

榎本「やりたかったことができるというカルチャーショックですよ。若い者もヤル気を出して面白がっていました。」

清水「それに,まだ,一部の現場では,Windows95や98を使っていたPCがいくつか残っていたのが,今回の計画で新しくなる。」

大庭「Windows95や97搭載のPCは,騙し騙し使ってきたが,既に更新時期を過ぎている。しかも,ネットワークに接続されていないところに取り残されていることで,残っていた訳だ。ネットワークに組まれている分はWindows2000になっている。それも,ノーツを搭載してグループウェア管理になっている。実際,PCのWordやExcelで作成したドキュメントは,プリンタに打ち出して,判子を押して,上司に提出。治すところが出てきたら,また,PCで作成しなおしてプリンタに出して,再度判子。承認を受けて他部署に送られて,他部署の責任者が判子を押して,担当に回る。回されたドキュメントは読まれて,アクションされて,ファイルにしまわれる。ほとんどのドキュメントがファイルから再度使われることは無い。使われても,コピーされて他のファイルに入るだけ。それを我々は今まで仕事と読んでいた。生産した製品のクレームが入って直ぐに対処しようとしても,どこに必要な書類があるのか直ぐに出して時間系列にデータを検索できる環境など今までなかった。かろうじてプラントデータのサーバにあるデータについては,検索はできるが,決まったフォームでの表示しかできなかった。」

清水「つまり,今まで見えていたと思い込んでいた環境は,実は見えていなかったと言うことですね。」

大庭「そうなんだ。見えているつもりで実は見えていなかった。その証拠に,今までの環境で,生産製品の素材がどの程度品質にバラツキがあるのか直ぐに答えられるかい? 生産工程ごとのタクトタイムのムダ率は見えているかい? ある装置が故障した時のダメージ予測は見えているかい? 保全作業の交換部品の調達時間と月ごとの予算を15%削減したいとして,どこをどう削減すればよいか言えるかい? 出荷した製品が汚染していたという情報が入って3時間以内に回収範囲を最小限にするための生産品質に関わる情報を全て手元に集められるかい? そして判断材料が揃ったとしても損害を最小限に抑えるためのシュミレーションは可能かい?ということになる。」

清水「確かに,あるべき時間内では,できないですね。」

榎本「制御装置の自動化は,ある程度できてきたが,事業としての環境は遅れていますね。でも,ERPとかは入れてきているのではないですか?」

大庭「会計を主体にした見える化と生産品質を主体にした見える化と生産活動そのものを見える化するのでは,求められる機能が違うじゃないか。」

榎本「それはそうですね。」

大庭「次は,携帯電話だな。清水の方ではどこまで進んでいる?」

清水「装置のID情報を入れたQRコードを携帯電話で読み取って,欲しい情報をダウンロードして,作業をして,簡易報告書を書いて,データベースに記録するまでテストができました。表示部分の工夫がまだまだ必要だというところです。長い文章はできるだけ表示しないで済むように,写真や図や絵,動画を出して理解が早くできるようにしたりとか,やりたいことはどんどん出てきますね。」

大庭「携帯電話もこれからどんどん進化する。QVGAの表示ができて,そのうちにVGAが表示できるようになるのも近い。WordやExcelやPowerPointのデータが見れて,PDFのファイルも見れるようになる。拡大しても文字は崩れないし,拡大している時のどこを見ているかのガイドビューも同時に見ることができる。無線LAN通信も可能で,オプションを付けると電子タグの数種類は読めるようになる。デジタルカメラと同等の機能を持ち,写真映像やビデオ映像を送信することもできる。カメラで撮影しながら,その映像をテレビに出すこともできる。iアプリでプログラムを作って,搭載することができるので,オリジナルの専用機にもなる。Qコードを読ませることもできるし,PCと連動のドキュメント作成の現場用コメント入力レポートにも使える。」

榎本「既に,PDAを越えているではないですか。」

清水「専用機の技術のスピードより,汎用機の技術開発スピードが早いと言うことですね。」

大庭「開発投資の金額が違うね。それに開発者の数が違う。それと技術の取り込み時間が短い。一般消費者を対象にした製品開発は,製品寿命が短いので,競争力をレベルアップしなければ競合に市場を取られてしまう。ただ,汎用機を生産現場に利用する時は,リスクを伴うと考えるが,壊れても代わりを購入すればよいというリスクが少ないところには,汎用機を使っていくことも,製造業の競争に勝っていくためには必要だと考える。要は,ユーザーも勉強していかなければ,携帯電話一つどのように使って言ったら良いか判断もできなくなると言うことだね。」

榎本「では,PDAは今後使わなくなると言うことですかね。」

大庭「そう簡単な話ではないよ。PDAを計装ベンダが採用していくその根拠は,システム上の補償サービスに責任を持った製品と言うコンセプトだから,それは無視できないね。ただ,同じ工場内で,異なる生産システムの各異なるベンダがそれぞれPDAを出してくるとユーザーは大変だよ。数種類のPDAを腰にぶら下げて現場を回るなんでやりたくないからね。おーっと。そろそろ,時間だな。」

清水「大庭さんにとって,これからの生産現場に必要なことって何だと思っています? 良かったら教えて欲しいですね。」

榎本「私も聞いておきたいな。」

大庭「ベンダに無くて我々が持っている宝がある。それはなんだか解かるかなあ。」

清水「我々が持っている宝?」

大庭「そう,それは,『現場,現物,現実』の三現主義の宝を持っているんだよ。」

榎本「そうかあ,現場で仕事をしている我々が三現主義のテーマそのものなんだ。」

大庭「そうだよ。だから,我々が困っていることを解決してくれることがベンダの生きる道なんだよ。だから,ユーザーの困ってることを聞かないでベンダ都合の製品を押し付けられることはユーザーが勉強していないからなんだよ。やっていることに自信がないからベンダの言いなりになる。でも,生産している製品の消費者に対する責任は生産している我々にある。そこをよく考えて,時代の流れをよく読んで,これからの生産システムは,生産システムを守る環境はどうあるべきかを考え続けていくことが大切で,時には外の同業者とコミュニケーションをしてみるのも自分の感覚が,考えが合っているかを確かめる重要な鍵になるということだよ。」

清水「でも,そんな機会はなかなか我々には無いですよね。」

大庭「無いと決めてしまうことから変えた方がいいよ。その機会を作ってくれる機関を考えてくれる人たちもこの世にはあるということを。」

三人は,また会って話をすることを楽しみに,それぞれの仕事へと別れて行った。

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